4話
参謀本部
第三会議室
「隊長、全員揃いました」
「え~と、じゃあ、これより独立第一小隊の作戦前の会議をはじめま~す!
司会の蓮くんよろしく~」
締まらない開始の音頭の後、雪風中尉に丸投げする日向大尉。
そんな大尉に慣れているのか、中尉は気にすることなく説明を始める。
「今回の任務は、小規模なテロ組織の本拠地の制圧だ。
構成員は300人程で、そのほとんどが軍人崩れの元傭兵だ。
それに加え、三人の異能者が所属していると、事前の調査で判明している。
ただし、異能の詳細については分かっていない。そこを留意して作戦に当たるように。」
俺は雪風中尉の言葉に少し疑問を覚え、質問する。
「異能の詳細が不明というのはどうあいう事なのでしょうか?
情報に不備がある状態での作戦行動は危険ではありませんか?」
「ん?ああ、そうか」
一瞬、俺の質問に首を傾げた中尉はすぐ何かに納得して、口を開いた。
「我々の部隊は、情報が不明確で且つ、緊急を要する任務がよく回ってくる。
それに比べて今回は敵の数が明確だ。こんなにやりやすい仕事は久しぶりだ」
「そ、そうですか・・・」
「そうだぞ、お前はとても運がいい!」
急に生き生きとしだした雪風中尉に恐怖を覚え、二の句が継げなくなる。
「それは兎も角、さっさと続きを説明しな」
「そうだな、すまない、少し取り乱してしまった」
興奮する雪風中尉を吹雪中尉が諫め、続きを促す。
「それでは、作戦内容を説明する。
2週間後奴らは帝都郊外にあるショッピングモールを襲撃するとの事だ。
目的は買い物客を人質に取ることで、身代金とこちらが拘束している幹部2人の解放と見られる。そこで、その計画を逆手に取り手薄になった本拠地を制圧するという訳だ。
以上のことに質問はあるか?」
「1つ、よろしでしょうか?」
俺は挙手をして質問する。
「ん?なんだ、加藤准尉」
「敵対者の殺害は認められますか?」
「状況によるが、基本的には拘束に努めろ。
間違っても無抵抗の者を殺そうとするなよ?」
「…了解いたしました」
恐らく前隊での俺の行動を聞いていたのだろ。
雪風中尉は俺の質問に澱みなく答え、その上で釘をさしてくる。
「次に配置ついてだが、本拠地への襲撃は隊長と私で行う、その他はショッピングモールの防衛を行ってもらう。その間のそちらの指揮官は、吹雪中尉が行うものとする。何か異論はあるか?」
「無いよ、大丈夫だ」
「では、ショッピングモール内の見取り図を渡しておく、各自目を通して置くように。
加藤は吹雪中尉の指示の元、連携の確認をしておけ」
「はっ!」
「よし、これで会議を終了とするが・・・」
そこで言葉を区切り、雪風中尉は横に目線を向ける。そこには、突っ伏して眠りこけている
日向大尉がいた。その様子に何のアクションも起こさず、正面に向き直る。
「これにて、作戦事前会議を終了とする。各自、当日は指示道理に動くように」
その後、雪風中尉は日向大尉をたたき起こしそのまま一緒に会議室を後にした。
「さて、取り敢えず、当日の行動について話し合うか」
吹雪中尉は、ショッピングモールの見取り図を広げながら話し出す。
「まず、ショッピングモール内に入ることのできる場所は、客用が4つと在庫の搬入口が2つだ。それ以外の場所は敵の人数的に使用してこないと思うから今回は除外する。
そんで、敵が敷地内に入った時点で、出入口をあたしの異能で全部封鎖する、そので、あんたらは、内部の敵を殲滅すればいい」
「吹雪中尉の異能とはどのようモノなのでしょうか?」
中尉の説明に俺は疑問を零す。
それに、中尉は少し考えてから、話し出す
「う~んと、壁を作ってそれに効果を付けられるモノだね。
例えば、許可なしに通れないみたいな」
「なるほど、それで封鎖するわけですね。理解しました」
「うんうん、物分かりが良くて助かるよ。横で寝てるバカとは大違いだ」
「え?」
そう言いながら、吹雪中尉は隣に座っている、金剛少尉の頭を叩く。
「うぐっ!なんだ!敵襲か!?」
「寝ぼけてんじゃないよ!!人が説明してる横でぐーすか寝やがって!!」
「ううむ・・・しかしな、自分で言うのもなんだが、俺はここで作戦を聞いても当日まで覚えられはしない。であれば、当日まで作戦を聞く必要はないと思わんか?」
「そんなもん寝ていい理由になるか!!だいたい、あんたこれで何べん目だ。
前言ったよな、今度は容赦しないって!!」
「お、落ち着け。
ほら、准尉が困惑しているではないか」
そこで、吹雪中尉は俺の存在を思い出したのか、気まずそうに声をかけてくる。
「あ~、見苦しいところをみせたね。あんたは先に戻っていいよ」
「はい!では、お先に失礼します!」
俺は退室する為に席を立つ。それに併せて、金剛少尉も立とうし、それを吹雪中尉が掴んで止める。
「あんたには、まだ話が残ってるんだよ」
「そんな・・・俺はこれからトレーニングの予定がはいっているんだ」
「そんなもんどうでもいい!!そこに座って大人しく、あたしの話をきけ!!」
俺は会議室を退室しながら考える。
(あの人は学習しないのだろうか)
似たやり取り昨日もしてたよな、と
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