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3話

訓練場に到着した俺たちは、向かい合って立っていた。


「よし、では始めようか。」

「その前に、ルールを決めませんか?」

「ん?ああ、今は立会人も審判もいないしな。

気絶するまででも良いが、そうすれば雪風に怒られるしな」


(こいつ、気絶するまでやる気だったのか?)

俺は金剛少尉の言葉に、若干戦慄した。

軽い手合わせのつもりが、本気の殺し合いになる所だったかもしれない。


「では、先に降伏した方が負けというのはどうでしょう」

「ほう、訓練とはいえ、俺に降伏の言葉を口にさせられると?」


少尉は、俺の言葉に好戦的な笑みを浮かべながら、挑発してくる。

俺はそれに不敵な笑みで答える。


「確かに、少尉殿はお強いのでしょう。

それは、体格や体裁きを見れば十分に伝わてきます。

しかし、俺もそれなりに鍛え、場数を踏んできました。

何より俺には異能があります。圧勝とはいかないでしょうが、互角以上に渡り合えると考えますが?」


それを聞いた少尉は、一瞬、無表情になった後、凶悪な笑顔と共に強烈な殺気を浴びせてくる。


「よく口が回るな。じゃあ、その言葉に偽りがないか、確かめさせてもらおうじゃないか」

「確かめるのは俺ですよ、金剛sy」


俺がそう、言い終わる前に、頭をめがけてハイキックが飛んでくる。

俺は姿勢を低くすることでそれを避け、立ち上がる勢いをそのままに居合を放つ。

剣速が最速になる前に、少尉はその大きな躯体に見合わない身軽さで、後ろに跳び体制を立て直す。


「いきなり蹴り掛かってくるなんて。そんなに俺の言葉が癪に障りましたか?」

「そうだな、これくらいの攻撃も対処出来ない口だけの男とは、バディなどは組めないと思ってな」


ただの馬鹿かと思ったが、皮肉を言う位の知能はあるようだ。

(しかも、微妙にイラつくこと言いやがって)

しかし、今の一合である程度の実力は知れた。これ以上は無意味だろう。


「では、互いにある程度実力を知れたということで、ここら辺終わりに「何言ってるんだ?」え?」

「ここからが戦闘の醍醐味だろう?

互いに小手調べを済ませ、ある程度の実力が知れ、ようやくスタートラインに立ったんだ。

何より、まだどちらも降伏をしていないだろう?」

「じゃあ、私はこうh「そら行くぞ!!」なっ!」


俺が言い切る前に少尉は前傾姿勢で接近し、その勢いまま腰の回転の乗った右ストレートを、俺の腹に叩き込む。

咄嗟に後ろに跳んで衝撃を逃がすが、完全に逃がしきれず少なくないダメージを負う。

そんな俺に追撃をかけるべく、少尉は距離を詰める。


(今のをまた喰らったら不味い!)


俺は弧を描くように、少尉に接近する。

一瞬、少尉の速度が落ち、こちらに方向を変える。

その一瞬を利用し、素早く距離を詰める。

刀の間合いに入ると同時に抜刀、居合切りを放つ。

しかし、少尉は半歩手前で急停止することで、軽く掠らせる程度で済ませる。

そのまま、タイミングがずれて勢いを殺せず直進している俺に、カウンターの回し蹴りを喰らわせる。

俺の予想どうりに。


「は?」


少尉の足が俺の腹に触れた瞬間、勢いそのままに跳ね返る。

突然のことに、驚いた少尉は動きを少尉の動きが止まる。

俺はそれを見逃さず、刀を振り下ろす。少尉はそれをバックステップで避け、距離をとる。

それに俺は一気に畳みかけるように距離をつめ、体制を立て直しきれていない少尉の胴体に、横薙ぎを喰らわせる。


「うぐっ...!」


峰打ちだとしても、いや、峰打ちだからこそ、勢いの乗った一撃をまともに喰らって、ただで済む人間などそう居ない。

少尉も例に漏れず、相当答えた様子で片膝をつく。


「どうされますか?

私としましては、ここいらが潮時かと思いますが?」


俺の煽りを含んだ台詞に、青筋を立てながら立ち上がる少尉の顔には、満面の笑みが浮かんでいた。


「笑えん冗談を言うな。やっと面白くなって来たんじゃないか。さあ、第2ラウンドと行「そこまでだ!!」こうか!」


高らかに声を上げる少尉の言葉に被せるように、訓練場の入口の方から怒声が聞こえる。

そちらに目を向けると、そこには険しい顔をした雪風中尉が立っていた。


「貴様ら、俺は顔合わせをしろとは言ったが、訓練場を滅茶苦茶にしろとは言って居ないぞ」

「滅茶苦茶になどしていないぞ!少し親睦を深める為に戦闘訓練をしていただけだ!」

「ほう、この地面の状態は滅茶苦茶ではないと?」


苦言を零す中尉に、堂々と反論する少尉。そんな少尉の言葉に地面に視線を向けながら、皮肉げに、ニヤリと笑う。

俺と少尉はそれにつられて地面を見る。

そこには、そこらじゅうに窪みが出来て、でこぼこになった訓練場の地面があった。

そんな地面を見て、気まずくなった俺たちに中尉は圧のある無表情で淡々と責めたてる。


「加藤准尉をトレーニングルームに向かわせてから今まで約1時間半

トレーニングルームに向かうまで掛かっても10分ほど。恐らく准尉がついてからもトレーニングをしていたと思われ、それが一時間ほど。そこから訓練場に移動で更に10分。

つまり、貴様らはたった10分程の時間でこれほどの惨状を作り出したわけだ」

「いや、実際に戦闘していたのは5分程だ。

それに、前から思っていたが、この訓練場の作りは脆すぎるんだ。

それを壊すなという方が無茶というものだ」


少尉の言葉に眉間を揉みながら、呆れた声で返す。


「そんな訳ないだろう...!ここの設備は全て身体強化系の異能にも耐えられるように作られたオーダーメイド品なんだぞ...!それを言うこと欠いて脆いだと!この地面の基盤にはな、人工ダイアモンドが敷き詰められてるんだよ!それをこんな、ポコポコへこませやがって!!周りに配慮して行動しろと何度言ったら分かる!!!」

「あ、ああ、すまない・・・」


ヒステリックに怒鳴り出した中尉の気迫に少尉は気圧されていた。

それでも中尉の怒りは収まらないらしく、今度は少し身を引いて逃げ出すチャンス伺っていた、俺にその矛先を向ける。


「お前もだ、加藤!何故この馬鹿を止めない!!何故こんなになるまで止めなかった!!!」

「いえ、私も何度も中断を進言したのですが、少尉には聞き入れてもらえず、それどころか、問答無用で攻撃されまして…

私は仕方なく応戦した次第であります」

「ほう、どうなんだ金剛?」


俺は中尉の追求を、少尉に流すことで逃れる。


「いや、確かに問答無用で攻撃したのは事情だが、それは准尉が挑発をしてきたのが原因であって、そもそも、戦闘訓練を提案したのはお前だろう?」

「それはそうですが・・・」

「もういい」


少尉の言に反論しようとした俺の言葉をさえぎって、疲れたように肩を落としながら声を出す。


「つまりは、准尉の特に意味もない煽りに、無駄に刺激された金剛が本気を出したという訳だろう?もういいから、始末書を明日の昼までに提出するように。残りの罰は明日伝えるから、准尉はもう宿舎に帰れ・・・」



心底疲れっ来た様子の雪風中尉を見て、少し気の毒になりながらも、俺に何か言われても怒りが沸くだけだろうだから、心の内にとどめておく。


「は!では、失礼致します」

「お前、返事だけは本当に良いな…」


俺の敬礼に、中尉は呆れながら返す。

それに続くように、少尉も敬礼をする。


「では、俺も帰らせて「お前は俺と執務室に来い」む?」

「お前、備品を壊すの今回で何回目だと思ってる?今日こそは副隊長と共に備品の大切さについて、みっちり講義してやる!!」

「いや…それは遠ry「いいから来い!!」あ、ああ・・・」


金剛少尉は雪風中尉に襟をつかまれ引っ張られていった。

俺はその様子に少し呆れながらも、異動したてであることに感謝しつつ帰路につく。



こんな感じで俺の異動初日は幕を閉じた。好調どころか、一歩目でずっこけた様な始まりだったが、前の隊よりは居心地が良いように感じた。


皆さんの言葉が励みになりますので,

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