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Animal Garden  作者: slowly
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初めてのログイン、初めてのペット 6

 腰をかがめて、目線の高さをできるだけ近づける。


 クマさんはお尻を付いて座っているから、まだ僕の方が視点が高いけど。


 近づきたい、仲良くしたいっていうアピールになるかも。



「こんにちは。

 僕は、佐藤麦。

 …あ、今はウィートだった。

 そう、僕はウィートだよ。」


「きゅーま?」


「そうそう、上手い上手い。

 ウィ-トだよ、よろしくね」


「きゅーま!」



 両手をあげて、お返事してくれた!


 何となく、僕な名前のリズム、イントネーションを合わせた鳴き声にも聞こえたけど…さすがに僕の思い込みかも?



「君はいま、産まれたばっかりなんだよね。

 こういう時、おめでとうっていうのかな。

 それとも、ありがとう?」


「きゅまー?」


「うーん、どっちもかもしれないね。

 僕、君と会えて、すっごく嬉しいんだ。

 僕たち、今日から家族になれるんだって!」


「きゅま~♪」



 この子は、スズメさんみたいにお話はできないみたいだけど、嬉しいって気持ちが伝わって来る!


 動物って、人間ほど表情筋が発達してなくって、気持ちを表情に表すことが少ないって聞いたことがあるけど、アニガーではちょっと違うのかも?


 今も、クマさんの顔がにっこり笑っているみたいに見えるもん。


 まあそもそも、動物とe-petsは全部が同じってわけじゃ無いみたいだし、ちょっとゲーム的というか、プレイヤーとコミュニケーションを取りやすくしているのかもしれないね。



「ねえ、君に名前を付けてあげたいんだ。

 家族になった記念に、どうかな?」


「きゅまっ?

 きゅまま~♪」



 手足をパタパタさせて、転がりそうになってる!


 うんうん。


 これだけ喜んでくれると、言葉が話せなくても気持ちが伝わってるのがわかる。


 それに、さっきから僕の言った事を理解してくれてるみたいだし。


 僕がクマさんの鳴き声とかで気持ちを察してあげれば、すぐに仲良くなれそうな気がするよ!



「僕も、パン屋の息子だから、麦って名前だし。

 やっぱり、シンプルな名前がいいよね。

 君は、ツキノワグマだから…

 ツキノ、とか。

 クママ、とか。

 こんな名前はどうかな?」


「きゅまっ!

 きゅままーっ!

 きゅまきゅまま~♪」


「あ、気に入ってくれた?

 うん、良かった。

 でも、あんまりパタパタすると、後ろに倒れちゃうよ?」


「きゅーま」


「大丈夫って?

 ならいいけど…胸を張ると、もっと危なっかしいなぁ」


「きゅーま。きゅーま!」


「わかったわかった。

 大丈夫なんだね、りょーかい!

 それじゃ、どっちの名前がいいか決めようか。

 ツキノくん、手を挙げて下さい」


「きゅまっ」


「おー、元気なお返事!

 それじゃあ…クママくん、手を挙げて下さい」


「きゅまーん」



 あ、ちょっと顔を逸らしてる。


 きゅまーんって鳴き声、NOってことかな。


 もちろん雰囲気で十分にわかるけど、初めて聞いた鳴き声だったからさー。



「はい、それじゃあ君の名前はツキノで決定です。

 拍手ー!」


「きゅ~ま~♪」



 僕は勢いで拍手しちゃったけど、子熊って拍手できたんだ!


 ポスポスいってて、全然音はなってないけど。


 足も一緒にパタパタしてて、めっちゃかわいい!


 視界の端でスズメさんも拍手してるけど、それ大丈夫?


 羽、痛まないのかなぁ。


 音も出てないし、雰囲気を合わせてくれただけかもだけど。


 …お体、柔らかいんですね?



『おめでとうございます、ウィートさま。

 これで、Animal Gardenの最初のチュートリアルが完了です。

 ツキノも、良かったですね』


「ありがとう、スズメさん」


「きゅま」


『次のチュートリアルは、ウィートさまの‘ホーム’についての説明となります。

 ただ、今回のプレイタイムリミットが、あと15分を切っておりますので。

 次回ログイン時にご説明させて頂きます』


「…えっ、もう3時間経つのっ!?」



 さっきログインしてから全然時間が経ってない気がするのに、3時間もゲームの中に入ってたのかぁ。


 こんなに熱中して時間が経つのを忘れちゃうんじゃ、一回ごとのゲームプレイに制限時間が付くワケだねー。



『一通りのチョートリアルが終わるまでは、あまり多くのゲーム機能はご利用できませんので、このままログアウトされるのも良いのですが。

 残りの時間で、目の前のツキノと触れ合うのもオススメの過ごし方ですよ』


「きゅまー?」



 どうする?みたいに小首を傾げた小さなクマさんと、遊ばないなんて選択肢はあり得ないよね!


 残り15分、思いっきりツキノとふれあっちゃおう!



「よーし、まずは抱っこだ!

 おいでーツキノー」


「きゅま~♪」



 うわ、重くは無いけど、しっかり体重がわかる!


 あったかくて、丁度いい質感っていうのかな。


 干したての、お布団みたいな魔力があるよ!


 なにより、なにより…モッフモフだあーーー!



「モッフモッフ!

 モッフモッフ!

 モッフモッフっだーーーっ!」


「きゅまっきゅまー!」



 15分じゃ、足りなーい!




 ~~~~~~~~~~~~~~~




 _navigator_


 Animal Garden内における、プレイヤーの水先案内役。

 e-petsとは、根本的に役割がまるで異なる。


 navigatorの使命はプレイヤーのゲーム進行のサポートが主であり、プレイヤーにとって、目に見えるシステムとなること。

 EasyGames社製Full_Dive_Gearの1台に一個のnavigatorが常駐しており、全ての個体がそれぞれのプレイヤーを専属でサポートする。

 ゲームプレイ中の安全確保にもその役割を持ち、Full_Dive_GearのメインAI、guardianとは常に情報を共有し、プレイヤーの健康保持に努める。

 guardianがプレイヤーの現実の体のバイタルチェックや外部不正アクセスの監視をメインとすることに対して、navigatorはフルダイブ中のプレイヤーの電子体に対しての観測を主とし、Animal Garden内に出現する事で役割を担う。

 e-petsへの虐待行為やハラスメント行為等の禁止事項抵触に対する監視・忠告・報告もその活動範囲となる。


 現在までに鳥型かつ小型のe-petsモデルが採用されており、現状は雀、鳩の2種類に分かれる。

 当モデルの採用者はEasyGames社の中央統制システムがメインAI、wisdomである。

 現在では80万を超えない程度のnavigatorが活動しているが、その全てはwisdomによって電子生成されており、navigator間とwisdomとのリンクを絶やさず常に行っている。


 Animal Garden運営が各プレイヤーに情報を与える際、①wisdomに指示。②wisdomからnavigatorに伝達。③navigatorがguardianに伝達。④Full_Dive_Gearが、システムメッセージとして、プレイヤー及びその保護者に通達。という流れを取る。

 例外として、プレイヤーがログイン中だった場合に、navigatorから口頭で連絡を受ける事もあるが、その場合でも①~④までの流れは必ず行われる。


 尚、プレイヤーは任意でnavigatorの干渉を最小限にすることも可能。

 その場合でも、navigatorからの監視は常に続けられる。

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