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お題シリーズ3

遠くの場所 復讐

作者: リィズ・ブランディシュカ



 その人物は魔王城を前にして、ずいぶんと遠くに来てしまったな、と思った。


 始まりの場所、世界の果てで物思いにふける。


 その人物は勇者だった。


 人々の希望を担う存在として、多くの人から応援されている存在。


 人々からは、強い人、頼もしい人だと思われていた。


 事実、今はそうなのかもしれない。


 しかし、昔はそうではなかった。


 虫も殺せないようなおだやかな少年だった。


 物かげから飛び出した。小動物にも怯えるような気弱な子供だった。


 しかしある日、魔王が軍を各地へ放った。


 その軍がやってきたため、住んでいた村が焼けてしまった。


 他の子供達と遊びに出かけていた少年は、なくなった村の前で呆然とすることになった。


 泣いて、泣いて、涙が枯れるまで泣いた少年は、初めてその瞳に敵意を宿した。


 必ず、目的を達するという強い意思と共に。


 少年はその日、倒れた人々を見ながら魔王への復讐を誓った。





 村をとびだした少年は、それから色々な場所を旅した。


 仲間を増やし、便利なアイテムを見つけ、装備を強化した。


 そして、始まりの場所から一番遠い場所までやってきた。


 様々な困難を克服して、打ち崩してきた勇者は、魔王に剣を向ける。


「ここまでだ。観念しろ」


 魔王はにやりと笑って勇者に話しかけた。


「我と同じくらいその手を血に染めたそなたは、もう平穏な日常へは戻れまい」


 戦いが終わった後、居場所がないだろうという意味で。


 勇者は「そんな事は承知の上だ」と剣で攻撃する。


 あまりにも遠くにきすぎてしまった。


 旅の途中で、裏切った仲間や、欲に囚われた人間を殺してきた。


 そのうち、味方だったものも躊躇なく殺せるようになってしまった。


 だから誰よりも、平穏にはもう戻れないという事を自覚していた。


 だから勇者はそれを覚悟で、魔王に挑んでいた。


「戻れなくてもいいのさ」


 それと引き換えに復讐が果たせるなら。


 勇者はそれでよかった。



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