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20話 中間テスト

 今日から中間テストが始まる。テストは全部で9教科。

 1日目が現代文・化学・日本史。2日目が英語・数学Ⅰ・地理。3日目が古典・生物・数学Aで、900点満点だ。


 僕ももちろんこの日のために勉強をしてきた。真凛愛も250人中何位に食い込めるのか少し楽しみにしている。さんざん勉強に付き合ったんだから赤点と言うのはやめてほしいな。


「いよいよテストだね。どう自信は?」


 自信満々に話しかけてきたのは夕香だ。


「ちゃんと勉強したからね、負けないよ」

「私が勝つと思うけどね。全力で来てね」

「いいな~2人とも、赤点取る心配なんて一切してないから」

「真凛愛ちゃんもしっかり勉強したんだから大丈夫だよ。もし、赤点取っちゃったら」

「取っちゃったら?」

「がんば‼」

「軽いよ~」


 緊張してるかと思ったけど、意外に平気そうで良かった。これなら赤点の心配はないかな。


「おはよう」

「おはよう未来」


 ストーカー問題も解決して体調が良さそうだ。35位から何位上がるのか楽しみだ。


「みんな元気そうだね」


 眠そうにやってきたのは朝陽だ。


「朝陽、今回も夜遅くまで勉強してたの?」

「寝たのは3時ぐらいだったかな」

「遅いよ、ちゃんと寝ないと記憶が定着しないよ」


 そう言うのは毎晩23時までには寝る夕香だ。23時に寝て5時に起きてるから6時間睡眠だ。僕は早くて24時だから寝れても5時間。最近は真凛愛の勉強に付き合っていたから26時あたりに寝ている。このテストが終わればぐっすり寝れる。早く終わってほしい。


「でも、今回は勝つよ」

「睡眠が大事だってこと分からせてあげる」


 バチバチに勝負に燃える2人。まあ夕香が勝つんだけどね。2位と4位で僅差だけども。あとは、僕がこの2人に勝てるかってだけだからな。勝負をしつつもお互い点を取れるよう協力してテストに臨んでいった……。


     *


「やっと終わった~」


 3日目のテストを終え、真凛愛はうれしそうな声を出す。


「終わったね、あとはテスト返しを待つだけだよ」

「この学校はテストした次の日に全部テストが返されて、順位も発表されるからね」


 まあ、この作者である先生がテストをしてから返すまでのネタを書くのがめんどくさいから一日後にテスト返しにしたんだって言ってたな。そのせいでテストの採点に追われてるんだろうな。自分で自分の首を絞めることになったのか。かわいそうに。


 ―そういうわけで、舞台は次の日に飛ぶ。


 テスト返し当日。朝、担任の先生に会ったが、顔が死んでいた。ご苦労様です。無茶なこと書くんじゃなかったって後悔してるんだろうな。


「いよいよだね」


 教室でテストが帰ってくるのを楽しみに待つ夕香。


「自身はどれぐらい?」

「今回は2位取れたかもしれない。前回の2位の子には勝てた自信はあるから」

「私は10位に入れてるかなって感じかな」


 3人組がテスト返しと順位発表を心待ちにしてる中、一人ビクビクしている真凛愛。


「自身ないの?」

「うん、ちょっとね。せっかく勉強付き合ってもらったのに、赤点取ってたらごめんね」

「大丈夫だよ。真凛愛ならちゃんと回避できてるって」

「翔隆に言われると少しは自信が出てきたかな」

 テスト終わった後、答え合わせしたけど普通に半分以上取れてたから大丈夫だと思うけどな。

 

 担任が入ってきてテストが返される。9教科のテストの点数は教室で個別に配られるが、学年順位は廊下に張り出される。僕の点数は867点だった。現代文が満点を取れていたおかげで思ったより点数が高かった。


「真凛愛、どうだった?」


 聞かなくても大体想像できている。


「翔隆、私やったよ。赤点回避できてた」


 よっぽど、うれしかったのか飛びついてくる。だから何度も言うけど学校で抱き着くのはやめてほしい。まあ、思ってるだけで一度も口に出してないから今後もこんな風に抱き着いてくるんだろうな。


「それで何点だったの?」

「584点」

「6割取れてるじゃん。やったね」

「えへへ、勉強した甲斐があったね」


 9教科中8教科が6割を超えていた。唯一生物だけが、52点と点数が揮わなかったが逆に英語が91点と他の教科に比べ抜き出て点数が良かった。僕は89点だったので真凛愛に負けてるんだよな。黙っておこう。


「英語は凄いね」


 でも褒めるぐらいなら大丈夫だろう。


「天使の仕事してるとあの場所に来るのは日本人だけじゃないこともあるから、外国語には力を入れてるんだ」


 そういえば、あっちの空間でも一応学校みたいなものはあるって言ってたな。


「ところで、夕香ちゃんたちは?」


 姿が見えない夕香たちの場所を聞いてきた。


「夕香たちなら、テストが返された後廊下に出て行ったよ」

「え、早くない? まだ返されてからそんなに経ってないよ」

「教室で互いの点数を言うんじゃなくて、張り出された順位を一緒に見て、勝敗を確認したいみたいだよ」


 ここも都合が良いことに夕香たちが順位を見ている間は周りに誰もいない。それで3人はいつも勝った、負けたとかで騒いでいる。


「じゃあ、私たちも行こ?」

「いいよ」


 真凛愛と共に廊下へと行く。本当はテストが返されたとき夕香たちに一緒に行こうと誘われていたが断っていた。真凛愛が夕香たちに気づかず、テストを見てニヤニヤしてたから、真凛愛の気分が落ち着くまで一緒に居ようと思っていた。真凛愛が行くって言うならついて行かない理由はないからな。


 順位が貼り出される廊下に行くと夕香たちが今か今かと待ちわびていた。


「あれ、まだ貼られてないの?」

「なんかまだみたいだった」


 急いで行ったは良いものの、順位表はまだ貼り出されていなかったみたいだ。


「翔隆はどうだった?」


 朝陽がテストの出来を聞いてきた。


「うん、結構よかったよ」

「今回は翔隆がこの学校に来て初めて受けたテストだからな、どれぐらい頭が良いのか知ることが出来るな」


 ストーカー事件以来、朝陽にいろいろと詮索されているような感覚がするんだよな。そんな大したことはしてないはずなのに。怪しまれるようなことしたかな? 『ライオン』って言ったぐらいしか目立つことしてないんだけど。


「あ、来たみたいだよ」


 夕香が順位表を持った先生がこっちに来ていることに気づいた。


「だね、楽しみだね。今回こそ俺が勝つんだからな」

「今回も私が勝つよ」


 先生によって、順位表が貼りだされる。自分の順位よりもまず、真凛愛の順位が目に入った。135位。半分には惜しくも届かなかったが、十分検討したと思う。赤点筆頭だったのが、ここまで点数を伸ばしたんだから上出来だと思う。


 次に見つけたのは、未来で10位。ストーカー問題が解決したことで高順位を取れていた。もし、ストーカーの被害に悩まされていなければもう少し点数を伸ばしたように思える。


「やった~、今回も私の勝ち」

「くっそー、5位か。また夕香に勝てなかった」

「朝陽に勝てたのは嬉しいんだけど、また3位か……」


 Kの点数は801点。夕香は866点とかなりの差がついていた。ちなみに4位の子は前回の学年末で夕香に勝っていた子だ。


「今回は誰に負けたんだろう……え?」


 どうやら夕香は自分の順位と朝陽の順位に夢中で自分より上の人の名前を見忘れていたみたいだった。2位の名前を確認して驚いた顔で僕の方を見る夕香。


「え、本当に翔隆って頭が良かったんだ」


 信じてなかったのか?何度も勉強はできる方だって言ったんだけどな。


「じゃあ、僕の勝ちってことで」

「悔しい、次のテストでリベンジするんだから」


 本当に悔しそうな顔をするな。1点差なんだから大して変わらないような気もするけどな。


「それにしても1位の子は凄いね」

「これで6連覇か」


 夕香が本気で悔しがってる中、未来とKが1位の子のことを話している。点数は884点。16点しか落としていないっていうのは凄いとしか言えない。


「ほらいつまでもいじけてないで行くよ」


 どんだけ悔しかったんだよ。いじけてる夕香を未来が連れて帰る。手を抜いた方が良かったかな。


 ん? 誰かに見られているような気がして後ろを振り向いた。


「どうしたの?」


 僕の不審な行動を不思議に思ったのか真凛愛が聞いてくる。


「いや、誰かに見られてるような気がして」

「学校だからいろんな人が見ててもおかしくはないんじゃない?」

「そうだね」


 明らかに僕のことを見ているような視線を感じたんだけどな。

 

 教室に戻ろうとすると担任に呼び止められる。


「翔隆、少し話したいことがあるんだが、今平気か?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「じゃあ、ついて来てもらっていいか」


 真凛愛たちと別れ先生について行った。


「まずは、学年2位おめでとう」

「ありがとうございます」

「聞いてはいたが、ここまで頭が良かったとは驚いたよ」

「一応しっかりと勉強しましたからね」

「まさか今回も点数調整をしたとかはないよな」


 編入試験でわざと点数を下げたから今回も下げていると思われたらしい。


「それはないですね。調整するぐらいならあんな高い点数を取りませんよ」

「いや、もしかしたら手を抜いてるのかなっと思ってな。本当だったらもっと取れるって言われても驚かないぞ」

「そうですか? でもこれが僕の全力なので今後もこの点数らへんを取ると思いますよ」

「そうか? まあ、この世界を楽しんでくれ」


 本題に入る前の軽い雑談が終わった。


「さっそく、本題に入る」

「なんでしょうか?」

「未来のストーカー事件では活躍したみたいだな」

「まあ、警察が来てなんとかなったみたいですけど」

「本当だったら未来のストーカーが直接接触するのは今日だったっていうのは覚えているか?」

「ええ、たまたま通りかかった朝陽が助けるんですよね」


 この話はしっかりと覚えている。なぜなら未来が朝陽のことを、


「未来が朝陽に好意を持つきっかけとなった事件だからな」

「今まで気になるなぐらいの感情だったのが、助けられたことで明確に好意を持つようになった」

「ああ、つまり、この物語では必須の出来事だった」

「何が言いたいんですか?」

「物語は簡単には変えることが出来ないってことだ」

「つまり、まだストーカー問題は解決していないと」

「ああ、そうだ」


 そんなはずはない。だって、あの小説で出てきたストーカーと一緒の容姿だったんだぞ。


「私もいろいろと試したことがあるが、物語を変えることはできなかった」

「例えば」

「そうだな、根本的なところは言わない方が翔隆の楽しみを奪っちゃうからな。今言えることは今回のテストだろう」

「テストですか?」

「ああ、そうだ、この無茶苦茶な採点の日程を変えることはできなかった」

「それ関係あります?」

「分からない。でも、テストの問題を夕香の得意な分野や苦手な分野にしたりしても今まで一度も順位が小説と変わらなかった」


 どれも微妙なことしか言わない。ひょっとしてこの先生頭が良くないのかもしれないな。てか、大事な試験で何てことしてるのこの先生。


「とにかく、この世界は私が書いた小説だ。特に、この物語において、未来が朝陽に好意を寄せることは必須条件なんだ。それにまだ夕香は未来が配信をやってることを知らないんだろ? それだとこの先の物語が大きく変わることになる」


 未来が配信を始めたのは3年前だ。それに関する問題が、この先起きることはほぼ確定だ。こればかりは事前に僕が対処できることを優に超えているから。その時に夕香が未来の配信のことを知っていないといけないってのも分かる。


「ですが、それだけでストーカーが出ると言われても」

「今日だけでいいんだ確認してもらうのは」


 真剣なまなざしでお願いをしてくる先生。


「分かりました。やりますよ」

「ありがとう」

「でも、そんなに心配なら先生がやれば良かったんじゃないですか?」


 僕に頼む前に自分で解決した方がよっぽど簡単じゃないか。子供の僕に頼むより、大人の方がストーカーを対処するのは簡単だろうし。


「実はな、昨日未来の後をつけていたらストーカーと間違わられて警察に……」


 何してんのこの人。ここにいるから職務質問だけで解放されたんだとは思うけど。


「それで、2日連続で警察に見つかったりしたら……」


 今度は現行犯だろうな。確かにそれなら僕に頼むのも無理はない。


「でも、昨日一日中未来の後をつけてたならその時にストーカーを見かけてもいいんじゃないですか? 見つけてないならストーカーはいないと思いますが……」

「……」


 なんでなんも言わないんだ。何故か目を逸らすし。


「まさか、ストーカーを見たんですか?」


 コクリと頷く。


「じゃあ、さっきまで言ってた小説がどうのこうのって言うのは?」

「私もまったく確証がない。ただ、このストーカーをどうにかしてほしかっただけだ」

「なら最初から言えばよかったじゃないですか?」

「だって、未来を見張っててストーカーと間違われたって言いたくないだろ」


 うん、この先生もうだめだ。


「それなら早く行ってくださいよ」


 そう言い残して部屋を飛び出した。僕と入れ違いに誰かが入っていくような気がしたが、今は確認している暇はなかった。

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