表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/29

1話 異世界に行きますか?

なろう初投稿作品です。

文章が拙い所がございますが、お手すきの際に読んでもらえますと幸いです。


 あの日、あの女の子を助けたことは後悔していない。だって、そのおかげで彼女に逢えたのだから……


     *


 気が付いたとき、僕は薄暗い霧の中にいた。そうだ、僕は死んだんだった……。


 あの時、居眠り運転した車が小学2年生ぐらいの女の子に向って突っ込んできた。咄嗟にその子を突き飛ばしたことで自分が車に激突された。あの女の子は無事だったかな……。


 進む方向が分からないまま歩き続けると、霧が晴れた場所に出た。


「こんにちは、波多瀬翔隆(はたせかける)さん。ここは不運な事故や病気で亡くなった子どもたちが天国の前に訪れる場所です」


 突然僕に語りかけてきたのは、ショートカットの金髪で、背中には翼が生えており、頭には“わっか”? みたいなのを付けた、いかにも天使っぽい見た目をした女の子だ。はっきり言ってしまえば僕の好きなタイプの女の子だ。でも、その子の容姿を一言で言っちゃえば、


「ロリだ……」


『ブチ』と誰かが切れたような音が聞こえてきた。


「ロリじゃないですよ。これでも私、あなたと同じ16歳の女の子なんですよ。ロリ扱いしないでください」


 顔には出ていないが、言葉にはとげのようなものが感じられた。ひょっとすると怒らせたのかな。


「僕と同じ年? でも、ここの1年と地球の1年でじゃ長さが違うんじゃないですか?」

「ここと地球では時間の流れは同じです、私をロリ扱いしたり、おばさん扱いするのはやめてください」

「それで、あなたは」


 僕の言葉を遮って、『待ってました!』と、言わんばかりに胸をたたく16歳の女の子。やっぱ、子どもなんじゃないのか?


「私は天使です!」

「あ、それは分かってます」


 あんな見た目で天使じゃないと言われる方がおかしい。


「じゃあ、何を聞きたいんですか?」


 明らかに天使さんは落ち込んでいる。驚いてあげた方が良かったのかな……。


「天使さんはここで、何をしてて、そもそもここは一体何なんですか?」

「私はここで子どもたちの案内をします」

「案内?」

「主に天国に行くか、輪廻転生するかの案内をしていますね」

「天国ってところはどんな感じのところなんですか?」

「特にこれといった特徴はなく、ボーっとしてたり、天国にいる人同士で会話したり、下界を見下ろしたりしてますね」


 やっぱ、天国ってのは退屈なんだろうか。下界を見えるってのは少し良いかもしれない。家族とかを見守ってる人もいるんだろうか。


「それにしても、死因が交通事故か……」


 さっきまでのテンションとは違い、どこか少し悲しみを含めたような表情をしながら、天使さんが小さくつぶやいた。


「なにか、ありましたか?」

「いえ、ただ最近、交通事故で亡くなる子どもが増えてきたと感じたので……」

「そうなんですか……」


 交通事故のニュースって絶えないもんな……。ついさっきだって、女の子が轢かれかけたんだから……。交通事故でこの場所に来てしまう子は多いことが天使さんの言葉からなんとなく分かった。寿命を全うできない子が多きことを思い知らされるな。自分も若くして死んだけどさ。


「あっ、そういえば僕が助けた女の子は無事でしたか?」

「はい、あなたのおかげで助かりましたよ」


 良かった……。僕がやったことは無駄にならなかったみたいだ。これで、助けた子まで死んでたら無駄死になってしまうところだった。


「それでどうしますか? 天国行きますか? 輪廻転生しますか? それとも異世界行っちゃいますか?」

「天国行くのは退屈しそうだし、記憶無くしてまで生まれ変わるのもな~。ん? 異世界?」

「はい、異世界です」

「え、もしかして魔王を倒したりする世界とかにも行けちゃうってことですか?」

「はい、そうですね」

「小説とかでよくある異世界生活が実現できるのか」


 まさか自分にもそんなことができる日が来るなんて思ってもみなかった。あれは本の世界でしか起きないものだと思い込んでいたからな。


「そういうのお好きなんですか?」

「はい! こういう異世界ものの本をよく読んでたんです」

「じゃあ、今あなたが持ってる本も、その異世界ものってやつですか?」


 ん? 本? 左手を見ると一冊の本があった。死んだことで感覚が無くなってて気づかなかったみたいだ。


「この本はそういうのとは全然違いますよ」


 この本は異世界ものとは違う。僕にとっての心の支えとなった本だ。


「普通の学園物のラブコメですよ。ただ、作者が亡くなって完結しませんでしたが」


 自分の推しヒロインがフラれたところで終わったんだよな。結局誰を選んだのか分からないまま終わったってしまった小説だ。


「いろんな本を読んでるんですね」

「まあ」


 小学生の頃から心の傷を埋めるためにいろんな本読み漁ったからな。その本の1つがこれだった。異世界ものをよく読んでいたが、本屋で偶然見かけた小説の表紙を気に入って取った本がこの小説だった。


「では、そろそろどの世界に行くか選んでもらっていいですか?」


 天使さんが一冊のパンフレットみたいなものを差し出してきた。パンフレットの中には魔法だらけの世界、地球の科学よりもはるかに技術が発展した世界、動物たちが擬人化した世界などいろんな世界の説明が書かれていた。小さい子でも分かるようにするためなのか丁寧に絵まで描かれていた。


「お決まりになりましたか?」


 どの世界も面白そうだけど、どうせなら魔法を使ってみたいな。異世界っていったら魔法が一番に思い浮かぶし。


「じゃあ、この魔法だらけの世界Dでお願いします」

「分かりました。準備をしますので少しお待ちください」


 ついに異世界か。死んだ子ども達はここに来るって言ってたから、僕の他にももうその世界に転生した

人がいるんだろうか。


『ペラ、ペラ』


 天使さんは本をめくって何かを調べている。


『ペラ、ペラ、ペラ』


 異世界に行ったら、まずはギルドに行って冒険者登録したりするのかな。


『ペラ、ペラ、ペラ、ペラ』


 そのあと一緒に冒険してくれるメンバーを探して、


『ペラ、ペラ、ペラ、ペラ、ペラ』


 衣食住を共にして、モンスターを一緒に倒して、


『ペラ、ペラ、ペラ、ペラ、ペラ、ペラ』


 最終的には魔王に挑むんだろうな。


『ペラ、ペラ、ペラ、ペラ、ペラ、ペラ、ペラ』


 調べるの長くないか?


『ペラ、ペラ、ペラ、ペラ、ペラ、ペラ、ペラ、ペラ』


「ちょっと、待ってください。いつまで調べてるんですか?」

「すみません、私ここの担当今日初めてやるので……」

「今日が初めて?」

「一年前にここの担当だった天使が……駆け落ちしまして……」

「駆け……落ち?」

「はい、ここに来た高校生ぐらいの男の方に一目惚れしてしまったみたいで、そのまま一緒に異世界に行ってしまいました」


 なんじゃそりゃ。駆け落ちって。どんだけ乙女チックなんだよ。


「天使ってそんなに自由なんですか? 連れ戻したりとかしなかったんですか?」

「はい、どこに行ったのかは分かりませんでしたし、そもそも天使って自由気ままにしても良いみたいなので、わざわざ探しに行ったりはしないんですよね」


 いつか天使全員いなくなりそうだな。そりゃ、僕が天使だったとしてもこんな場所で亡くなった人の案内するより、異世界にいけるならそっちを選びたいし。


「なので、つい最近ここの見習いとして業務を確認したばかりなので、まだ完全に内容が把握できてないんですよね……」


 それでさっきからずっと調べてたのか。あんな分厚い説明書なんてそんな早く読み切れないもんな。


「でも、もう大丈夫です! 異世界への転送方法が分かりましたから」

「じゃあ、いよいよ行けるんですね」

「はい、じゃあこちらの魔法陣に入ってもらえますか」


 天使さんが指で『パチン』と鳴らすと、目の前に魔法陣が現れた。


「では、詠唱を唱えます。目を瞑ってもらえますか?」


 移動する瞬間見たいんだけど、ダメなのかな。一生懸命に詠唱を確認している天使にちょっと聞いてみた。


「目を瞑らないと目を怪我するとかがあるんですか?」

「いえ、目を瞑っても瞑らなくても変わりませんよ」

「え? じゃあなんで?」

「見られてると恥ずかしいんで……」


 顔を真っ赤にさせてモジモジと照れる天使。


「目、瞑っときます……」

「ありがとうございます。では詠唱を始めます」


 いよいよだ。あの子も僕が行く世界にいると嬉しいんだけどな。


「波多瀬翔隆さんを地球からD2しゃん7に……」


 ん? 噛んだ? え、噛んだの?


「……テヘ」


 舌を出して頭をコツンとする天使。


『ゴ――――』

 地面が揺れるような感覚がする。もしかして転送されるの? え、どこに?


「すみません! 噛んでしまいました。どこに転送されるかわかんないです!」

「何してるんですか!」


 だんだんと意識が遠のいていく。このままどこかに転送されるのか……。


「すみません、必ず後で追いかけますので」


 意識が薄れる中そんな声が聞こえた……。


 そして完全に意識が飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ