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17話 未来の悩み

「ほら起きて、もう起きないと遅刻するよ」


 まだ眠いんだよな。


「ん? 今何時?」

「7時半」


 なんだまだ7時半か。散歩は夕香だけで行ってもらおう。


「もう少しだけ……え、7時半?」

「そうだよ、何回起こしても全然起きないんだもん」

「ごめん急いで支度する」


 うわ、思いっきり寝過ごした。真凛愛の勉強付き合ってたら寝るの遅くなったんだよな。真凛愛はちゃんと起きれたんだろうか。


「ほら真凛愛ちゃんも早く起きるよ」


 ペンを握ったまま眠っている真凛愛。勉強したまま寝むってしまったみたいだった。


「遅くまで勉強してたの?」

「うん、テストを作って解いてもらったんだ」

「へ~見せて」


 はいっと、一枚のテストを渡す。


「簡単すぎないこの問題?」

「いや、夕香達が作った問題が難しすぎるんだよ。ちゃんと真凛愛のレベルに合わせてあげなきゃ」


 真凛愛のやったテストを採点するとどの教科も6割方取れていた。この調子で行けば、赤点は回避できるだろう。


「そっか、これぐらいに落としてあげないといけないのか。勉強が苦手な子に教えたことなかったから真凛愛ちゃんには可哀そうなことしちゃったかな」

「20時まで拘束されたって嘆いてたよ」

「真凛愛ちゃん、全く解けてなくてね、結局みんながいられるギリギリまで図書館に残っちゃったからね」


 真凛愛お疲れさま。化け物3人たちに捕まったのが運の尽きだったね。


「私たちには真凛愛ちゃんに勉強教えるのは難しいかな。真凛愛ちゃんの勉強は翔隆に任せるよ」


 これ以上、化け物たちに拘束されたら可哀そうだからな、最後まで面倒見てやるか。


「分かった、任せて。赤点回避させてみせるから」

「真凛愛ちゃんのこともそうだけど、私との勝負忘れてない?」

「うん、ちゃんと覚えてるよ。全力で頑張るから」

「ニヒヒ、私が勝つけどね、全力でかかっておいで」


 学力的には同じぐらいだからな。誤差での勝負になりそうだ。


「じゃあ、私は真凛愛ちゃん部屋まで運ぶから早く着替えてきてね」


 真凛愛を背負ったまま部屋から出ていく夕香。真凛愛起きないな、よっぽど疲れたんだろうか。もう少し負担を軽くしてあげるか。


     *


 あれから、1週間が経ち刻々と中間テストが近づいてきた。真凛愛は着々と学力をつけていき、本番では間違いなく50点は取れるだろう。逆に未来の様子が日に日に悪くなっていった。そうか今まさに未来には一つの事件が起きてるんだよな。


「未来体調悪そうだけど大丈夫?」

「大丈夫、テスト勉強で疲れてるだけだから」

「そうなの? 無理しすぎないようにね」


 夕香が聞いても未来は話そうとしない。未来が朝陽や夕香に相談するのは、中間テストが終わってからだからな。あと、2週間近く未来は苦しむことになる。


「ねえ、翔隆。未来の様子なんだか変じゃない? あれ、勉強疲れじゃないような気がするけど」


 意外に鋭い真凛愛が聞いてくる。


「物語通りなら、未来は少し困った状況に置かれてるからね」

「なんとかしてあげられないの」

「相談してくれれば、動けるんだけどね。事が事だから動きにくいんだよね」

「未来は何に困ってるの?」


 まあ、真凛愛になら話しても良いか。


「ストーカーだよ」

「え?」

「だから、未来、ストーカーの被害に遭ってるんだよ」

「そうなの、未来が? どっちかというと地味そうな子なのに?」


 真凛愛のスマホを借りて●outubeを開き、あるチャンネルを再生して真凛愛に見せる。


「何これ? わ~凄い、かわいい子じゃん」

「これ、未来だよ」

「え? 確かに眼鏡がなければそんな感じがする」


 僕が見せたチャンネルには眼鏡を外して髪を束ねた未来が配信をしている映像が流れている。


「学校とは違うタイプに見えるね」

「未来の本当の姿はこっちだよ」

「意外~落ち着いてるのが好きだと思ってたよ」

「それで、ファンの人が未来をストーカーをしてるんだ」

「じゃあ、早くみんなに教えてあげないと」

「待って真凛愛、まだ相談されてない」

「でも、ストーカーだよ」

「未来は配信をやっていることを誰にも言いたくないんだよ。ストーカーの説明をするには配信をやってることを言わなきゃいけないから、勝手にばらすのはどうかと思う」

「でも、このままだと未来が可哀そうだよ」


 僕だって何とかしてやりたい。だけど、未来が内緒にしたがってることを勝手に言うってのも悪い気がする。だから未来が夕香たちに相談してくれるまでは表立って動くことが出来ない。


「やっぱりだめだよ。このままにしちゃ。私と翔隆の二人だけでこっそり解決できないの?」


 それも考えたさ。表立ってできないならこっそりやろうと思ったよ。でも、


「厄介なのが、成人した男なんだよ。ストーカーしてるのが」

「でも警察とかに相談したりとかは?」

「実際に僕たちが見たわけじゃないし、それに未来が証言してくれないと難しいと思う」

「じゃあ、翔隆が戦って倒そう」

「大人相手だと勝てない可能性の方が高いよ」


 なんで大人相手に僕が勝てると思って話しているんだろうか。


「じゃあ、朝陽たちはどうやってストーカーを捕まえたの?」

「偶然通りかかった警察に押さえつけられた」

「ダメじゃん」

「うん、だから二人だけだと厳しいんだよ」


 最終的に運が良かったとしか言えないからな。


「でも、それでも私は何とかしてあげたい」

「未来が相談してくれさえすれば……」

「じゃあ、未来が相談してくれるように仕向けよう」

「どうやってやるのさ」

「フフフ、私はこんなこともあろうかと用意してたんだよ」


 そういってポケットから一本の紐と五円玉を取り出した。まさか……。


「催眠術だよ」


 やっぱりか。


「これで、『あなたは悩みを相談したくなる~』っていう催眠かけるの」

「分かった、僕がちゃんと考えるから」

「え~、せっかく催眠術の本で見たことが試せると思ったのに」


 五円玉を指でツンツンといじりながらへこんでいる真凛愛はほっといて、未来を助けるための策でも考えるとするか、今僕が考えられるのは、

 ➀未来が朝陽か夕香に相談するように誘導して5人でストーカーに対処すること。

 ②誰にも言わず、僕と真凛愛の2人だけでストーカーに対処すること。

 ③偶然ストーカーされてるのに気づいたと未来に言って3人で対処する。

 これぐらいしかないか。


 一番理想的なのは➀だ。だけど、それが一番実現するのが難しい。②は夕香に言った通り、2人でストーカーの相手をするのはほぼ不可能に近いだろう。③も未来一人が増えたところで大して変わらないだろう。そう考えるとやっぱり➀が一番安全かつストーカーを撃退できる可能性が高いんだよな。僕と朝陽がストーカーを対処している間に夕香に警察呼んできてもらうってのが一番楽でいい。


「やっぱ、朝陽たちと協力した方が楽なんだけどな」

「そうでしょ、やっぱ夕香ちゃんたちに話そうよ」


 でも、それだと未来の気持ちがな……


「いや、未来の気持ちを優先しよう」

「じゃあ、未来が危なくない?」

「未来が相談する日までは実害は出てないから大丈夫」

「でも、精神的にはかなりの負担でしょ、このまま放っておくって言うの? 私そんなことできないよ」

「見捨てるって言ってるわけじゃないよ。ちゃんと考えはあるから」

「どんな?」


 真凛愛だけに聞こえるように耳元でそっと伝える。


「上手くいくの?」

「夕香の単純さと朝陽の敏感さに賭ける感じかな」

「勝算はどれぐらいあるの?」

「7割弱」

「微妙なところだね」


 みんなの機転の良さにかかってるからな。そこは主人公の力を借りるしかない。


「良いよ。翔隆が言うならその賭け私乗った」

「危ない目に遭うかもしれないのに?」

「うん、翔隆は7割自信を持ってるんでしょ。だったら信じるよ翔隆のこと」


 よく会って間もない僕のことを信じられるよ真凛愛は。純粋さ故の甘い考えなのか、悪い人に騙されないように気を付けてほしい。


「じゃあ真凛愛作戦通りお願いできる?」

「うん、分かった」


 ストーカー退治は今日決行することにした。

18話の更新は22:00辺り

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