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12話 稲田真凛愛

「翔隆くん。やっと見つけたよ。こんなところにいたんだ」

「え、誰この子?」


 夕香が不思議そうに聞いてくる。う~ん、なんて説明しようか。この子が天使であることは言えないからな。


「初めまして、私はAくんの幼馴染の稲田真凛愛です」


 へ~、名前は真凛愛って言うのか。どこかで聞いたことあるような気がしたが、気のせいだろう。


「へ~、こんなかわいい子が幼馴染がいたんだ」


 目が死んでるよ。なんでそんな目で僕を見る。


「とりあえず、外だと寒いから中に入っちゃって」


 夕香が真凛愛を家に入れる。


「ありがとうございます」


 夕香に気づかれないようにそっと真凛愛に近づく。


「よくここにいるって分かりましたね」

「転送した天使なら後々どこに転送したか調べることができるのです。それにあの空間なら転生者がどんなふうに過ごしてるかも映像で見ることができますから」


 なにそれ、ずっと監視されるってこと。もしかしたら24時間監視され続けてるかもしれないのか。


「いえ、ずっとは監視してませんよ。監視できるのも担当した天使だけなので」


 さらっと心を読んだぞ。この天使。天使とか神官は心を読むことが当たり前なのだろうか。


「この世界の神官に会いましたよね?」

「はい、校長先生になってましたけど」

「その時説明受けませんでした? 心を読むことができると」

「天使たちも読めるんですか」

「はい、読めない人もいますが」


 変なこと考えられないじゃん。


「そうですね、悪いことを考えてたら止めるのも私たちの仕事なので」

「気になったのですが、心って無意識に読めてるのですか?」

「いえ、意識しないとできませんね」

「じゃあ、一日中心を読まれてるってわけじゃないんですね」

「はい、なんなら翔隆さんの心読むのやめましょうか?」

「そんなことして大丈夫なんですか?」

「ええ、Aさんのことは信用してますから、心を読まなくとも悪いことはしないでしょうし」


 そんなんでいいのかな、天使なのに。


「二人で何話してるの?」


 夕香が退屈そうに待っていた。


「ごめんなさい。久しぶりに翔隆くんに会えたので」

「いえ、怒ってるわけでは……、翔隆、先行ってるから話が終わったら来て」

「かわいい子ですね」

「ええ、僕もあの子が一番好きですからね、この世界で」

「夕香ちゃんでしたっけ? 良い子そうですもんね」

「はい、そのおかげでここに居候できてますから」


 居候できたのは僕がこの世界に溶け込むための調整だとは言っていたが、それでも夕香が優しいことには変わりないだろう。


「あ、それとこれからは私は翔隆さんと幼馴染の設定で行きますから、敬語はなしでお願いします。私も使いませんから」

「分かりました」


 幼馴染なのにお互い敬語を使ってたら違和感あるからな。


「それと、話は私に合わせてもらってもいい?」

「いいよ」

「話がズレちゃうとごまかすの大変だろうし」

「でもそれなら、僕が話して真凛愛が合わせた方が良いんじゃない?」

「大丈夫、話考えてきたから」


 信用なんないな、大事なところで噛んだわけだし。


「いざとなったら、心読むから大丈夫だよ」

「さっき、心読まないって言ってなかった?」

「今日みたいな時とかは別で……」

「まあいいけど」


 ダメって言ったところで勝手に読むことができるからな。


「翔隆くん、優しいから大好き」


 そう言って腕に抱きついてくる真凛愛。


「距離感が近くない?」

「幼馴染なんだから良くない?」

「あくまで設定でしょ?」

「ふ~ん」


 機嫌が悪そうだ。


「夕香ちゃんがくっついてたら喜ぶくせに」

「そんなことないよ」

「ほんと?」


 どうやら夕香と真凛愛の二人の扱いに差があると思ってご立腹だったらしい。


「まあとにかく、夕香ちゃんにばれないようにしなきゃいけないんだから、ちゃんとしてよね」

「はいはい」


 なんだろうか、真凛愛と話すとなんか落ち着く。こっちにきて気を遣いすぎてたからな。久しぶりに気を遣わないで話せてるからかな。


「じゃあ、私のことを信じて話合わせてね」


 真凛愛はそう言って、夕香たちがいるリビングへと入った。ノリノリだし、付き合ってあげるか。


「じゃあ、真凛愛ちゃんは翔隆を追いかけてきたってことかい?」

「はい、そうです。私に相談もせずに家出しちゃったんですよね」

「それは大変だったね」

「はい、ここにいると知ったときは驚きました。まさか別の県に行ってるとは思わなかったので」


 凄いな。さっきから嘘しか付いていないのに本当のことっぽく感じる。


「どうやって真凛愛ちゃんは翔隆のことを見つけられたんだい」

「えっと、これですね」


 真凛愛はポケットからスマホを取り出した。


「ここに、翔隆が写ってたんですよね」


 真凛愛が開いたのは写真や言葉などを投稿できるサイトでそこにこの近くの場所で撮られた写真を夕香たちに見せていた。


「本当だ」

「はい、それでここに翔隆がいると分かって、飛んできました」


 この写真は合成だな。用意が良いな。


「執念深いってなんというか、翔隆にはすごい幼馴染がいるんだね」


 2人に聞かれないような小さな声で××さんに言われた。


「はい、行き場所内緒にしてた意味がないですね」

「それは、大変だな」


 『大変だな』という割には笑っている××さん。


「いやね、私の嫁さんもね私の幼馴染だったんだよ。それも真凛愛ちゃんと同じぐらい元気だったよ」


 真凛愛を懐かしそうな目で見る××さん。夕香のお母さんは真凛愛みたいだったのか。


「それで、真凛愛ちゃんはこの後どうするの? やっぱり翔隆を連れ戻しに来たの?」


 僕と××さんが話している間、夕香と真凛愛たちの方も話が進んでいた。


「ううん、連れて帰るつもりないよ。翔隆くんと仲が悪い親のところに私が戻す義理はないしね」


 真凛愛に連れ戻される=死ぬってことだからな。それは僕も嫌だ。


「じゃあ、真凛愛ちゃんはこのまま家に帰るってこと?」

「いや、私もこの町に住むつもりだよ。転入手続きももう済んでるしね」


 それまた仕事が早いことで。


「じゃあ、学校は私たちと同じ?」

「うん同じだよ」

「クラスはどこ?」

「2年B組」

「私たちと一緒だ。それよりも真凛愛ちゃんって私と同い年だったんだ」


 見た感じ中学生ぐらいにしか見えな……。真凛愛に睨まれた。心がっつり読んでんじゃねえか。


「やっぱり、年下にしか見えない?」

「ううん、しっかりしてるから年上かと思ったんだよ」


 慌てて手を振る夕香。


「えへへ、しっかりして見えるのか~」


 お世辞だよお世……


「痛っ!」

「どうしたの? 翔隆」

「ううん、何でもないよ」


 足を思いっきり蹴られた。すみません。もう余計なこと考えません。


「それで、いつから学校に来るの?」

「明日から来て良いって言われてるよ」

「やった~!」


 校長先生の後処理大変だっただろうな。


「真凛愛ちゃん、住む場所は決まってるの?」

「いえ、これから探そうかと」

「これからって、今?」

「はい、そうですけど」

「今何時だと思ってるの?」

「今ですか? 20時ですけど?」


 夕香の気迫に飲まれる真凛愛。


「20時だよ、もうこんな時間に女の子が出歩いちゃ」

「ん? そうなの?」


 天使だった真凛愛にはない常識だもんな。あの世界にそんな常識あるはずないし。


「ダメだよ」


 まあ、悪い人もいるからな。年齢より若く見える真凛愛は連れていかれてもおかしくないし。


「こんな時間に出歩いたら補導されちゃうでしょ」


 そっちか。たしかに、そっちもそうか。


「そっか……じゃあどうしよう」


 ××さんをチラッと見る夕香。もちろん、××さんは反対なんてしないだろう。


「真凛愛ちゃん、家泊っていいよ」

「え、いいの?」

「うん」

「ありがとう、夕香ちゃん。大好き!」


 夕香に抱き着く真凛愛。すぐに真凛愛は抱き着くな。夕香もそんなんだから息がぴったりだろうな。


「じゃあ、寝室だけど……」


 家も賑やかになるな。そんなことを考えながらお茶を飲む。ん? このお茶おいしいな。


「うん、Aと同じ部屋でいいよ。一緒に寝るから」

「ゴホッ、ゴホッ」


 何言ってんだ、真凛愛は。


「ダメに決まってんでしょ」

「え、なんで? 昔はよく一緒に寝てたよ」


 おい、でっちあげるな。そんな記憶真凛愛とはないぞ。


「そ、それは小さい頃だからいいけど……」


 言ってて恥ずかしがる夕香。


「もう高校生なんだから同じ部屋はダメだよ」

「え~、つまんないの」


 いや、僕は嫌だよ。女の子と同じ部屋って。


「ちゃんと、真凛愛ちゃんが寝る部屋あるからそこで寝て」

「分かった……」


 真凛愛がどういう人物か大体分かってきたぞ。一言でいえば、常識外れだ。夕香をもっとダメにした感じだ。


「じゃあ、こっち来て部屋案内するから」

「は~い」


 あの顔は何か企んでる顔をしてるな。



 時刻は23時。この時間は夕香も××さんも眠りについてる。それにしても、真凛愛、本当のこの世界まで来たんだな。すぐ追いかけるといった割には時間はかかってたような気がするけど、探すのに時間がかかったのだろうか。


 『ガチャ』とドアが開く音がした。誰かが忍び込んできたな。まあ、そんなことをするのは、一人しかいないだろう。

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