1. 綺麗好きほうきとメガネ雑巾
こんにちは、零華です。
私の書いた「雑巾係の麦っちゃま。」を読んでいただき、本当にありがとうございます。
実は、この話、所々ノンフィクションなんです。私のクラスメイトとのお話をモチーフとして、「葉望歌」や「麦」、「薇黄」というキャラが生まれました。
実際、麦くんのモデルとなった人は、本当に前髪が長く、眼鏡男子でして。笑 (弟にしたいです/////)
そして、掃除時間にガチでお辞儀します!これはほんとに可愛いなと思い、ほのぼのとしたこの可愛さと必死さなどをこの作品を通して書き伝えたいと思いました。
ちなみに、麦くんのモデルとなった人も、葉望歌のモデルとなった人も、薇黄のモデルとなった人も、私の大切なお友達です。
私含め、4人で仲良くしてま〜す!
所々ノンフィクションとはいえ、フィクションのところも、たくさんあります。
しかし、「たんぽぽの花を....〜」のところは完全に実話で、本当に笑えて心がほっこりします!
この言動可愛かったな。と思った時、毎回メモしてこの小説を書き進めてます。
同じ歳なのに、どうしても親目線になってしまう〜。
あなたもきっと、この作品を読むと、私と同じくついつい親目線になってしまうかも。
それでは、みんなで掃除を楽しみましょう!!!
雑巾レース、GO!!
「二階教材倉庫前の廊下のほうき係やりたい人、誰かいないの〜?」
中学二年。春先。こつ、こつ、しゅ、.....かたん。
白い粉。すけた文字。そこから映える影。
「あー、ちなみに、二階教材倉庫前の廊下の掃除は、ほうき係女子一人、雑巾係男子一人だからねぇ?」
数十秒、静まり返ったクラス。
「え、あのめっちゃ汚くて蜘蛛の巣だらけの廃墟廊下?無理だわぁ、ホコリ吸ってむせそう」
【廃墟廊下】。二階教材倉庫前廊下のことを、みんなそう呼ぶ。ホコリやゴミ、汚れ、蜘蛛の巣...。そう呼ばれる前に、誰かが掃除すればここまで汚れた廊下は完成しなかったろうに。
「うわっ。」少し驚いて声が出てしまった。後ろからペンでつつかれるなんて、漫画でありそうな展開だが、ほんっっと、これはびっくりするからやめてほしい。心臓が肋骨から飛び出すかと、.....いや、それはないか。
「はもっちー、あんたやったらぁ?綺麗好き&掃除好きでしょ?」
「えー、なんで私が?確かに掃除は好きだけどさ。でも蜘蛛の巣とかあるところはちょっと.....」
「あんたは虫嫌いまだ治ってないのね。ただの蜘蛛の巣だし、はらえばいいじゃん。なにか道具とか使ってさ。いいから、はもっち、ほら!やりなよぉ」
「嫌だよ、。教室とかの掃除の方がまだいi.....」
「せんせー!葉望歌がやりたいってー!」
「ちょ、薇黄!勝手に何言ってんの!?」
「あら、碧南 葉望歌さん、やってくれるの?ありがとね!」
「いや、先生あのぉ、.....」んん、、ん?...ん!!!!?????
言葉が重なり合い、どんどん和音を作り生み出していく教室。
「俺さ、去年、葉望歌さんと同じクラスだったんだけど。めっちゃあの子黙々と掃除しててさ、」
「なるほど、綺麗好きとか?」
「多分そうかもな。汚いの無理だから、できれば廃墟廊下の掃除やってほしいよなー。」
「碧南さん、お願いしてもいいですかー?」
「私も碧南さんがふさわしいかと!」
三百六十度と言っていいほど、私の周りからたくさんの声。何、何!?春なのに、暑い、暑い、暑い.....、圧いよ!?(?)みんなからの圧!! 違う意味で汗出てくるんだが。
「ん?なにか呼びましたか?碧南さん?」
「ん、、えーーーーっとぉー、なんでもないでー...す。」
嘘だ。これは完全なる、【押し付け】やん。何とか愛想笑いして誤魔化してはいるけども、私、今、絶対無意識に半泣き状態みたいな顔しとるわ。ヤッバ。
そして、この状態にさせた犯人で、中一の時からの唯一、馴染みやすく話しやすかった現在の友達(薇黄)は、舌をちょこっと出しながら呑気に星型とハート型が混ざったウィンクをこちら側へ、かましている。
「ごめんなちゃい!キラッ!♡☆」...............、んじゃねーよ!!後でちゃんと謝って、ついでになんか奢ってよね!
「はい。じゃあ、ほうき係は決まったから、次は雑巾係ね!男子の誰か、やりたい人いるー?」
先生は辺りを見回す。が、教室はみんな、静まり返って誰も手を挙げようとする人はいない。
誰かがきっと、廃墟廊下の掃除をやってくれるだろう。誰かが、誰かが?そんなの、人任せ。自分や、みんなだって分かってる。分かってるけど実際に自分から進んで行動できずにいる、人間の中学生のような悪魔だ。それが結局は人間の心。光もあれば、影もある。光の部分を広くするか、影の部分を広くするのかは、自分次第。
あの彼は、光の部分が広かった。
キーーーーーーーーーーーーーン.....。
この時、ほんの一瞬だけ。この瞬間だけ、周りがスローモーションのように遅くなっていくのを自覚した。
...............................その手のひらは、静かに空中へと上がった。
「はい.......」
声が小さく、不器用にも見える男子の手。前髪が長く、黒メガネの地味な、でもなんだか不思議なような。異様な雰囲気を漂わせているように私は思えたが、やはり、声があまりにも小さく、こんな静かな教室なのに先生の耳に声は届いていなかった。
「あのぉー、.....せんせ..?僕やりたい.....です、、、」
「ん?誰か呼んだ?ちょっと、そこの女子、静かにしなさい。きこえないわ。」
「先生!一番右の後ろの席の男子がやりたいんだって!」
せっかく、その男子は勇気を振り絞り、やりたいと言い出したのに聞こえなかったからできない、なんてなんかヤダな。だから私は先生に教えた。
でも、今思うと、進級してちょっと経ったぐらいだけど、あの男子と話したことなかったな。前髪がメガネに少し、かかってるし。もう少しで目にも前髪がかかりそうだよ。校則違反にならなければいいんだけどな。
「あら、生月満麦さん、やってくれるの?ありがとね!」
しゅ................、かたん。
「と、いうことで、これで掃除係決めは以上です。次は、給食当番決めをしていきましょう!」
がやがや。ざわざわ。カチ、カチ。時計の音が今日だけは、やけに静かにしてくれている。まるで、時のはやさを、私たちに感じさせたくないかのように。
「ん...、眠。」また小さく聞こえた。
私の席から右斜め後ろの席にいる彼は、その後、いつものようにうつ伏せになって寝ようとしているが、何故だろうか。
腕との隙間から、私を見ているような気がする。
.................、いや、自意識過剰かな。あははは。だけどやっぱり感じる、。睨みつけるというかそういう視線じゃなくて、暖かいような、ほわほわしてるっていうのかな。なんて表せばいいんだろ...。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
『とても優しい視線を、後ろから感じていた。』