草凪澄人の決断⑩~増える大蛇~
澄人が大蛇を神の一太刀で両断したら、二匹に増えてしまいました。
「これはまずいな……大蛇が増えたぞ……」
ミュルミドネスは冷や汗を流しながら、苦笑いをしている。
俺は剣を構えて、この状況を打開する方法を考えることにした。
俺もグラウンド・ゼロを発動させ、魔力を注ぎ込み始める。
「お前たちはしばらく隠れてくれ。メーヌ!!」
俺が名前を呼ぶと、茶色の光が世界樹の苗木やミュルミドネスを包み込む。
黒いグラウンド・ゼロが発動する前にミュルミドネスたちを大地の中へ隠し、戦いの被害が及ばないようにした。
(これで俺と蛇の戦いに巻き込まないで済む)
世界樹の苗木の周辺へ注意を払っていると、周囲の魔法陣から黒い光が漏れ始める。
魔法陣から逃げるように離れても追尾して追ってくるので、意味がない。
俺を消し飛ばすために用意された無数の魔法陣がほぼ同時に臨界点を迎えようとしていた。
「俺のグラウンド・ゼロとどちらが強いかな!!??」
グラウンド・ゼロの詠唱を行い、威力の底上げを図る。
集まりし奇跡の輝きよ
万象を等しく無に帰し
終焉に導く力を我が元に
破滅よ!!
敵を穿て!!
グラウンド・ゼロ!!!!
すべての魔力を捧げる覚悟で魔力を注ぐ。
黒いグラウンド・ゼロが発動するのに合わせて、俺も自分の魔力を暴走させた。
その刹那、視界が真っ赤になり、体の奥底にあるものがすべて吐き出される感覚に襲われる。
赤い光と黒い光が混じり合い、世界が割れるような音と共に黒い光が弾け飛ぶ。
(なんて破壊力だ……これで相殺するので精一杯か)
その光が収まると、地面が大きく削れていてクレーターのように陥没していた。
今まで見たことのないような光景に目を奪われることなく、敵対する二匹の大蛇を睨みつける。
グラウンド・ゼロの範囲外にいた二匹は俺に狙いを定めており、攻撃態勢に入っているようだ。
(血が出たら、自分は逃げてグラウンド・ゼロ。叩き切ったら数が増える……さて、どうやって倒せばいいんだ?)
俺は攻略方法が浮かばないまま剣を握りしめ、目の前にいる二匹の大蛇を睨みつける。
大蛇たちも俺へいつでも襲いかかれるように態勢を整えていた。
「「シャアアァアアアアアア!!!!」」
二匹の大蛇が俺を挟み撃ちにするかのように迫ってきており、片方の大蛇からブレスが放たれた。
俺はそれを避けることなく、真正面から受け流し、そのままブレスを吐いた大蛇の口元まで突っ込んでいく。
大蛇はブレスが効かないことに驚いたのか、反応が遅い。
俺はそのまま大蛇の頭上を通り過ぎて背後を取り、頭を思いっきり殴りつける。
「おらぁ!!!!」
「シャーッ!?」
大蛇は殴られた衝撃で地面に倒れ伏す。
俺は大蛇の背中に飛び乗り、何度も殴ってダメージを与えていく。
しかし、大蛇もやられっぱなしではなく、長い尻尾を振り回してきた。
俺はそれをしゃがんで避け、尽力の一撃を発動させた渾身の力を込めて拳を振り下ろす。
「切っちゃだめなら殴るしかないだろう!!」
尽力の一撃を食らい続け、痛みに耐えかねて大蛇が暴れ始めた。
振り落とされないように必死に鱗にしがみつきながら、俺はさらに攻撃を加え続ける。
大蛇が俺を引き剥がそうと体を大きく動かした時、もう一方の大蛇が横から噛みついてきた。
「邪魔をするな!!」
俺は大蛇の鼻先に裏拳を入れ、噛まれそうになるのを寸前で避ける。
そして、噛みつこうとしてきた大蛇の頭を蹴り飛ばす。
「ガウッ!!」
蹴られた大蛇は地面を転がったあと、口から黒い血を流しながら俺を睨んでいる。
俺は大蛇から飛び降りて距離を取ると、二匹の大蛇は自分を傷付けるように胴体に噛み付く。
「こいつら! 俺が殴るからって黒い血を自分で!!」
自分に噛み付いたことで、大蛇の胴体からどんどん黒い血が流れ出てくる。
俺はその様子を見て、あることを思いつく。
(こいつら……俺への有効手段がグラウンド・ゼロしかないと判断したのか?)
大蛇たちは自分を傷つけることで、黒い血液を出し続けている。
それはつまり、グラウンド・ゼロを発動させるために自らを犠牲にしているということだ。
大蛇たちが自滅するのを待っているのも悪くないが、時間がかかりすぎる。
(草凪澄はその根競べの結果、相打ちになったのか?)
そう考えると、俺には時間をかける選択肢はないことがわかる。
大蛇たちの出血量を見ると、そろそろ限界が近そうだ。
俺は魔力を暴走させつつ、再びグラウンド・ゼロの詠唱を始める。
相殺するためのグラウンド・ゼロを発動させると同時に、二匹の大蛇へ全力で駆け出した。
(あそこへ誘導できればっ!!)
大蛇たちに近づこうとすると、二匹は体を噛むことを止めて俺から離れる。
そうしているうちに追いかけてきた魔法陣が俺を囲み始め、四方八方から黒い光が襲い掛かってきた。
(行かなかった! 無理をするのは今じゃない!!)
俺もグラウンド・ゼロを発動させるために魔力を注ぎ込む。
赤い光と黒い光が入り乱れる中で、俺は大蛇たちを追いかけた。
「グラウンド・ゼロ!! きたっ!!!!」
あれから何度か黒いグラウンド・ゼロを相殺しているうちに、ようやく大蛇が俺の思惑通りに動く。
「「キシャアアアアア!!!!」」
これまで数十回と行なったグラウンド・ゼロの打ち合いで、大地に深いクレーターが同じ数できていた。
そのうちの一つに大蛇たちが滑り落ち、這い出ようともがいている。
「捕まえた!! メーヌ!!」
メーヌで穴をさらに深くし、幅を狭める。
最初からメーヌで穴を作ったら警戒されるし、黒いグラウンド・ゼロを相殺するのにそこまで魔力の余力がなかった。
穴を狭めたことが功を奏したようで、深くした穴の中で大蛇はもがくだけで動けないようだ。
それでも口の近くにある自分たちの体を噛んで、黒い血を流そうとしている。
「あとはちゃんと動作するかだな」
俺は血が流れ始めたのを見てから、グラウンド・ゼロ以上に大量の魔力を両手に集め、神の祝福を発動させた。
「すべてのフローズンフロッグよ! 甦れ!!」
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