表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

364/405

草凪澄人の日常⑩~DNA鑑定結果~

澄人が鑑定結果を見ながら考え事をしております。

【DNA型鑑定書】

草凪 澄人 様

草凪 聖奈:血縁関係なし

草凪 正澄:血縁関係なし

その他:血縁関係にある人物は登録されておりません


 家に帰ってきた俺は、先ほど渡された用紙を自分の部屋で眺めながらボーっとしていた。


 ヘレンさんと一緒に鑑定してくれた人から報告を聞いたが、全く耳にはいってこなかった。


 紙を見てわかるのは、妹だと思っていた聖奈もじいちゃんとも、俺は血縁関係がないということだ。


(いったいどういうことなんだ? じいちゃんは俺を聖奈と一緒に育てたって言っていたのに……)


 この結果を信じないのは簡単だが、ヘレンさんが何回か検査のやり直しを要求したようなので信じるしかない。


「ふー……なんでじゃなくて、どうしてこうなったのか……それを調べないと前には進まないな」


 頭ではそうするのが良いとわかってはいるが、心がついていかない。


 手掛かりは、俺の検査結果の下にあるもう一枚の紙だ。


【DNA型鑑定書】

草凪 聖奈 様

草凪 正澄:血縁関係有り


(聖奈とじいちゃんには血縁関係がある。これがヒントだな)


 今まで俺と聖奈の両親を蘇らせようとしていたのが間違いだったのだ。


 違う人を同一人物だと思い込んでいたため、神の祝福が正常に発動しなかったと考えられる。


(……いや、違うな。じいちゃんは自分の息子をイメージしていたはずだ。それなのに発動しなかった)


 じいちゃんはあの時、俺と聖奈を自分に渡してきた人物を思い浮かべていた。


 それなのに神の祝福とワープが発動することはなかった。


「もっと……何かあるはず……いったいなんだ……」


 ここで立ち止まっていても何も始まらないと思い直して天井を見上げる。


 誰かに相談をしようにも、相手を間違えれば騒ぎが大きくなるだけになるだろう。


(今まで通り接することが……ん?)


 【連絡】

  従者のリリアンが連絡を求めております

  許可しますか?

 《許可》《拒否》


 今後どのように聖奈たちと接すればいいのか悩んでいたら、リリアンさんから連絡が入った。


 血縁一の問題は人で悩み続けていても仕方ないので、今は頭を切り替える。


 許可のボタンを選択すると、リリアンさんの声が頭に響いてきた。


『使者さま、リリアンです。聞こえますか?』


『聞こえますよ。どうかしましたか?』


『もうすぐ復興が終了します。むしろ、前よりもきれいになったと思うくらいです』


 声色が明るくなっていることに気が付き、自然と笑みを浮かべてしまった。


 それは異界ミッションの詳細を見ても結果が明らかで、数日かかると思っていた作業がもう終わったらしい。


【異界ミッション8】

 異界を復興させなさい

 復興度によって報酬が変化します

 現在(110%/100%)

 ※このミッションは任意で終了できます


 熱心に作業を進めてくれた異界の人たちに感謝をしつつ、リリアンさんへ報告のお礼を言った。


 また、復興が終わってから進めようとしていた話を切り出す。


『それでは、勾玉を受け取りに行きます』


『お待ちしております!』


 元気よく返事をしてもらったあとに伝心を終了したのだが、これで良かったのかと考えてしまう。


(問題の先送り……いや、できることからやっていこう)


 気持ちを切り替えるため、異界ミッション8は異界へ行ってから終了しようと思う。


 検査結果を机の引き出しへ突っ込み、異界へためにお姉ちゃんとヘレンさんへメッセージを送る。


「お兄ちゃん、今日のテレビ見てくれた?」


「ん? 聖奈か?」


 スマホでメッセージを打ち込んでいると、聖奈がノックなしにドアを開けて話しかけてくる。


 まだ心の整理ができておらず、聖奈に対してどう反応したら良いのかわからない。


(普通に……普通に対応しよう……)


 平常心を装いつつ、メッセージを送り終わったスマホをポケットへしまう。


 椅子を回転させながら後ろを振り向くと、いつもと同じ顔の聖奈がいた。


(あれ……こんな感じだったっけ……)


 聖奈の顔を見た瞬間、いつもどのように聖奈と接していたかわからなくなってしまった。


「もしかして見れなかったの?」


 聖奈は少し悲しそうに俺のことをじっと見つめてきた。


(聖奈にそんな顔をさせちゃいけない)


 俺はなるべく笑顔を崩さないように意識しながら口を開いた。


「見たよ。成長した理由の時、すごく良いコメントしていたよ」


「本当!? お世辞じゃないよね!? 嬉しい!!」


「お、おい!? 聖奈!!??」


 パッと明るい表情になって俺に飛びついてくる聖奈を受け止める。


 そのまま背中まで手を回されてぎゅっとされると聖奈の慎ましやかな胸が体に押し付けられた。


(意識するとこれはマズイ!!)


「ちゃんと見てたなら言ってよ〜。お兄ちゃんが見ていると思って頑張ったんだから」


 聖奈はすぐに俺から離れてくれたため、俺は心の中でほっと息をついた。


 離れてくれたことで余裕が生まれ、テレビを見たときの感想をそのまま口にする。


「真友さんたちも驚いていただろう? 聖奈のことを見直したよ」


「えへへ~、それほどでも……あるかな!」


 聖奈はそう言いながら腕を組んで満面の笑みを浮かべている。


 嬉しさを隠しきれていないようで、頬が赤くなっているのがかわいい。


(本当に聖奈のこういうところはかわいいな……って、いやいや違う違う)


 頭を大きく振って邪念を吹き飛ばすと、聖奈がじゃあねと部屋を後にする。


 聖奈はスキップをしながら部屋を出て行き、廊下の奥へと姿を消した。


(何とか乗り切った……異界に行っている間に気持ちを整えよう)


 聖奈と気持ち的な距離を離さないといけないと考えながらワープを発動させる。


「あ! お兄ちゃん! 別の話があるんだった!」


「ごめん聖奈。しばらく異界へ行ってくる」


 慌てて飛び込んでくる聖奈だったが、ワープを途中で止めることができない。


 悲しそうに眉を八の字にした聖奈と目が合ったまま異界へと移動してしまった。

ご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、感想、ブクマ、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。


特に広告の下にある評価ボタン・いいねボタンを押していただけると、大変励みになります。

これからもよろしくお願いします。

次回の投稿も未定ですので、更新を見逃さないためにもブックマークだけはよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ