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救世主草凪澄人④~ケビンさんとともに~

澄人がケビンさんと行動しようとしております。

 しかし、すぐに気を取り戻したのか、首を横に振って俺の肩に手を置く。


「澄人くん……君は何を言っているのか分かっているのか? 異界には建物は……」


「その常識を覆すための物を俺は持っています」


 そう言い切ると、ケビンさんは俺の目を覗き込んでくる。


 しばらくすると、俺が冗談でこんなことを言ってはいないと理解したのか、額を押さえて天を仰ぐ。


「……本当にそんなことができるのか?」


「はい。もう一つ聞いてほしいのが、建設の準備が完了するとレッドゲートが発生します」


「レッドッ!?」


「しっ! あまり大きな声を出さないでください」


 俺は大声を上げそうなケビンさんの口を塞ぎ、人差し指を自分の口元に当てる。


 周りに注意を向け、人の目があまりこちらに向いていないことを確認してから手を放す。


「すまない……だが、本当にレッドゲートが発生するのか?」


「準備が成功すれば確実に発生します。そして、そのゲートへ突入する必要があります」


「君が私へ連絡するときに言っていた仮説のことだろう?」


「そうです。異界のモンスターが境界の中に現れているんです」


 あらかじめ事前の電話でケビンさんへ俺の考えを伝えていた。


 俺の言葉を聞いたケビンさんは顎をさすり、眉間にしわを寄せて考え込む。


 やがて、何かを思い至ったように顔を上げて、俺と目を合わせた。


「その仮説を信じるのなら、新しくできたレッドゲート内のモンスターがわかればいいんだな?」


「いいえ、直接確認するために新しくできたすべてのレッドゲートへ突入する予定です」


「私をうなずかせるためにいくつかの依頼を同日に受けたんだな?」


「ええ、実績がないと信用しませんよね?」


 俺の返答を聞いたケビンさんはそうだねとつぶやき、苦笑いをしながら頭をかく。


「私の完敗だ。そこまで考えているのであれば、私が断ることはできない」


「ありがとうございます。それでは、さっそく行きましょうか」


「草根高校だろう? 異界ゲートがあったはずだ」


「いいえ、そんな面倒なことはしません。あとは——」


 俺がこれからの行動を説明しようとしたとき、視界の端に誰かが入ってくる。


 そちらに目を向けると、いろいろな機材を持った集団がケビンさんの後ろへ並んでいた。


 俺の視線に気が付いたケビンさんが後ろを振り向く。


「ケビンさん、彼らは……」


「ああ、紹介するよ。異界で観測を行うハンターたちだ」


「初めまして、救世主。よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 一番前にいる初老の男性が一歩前に出て手を差し出してくる。


 握り返すと、後ろに並んでいる他の人たちも同じように挨拶を交わした。


 全員から自己紹介を受け、握手を終えてからケビンさんへと向き直る。


「それでは異界へ移動します」


 観測員さんたちは担いでいる機材を持ち直し、移動するための準備を始めた。


 ケビンさんも同じように草根高校へ向かおうとしているので、そのことを止める。


「ちょっと待ってください。ワープをするので荷物を離さないでくださいね」


 ワープの存在は俺が世界各地を転々をしているため、そのようなスキルがあると認識されている。


 ここにいる全員を対象にワープを発動させるが、行先が悩ましい。


(異界ゲートを通った方がいいかな? いきなり異界でもいいか。ここにいる人たちなら風景を見るだけでわかるだろう)


 明らかに青い空のような普通の光景は異界で見られないため、直接移動しても問題はないだろう。


 俺はそう判断して、直接異界へワープすることにした。


「いきなり異界!? こんなことがっ!?」


「ここが異界……本当に異世界のようだ……」


 ケビンさんたちは急に変わった風景を見て戸惑っているようだ。


 初老の男性や数人の方は異界にきたことがないらしく、周りをキョロキョロと見渡している。


「あの……すみません。本当にここが異界なんですか?」


 観測員の一人がおそるおそる俺に質問をしてきた。


 異界に入ったことがない人がそう聞いてくるもの不思議ではない。


 俺はその人たちの視線を誘導するように、空を指差す。


「見てください、空があんな模様になっているのを見たことがありますか?」


 その言葉を聞いて、全員が空を見上げている。


 そして、信じられない物でも見たかのように息を呑む音が聞こえてきた。


 今日の異界の空模様はいつもよりも怪しく、雲がとぐろを巻いていたり、茶色やピンク色の空が混ざり合っている。


「これが異界の景色です。私たちが住んでいる世界でみたことがありませんよね?」


「異界のゲートを通って初めて見ることができるんですね……」


 観測員の人たちは俺の説明を噛みしめるようにうなずきながら聞いていた。


 今の話を黙って聞いていたケビンさんが腕を組んで俺へ話しかけてくる。


「澄人くん……君はここへ本当に観測所を作るのか?」


「そうです。近くには草根高校の異界ゲートもあり、建設するのには最適な場所です」


 草根高校の異界ゲートへモンスターが入らないようにメーヌで念入りに細工をしてある。


 それに、草根高校のミス研には今日、突入しないように伝えてあるので心配はいらないだろう。


(念のため、平義先生と聖奈にゲート前に待機してもらっているから心配はない)


 赤い結界石が発動して、結界が定着するのには二時間という時間が必要だ。


 その間、俺は出現するモンスターを【倒さず】に、観測員の人たちと結界石を守らなければいけない。


「モンスター観測の準備をしてください。よろしくお願いします」


 俺が頭を下げると、観測員の人たちが四方に分かれて動き出す。


 ケビンさんは俺の横に来て、これからどうするのか聞いてくる。


「それで、私は何をすればいい?」


「さっき渡せればよかったんですが、これを皆さんへ配っていただけますか? ケビンさんも着ておいてください」


 両手いっぱいに持った箱をケビンさんへ渡すと、不思議そうな顔を向けられる。


 箱を開けて中を見たケビンさんはさらに怪訝そうな顔になった。

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