異界での2日間⑨~澄人専用回復薬~
澄人専用回復薬の使い方を調べております。
お楽しみいただければ幸いです。
「俺専用はまだわかるとして……指定したモノってどういうことだ?」
説明では【指定したモノ】を回復できるとしか書かれていない。
具体的にどういうモノを指定できるのかわからないため、アイテムボックス内にある俺専用と書かれた回復薬を選択してみた。
【注意】
草凪澄人専用回復薬は指定したものを変更できません
指定してください
《 》
「えっ!? これだれ?」
注意の画面が出るものの、他に説明が一切現れてくれなかった。
それも、一度決めたら変更できないというので、慎重にならざるをえない。
(体力と魔力以外ですぐに回復したいモノ……ね)
体力と魔力はそれぞれ回復薬が存在しているため、選ぶ必要がない。
自分がこれまでハンターとして過ごしていた中で、一番今すぐ欲しいと思ったモノを思い浮かべる。
「考えるまでもないな。指定するモノは【神気】だ」
【確認】
草凪澄人専用回復薬
指定【神気】
よろしければ実行を選択してください
意見が反映されて、実行を促す画面が現れた。
実行を選択すると、【実行完了】という表示とともに回復薬の説明が飛び出してきた。
【草凪澄人専用神気回復薬】(0:00)
24時間分の神気を貯めることができる
1時間単位で使用可能
アイテムボックスからの取り出し不可
神気を回復できる俺専用のアイテムができあがった。
これで神の一太刀が使えなくなるということを気にすることなく神気解放を使えるだろう。
満足気にアイテムボックスの中にある神気回復薬を見ていたら、疑問が浮かんできた。
「神気ってどうやって貯めるんだろう?」
アイテムボックスから取り出すことができないため、直接入れることができない。
選択をしても、注入などといった項目は見当たらなかった。
「うーん? ……あれ? 時間が増えている?」
【草凪澄人専用神気回復薬】(0:01)
回復薬の説明が出ている画面を見つめていたら、横に表示されていた時間が1分増えた。
勝手に剣から回復薬へ神気が注ぎ込まれているようなので、感心しながら表示を閉じた。
「もう1個あるけど……どうしようかな……」
まだ回復するモノを決めていない回復薬へ目を向け、何を指定するのか迷う。
神気はいくらあっても困らないので、これも同じように指定することも考えた。
(ただ、草薙の剣が神気以外の要素を出してきたら困るんだよな)
今は草薙の剣で使用する神気が補充できればそれに越したことはないが、それ以外のモノが必要になった時に貯められない。
少し考えた結果、もう1本は予備として取っておくことにした。
アイテムボックス等の表示をすべて消し、スマホを取り出す。
(残り7時間。少し休んでから、飛ぶ練習でもしようかな)
天翼で空を飛んでいる時は両腕を使えない状態になっている。
今はまだ遭遇したことはないが、空にいる時に戦うことになった場合、俺は逃げることしかできない。
「俺は空にいると弱くなっているってことだ」
天翔では使えば使うほど空中で跳ぶことができる回数が増えたため、天翼もなにかしら変化する可能性がある。
それを信じて、俺は腕を振り上げて空を駆ける練習をすることにした。
しかし、残り1時間を切ってもスキルの横に○印が付くことはなかった。
両腕を思いっきり上下に振るという動作についても考えてしまい、意気消沈してしまう。
「両腕が塞がって使い勝手が悪いし、誰かに見られたら嫌だな」
地面に座りながらなにか見落としがないか天翼の説明画面を開く。
「うーん……両腕を動かしたら翼になる以上のことは書いてないな……」
使用しにくいスキルについて悩んでいたら、説明文のある一節が気になった。
【スキル詳細】
スキル:《天翼Ⅰ》
使用条件:素早さB以上
消費魔力:1秒間に100
説明:腕を翼のように使うことが可能になる
「この腕って俺のじゃなくても発動するのか? んー……」
必死になって自分の両腕を動かして飛んでいたが、試してみたいことができた。
集合時間30分前になったものの、ワープがあるので帰る時間は気にしなくてもよい。
「よし! やってみよう!」
俺は勢い良く立ち上がり、背中に魔力を集中させる。
雷で腕の形を作りつつ、その周りへ羽のような装飾を成形した。
「雷の翼を作ってみたけど、あとはこれでスキルが発動することを願うだけだ」
羽ばたく前の鳥のように雷の翼を大きく広げ、地面に対して振り下ろす。
すると、俺の体は腕を動かしていた時とは桁違いに大きく上昇し、空へ舞い上がる。
「すごい!! この翼でも空を飛べている!!」
雷の翼を何度も羽ばたかせ、空を縦横無尽に駆け回る。
まだ微妙な力加減が難しく、速度の調整はできないため、方向転換などが難しい。
ただ、腕を必死に動かしていた時よりも空を飛べている。
「これを練習すればよかったのか!! よし!!」
時間ギリギリまで雷の翼で飛ぶ練習を行い、ワープでゲートへ移動をした。
ワープの着地地点はカモフラージュのために作った山の麓だったため、いつものように戻る。
ゲートの前にある会議所へ着いた瞬間、座っていた師匠が腕時計から目を離した。
先生や草地さんがほっとする顔を向ける中、師匠は呆れたように俺を見た。
「5分前だぞ。危なかったな」
そう俺に言う師匠は首を振りながらため息をつき、椅子から立ち上がる。
「お待たせしてすみません。充実した探索ができました」
「それはよかったな。では戻って、これからのことを相談しよう」
俺は師匠たちの後に続いて異界を出る。
部室には部長や副部長、天草先輩たちが難しい表情をしながら待っていた。
俺はその後ろにいるモデル雑誌にも出てきそうな青年が白い顔をしているのが目につく。
「白間くんこんにちは」
「えっ!? ああ、澄人くん……」
白間くんへあいさつをしながら横に座り、机の上に置かれた資料を手に取る。
【草根高校ミステリー研究部異界探索について ハンター協会】
ハンター協会が作った資料へ目を通そうとしたら、きれいで細い指が俺の腕を軽くつついてきた。
「ねえ、澄人くん。本当に僕がここにいてもいいんだろうか?」
「いいんじゃない? 真友さんからもお願いされたんでしょう?」
「そうだけど……」
白間くんは俺たちと向かい合うように座る師匠たちの姿を見て、委縮してしまっている。
(普通に座って、話を聞いているだけでいいと思うんだけど……)
俺と話をしていても、白間くんは心がどこかへ行ってしまい、落ち着きがないように見える。
そんな彼をよそに、俺は師匠たちがどのように話を進めたいのか推測を始めた。
ご覧いただきありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
次の投稿は5月10日に行う予定です。
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