表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

幼馴染みは拗らせツンデレです。

「ねぇ、響ちゃん……鞄、重いんだけど~」


 私はなるべく悲壮な調子で訴える。

 勿論鞄を持ってほしいだけなので、実はそんなに辛くもない。

 ぶっちゃけ鞄もそんなに重くはない。


 私は知っている……響ちゃんは荷物を極力持たないようにしていることを。


 ──私に持たせる為に。



 どんな優しさなのソレ!?

 普通に持てばいいじゃないか!



「黙って歩け……ポチのくせに生意気だぞ?」


 結局持ってくれないが、今日はご機嫌みたいだ。……冗談を言っている。


 私だけが知っているのだが、

『ポチのくせに生意気だぞ』

 ……は、某猫型ロボットの相方のメガネに対し、ガキ大将が言うセリフの真似なのだ。彼なりの冗談らしい。


 いつも(面白くない冗談だな……)と思いつつも響ちゃんの機嫌を量る為に黙っている。元来ツッコミ気質である私だが、響ちゃんのお陰で大分忍耐強くなった。


 余談だが、響ちゃんは他に『お前の物は俺の物! 俺の物も俺の物!!』という台詞も、割と使う。


 特に、奪うフリをして私の荷物を持つ場合などに。



 …………だからさぁっ!

 普通に『重そうだから持つ』って言えばいいじゃない!?


 

 一事が万事その調子なので、私は密かに響ちゃんの事を

『けしてデレない風ツンデレ』

 ……と評している。

 絶対にそれは言わないけど。



 響ちゃんはプライドが無駄に高いのだ。

 しかも色々拗らせている。


 だからツッコミどころにとても気を使う。

 響ちゃんのツンデレぶりや女子生徒の嫉妬や羨望などよりも、それがストレスと言っても過言ではない。


 なので響ちゃんには是非、対等な感じのお友達を作ってもらいたい。

 できればツッコミ気質の方希望。


 ──だが、それはどうにも難しい。


 超絶美形で、気質は俺様(とは言っても基本他人と絡まないので、この表現は怪しいものだが)で、おまけに理事長の息子……


 本人が人間嫌いなのに加え、近寄りがたい様だ。




 この学校の下駄箱は蓋のついたタイプだが、今日も ラブレターでいっぱいなようで……響ちゃんがそれを開けると、手紙がバサバサと落ちる。


(可能性で言うなら女子だろうなぁ……)


 なんだかんだ言っても女子は強い。

 男子はただ遠巻きに見ているだけだが、女子はダメ元で告白したりする。


 響ちゃんの下駄箱をチラリと見ながらそんな風に思っていたが……



 ──それらを完全無視して踏みつける響ちゃん。



「ひっ……響ちゃん! 『せめてゴミ箱に捨てて』っていつも言ってるでしょお?!」


 慌てて拾い集める私の頭の上に、冷淡に言い放った彼の言葉が降ってくる。



「所詮俺の見た目や家柄にしか興味のない奴等だ……どう思われようと知ったことか」


「 ──………… 響ちゃん」



 …………拗らせている。

 安い台詞みたいなこと言い出した。

 少女漫画のダークヒーロー的だ。



「……その見た目と家柄のおかげで色々許されてるんだよ?」

「……」

「──はっ!?」


 手紙を拾い集めながらそうぼやいてしまい、気が付くと羽交い締めにされていた。


「なにか文句があるのかコラ!」

「あァァあぁ!! ごめんなさいィィ!!」


 迂闊にもぼやきでバッサリと一刀両断してしまったようで、梅干の刑に処される始末。

『梅干』は普通に痛いのだが、これも周囲からは『スキンシップ』として羨ましがられる。



 痛い思いをし、鞄持ちをさせられている上に、それをやっかまれるという構図……

 正に踏んだり蹴ったり。


 実際のところ、『吉井響 FC(ファンクラブ)』(※当然非公認)なる組織の人達には、当然目の敵にされている。



 ──っていうかFCって!!

 どういう活動してんの?!

 響ちゃんのさっきの台詞以上に少女漫画設定だな!!



 今の私の頭も痛いが、あの人等の頭は相当イタいと思う。

 ……あ、なんかキレイにまとまった。(自画自賛)



「……おい、甘いモン食いたいんじゃなかったのか? 鞄持ちの褒美だ……何が食いたい?」

「えっ! 本当?!」


 響ちゃんは超絶美形なちょっと拗らせているだけの人で、基本的には普通だ……と思う。超絶美形が普通でないのは置いといて。


 やり過ぎたかなと思えばこうしてフォローも入れてくる。



  ……やっぱり友達はいた方がいい。

 いなくても平気な人はいるけど、響ちゃんはさみしんぼうじゃないかと思うから。

 どちらかというと、私の方が一人でも平気なタイプな気がする。




 ──昇降口の大きなガラス扉を開け、外階段を降りたその時だった。


「あの……」


 声の方を見て、思わず頬が赤く染まる。


 長い絹のような黒髪に大きな瞳、白く華奢な体躯……

 そこに佇んでいたのは、『正統派清純ヒロイン系美少女』という呪文の様な文字の羅列を、具現化したような女の子だった。


 目が合うと美少女は……遠慮がちにペコリと会釈をしてから、響ちゃんの方に向き直る。──驚愕に身体が固まった。



 挨拶された……だと……!?



 睨まれたり威嚇される事は多々あるが、こういう場面で会釈をされるのは初めての体験。



 なんていい人っぽいんだ……!!

 この女性(ひと)なら響ちゃんとお友達になれるかも……?!



 私の胸は期待に高鳴った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 3話まで読みましたー! 個人的には響くんのキャラはあまり好きな方ではないのですが、でもまあこのバックボーンではひねくれない方が難しいのかもしれませんね。 過去に刺さったトゲが気になりま…
[一言] 『けしてデレない風ツンデレ』、最高( ˘ω˘ ) 不器用な子って可愛い!w 因みに前回の感想返信に対する返信ですが、なろう受けを狙うならむしろ今のままがいいと私は思います。 なろう男子の方は…
[一言] なるほど、響くんは超絶美形でなかったら、二つ名は「殿下」でなく、「ジャイ○ン」だったのですな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ