殿下と犬。
改稿版です。
酷いからいずれ直そうと思ってたので。
内容はあんまり変わらないです。
帰りのHRも終わり、クラスはざわざわと喧騒に包まれていた。
柳田 律は高校1年生の、どちらかというと地味な女の子だ。
身長146㎝とかなり小柄で、ぴょんぴょんと跳ねた癖っ毛のショートボブが特徴といえば特徴だが……目立つ訳ではない。
むしろ、人混みに姿が見えなくなる。
この二点以外にコレと言った特徴のない律だが、彼女は有名人である。
その理由は──
「律~」
「何?」
「今日みんなでミスド行こっかって言ってるんだけど、律も」
──バァァァンッ!!
凄まじい音をたて、律の机に鞄が落とされた。
……否、『叩きつけられた』という表記の方が正しいだろう。
当然会話は中断される。
無論、それが彼の狙い。(あと威嚇)
──吉井 響。
そう、律が有名人なのは彼のせいである。
「生憎だが、ポチは俺と帰るんだ。……なァ、ポチ?」
「ひ……響ちゃん……」
響は律を『ポチ』と呼ぶと、彼女の返事を待つわけでもなく踵を返し、教室の扉の前でようやく止まった。
まるで律を見下すように、身体は正面を向いたまま、目線を下におろす形で律を見る。
律の前には叩きつけた、響の鞄。
(鞄……持てって事ね……?)
──まあ、いつものことではある。
友人との放課後ドーナツに未練を感じながらも、律は響の圧に従った。
響は律の幼馴染みだ。
『低身長』と『跳ねた癖っ毛ショートボブ』位しか特徴のない律に対し、響はというと……特盛設定の少年なのだった。
以下、流し読み推奨の見た目。↓
彼の母方の祖父はロシア人であり、響はクォーター。
金髪と黒髪の良いところだけ足して2で割ったような艶やかな髪は、光の具合でプラチナブロンドにも、アッシュグレーにも見える。
自分で切ったのではないかと思うほど、ざっくばらんなショートカットにしているが、逆にそれが女性的な顔を男性らしく引き締めていた。
白い肌は透けるようで、長い睫毛に縁取られた瞳は緑とも青とも言えるような色をしている。
長い手足は真っ直ぐにスラリと伸び、長身で、男らしい肩幅をもちながら、滑らかな鎖骨が中性的な魅力を醸し出していた。
……要するに、とにかく美形なのだ。しかも半端ない。
更に、お家が超金持ちで……この学校の理事長の息子でもあるという、大変に無駄なハイスペック男子。
何故無駄か?
見た目は正に王子そのものだが……ご覧の通り、王子は王子でも暴君ネロなためである。
ちなみに『ネロ』は……
律の呼ばれる犬名である
『ポチ』が変化して『パトラッシュ』、
『パトラッシュ』と言えば『フランダースの犬』、
その飼い主である『ネロ』と『暴君ネロ』
……を掛け合わせた結果であった。
彼はその見た目から人間不信になるという、美形にありがちな設定をも神に盛られて生まれてきたとしか思えない程に、他人に心を開かない。特に女子には。
響に近寄れる女の子は、唯一、律だけである。
……というか、律が近寄らなくても響が寄っていくのだが。
結局のところ、響はなんか色々拗らせたツンデレなのだった。
そんな響と律の関係を揶揄して、皆は陰でこう言っていた。
『殿下と犬』……と。