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第3話 起床と父とオヤジ声

所詮、オヤジ声。



「・・・夢じゃない」



――ああ・・・布団の中にいる・・・。



床から起き上がった俺は、昨日取り出した新たな掛け布団をどけながら自分のベットを見上げた。

ベットの上では掛け布団が上下に規則正しく動いており、そこにいる確かな存在を確認できた。



・・・寝る前までのことが夢ではなかったということだ。



早朝という時間はとうに過ぎていた。


時計を見るともう午前11時になろうとしているとこだ。


深い溜息をつき、俺はその生き物である白い尻尾を持った小さな黒猫のジンを起こさないように自分が使っていた布団を折りたたむ。


そして、立ち上がり何か朝飯もとい、昼飯となるものを食べるために部屋を出る。


階段を下りながら昨日の経緯を思い出した。




































―――・・・・・


『優の家で世話になるぞ』



その子猫はそういうとまたニヤリと笑った。

俺はそれをただ呆然と聞いていた。



『・・・おい?聞いてるのか優?』


「・・・っえ?」



子猫がポフポフと猫パンチ。



・・・あ、肉球柔らかい



そして、現実に戻る・・・俺。




『優の家で世話になるといってるんだ。礼といっても今何もない俺には何もできないしな。

だから、何か礼になることができるまで優と一緒にいることにした。

まあ、そういうことで、疲れてるから俺はもう寝るぞ。おやすみなぁ〜』




そう言うと口を金魚のようにパクパクしている俺から離れ、子猫はベット潜り込んでしまった。








――俺のベットだぞ・・・


そうどこか頭の隅で思いながらも何も言えず、ただ呆然と見ているだけしかできない。







「・・助かった・・・?」




力が抜ける。

手に汗を握っていて、背中にも冷や汗をかいてる感触があった。




「く、食われなかった・・・?」



動悸が納まってきたところで、冷静になる。

自分が混乱してまともな思考をめぐらせてなかったことに気がついた。

何をいったい馬鹿なことを考えていたのだろう・・・と。



普通に子猫を・・・

助けてあげてなんでそいつに恩人の俺が食われないといけないのか?

そんな考えを思い浮かべてしまい、自分を情けなく、馬鹿らしく感じた。


そして、野太いオヤジ声を思い出し・・・再び思考が止まる。





しばらくして、俺は空けてない最後のチューハイ缶を袋からとりだし空けて飲んだ。


口の中にアルコールと一緒にリンゴの味が広がる。






――そうだよな・・喋るんだよな・・・。

ということは化け猫じゃないというわけでもないんだよな・・・。

てか、喋る猫なんだよな・・・。



この場が何もなかったことに安心しながらも、まだ残る少しの恐怖と相手の正体分からぬ新たな不安を抱きながらベットにもぐりこんだ子猫の方を見る。


掛け布団がかすかに規則正しく動いている。



それを眺めながらチューハイを飲み、これからどうするかを考えた。




「・・・」




「・・・・とりあえず寝よう」



しかし、いい案が思い浮かばず、寝ることにした。

立ち上がり酒で濡れたジーパンとパンツを脱ぎ、寝着に着替える。



そして、押入れから毛布を取り出す。
















・・・これがすべて夢でありますように



そう願いながら、俺は意識を手放した。






































・・・・・―――――


「・・・・。」



これまでのことを思い出し、黙々とこれからどうするかを新たに考えながら、白いご飯とインスタント焼きそばを口に運ぶ。




リビングにはいつも通り、父親がノートパソコンを開けている。

また、株だろう・・・。



俺と父親との会話はない・・・。

これはいつも通りだ。



「ごちそうさま・・・。」



小さくぼそりと呟いて、俺は席を立った。

リビングを出るときも後ろからはパソコンの起動音とたまに音を鳴らすマウスのクリック音しか聞こえなかった。


















自分の部屋に入るのにこれほど緊張したことはなかった。



てか、なんだ、これはこの緊張は?


ボス戦?

しかもラスボス。


ああ、RPGの主人公はこういう気持ちなんだなぁ~・・・



「・・・はあ。」



・・・最近ゲームしすぎだな、俺。





そうため息をつき、緊張感は一気に抜け、いつもどおりの気だるい雰囲気に戻る。

そして、力が抜けた手でドアを開いた。




――――瞬間






『優!!』


その体に明らかに似合わない野太く低いオヤジ声を出しながら子猫は飛び掛ってきた。




そして、俺の腹にしがみつく。


てか、痛い!爪が痛い!!やっぱり、夢じゃねぇえええ!!!




腹の子猫は、そのつぶらな瞳のビー球みたいな綺麗な黄色の目で見上げてきた。


そして、言う。


そのオヤジ声で・・・。


『腹が減ったぞ!』



「・・・」













ああ・・・、これからこの『オヤジ』どうしよう・・・



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