第1話 猫拾いました
初めて小説を書きます。
完結まではもっていきますが、かなり気分屋なので更新もきっと遅いと思います。
自己満足作品ではありますが、楽しんでもらえれば嬉しいです。
『やつ』と俺との出会い。
それは偶然だったといっても全然そう言える出会いだっただろう。
俺が生まれて19年と5ヶ月と数日のある日。
大学を辞めてから、ほぼ習慣化してきている毎週土曜のコンビニへの買出しの帰りの時。
もちろん、時間帯は夜と朝の境目ぐらいの一番人が少ない時間帯。
やる気のなさそうな店員のお兄さんに見送られコンビニのドア出たその矢先・・・
「・・・?」
電灯と月とコンビニの光で照らし出された黒い小さなそいつは現れたんだ。
「・・・ニャー」
「黒猫・・子供・・?」
弱々しく鳴くそいつは、なんだか今にも横に倒れそうなふらふらした動きで俺に近づいてきた。
そして、俺の足元で・・・
バタリ
「・・・・おい」
――マジか・・・。
ゆっくりと近づいてしゃがみ込み、指でツンツンとつついてみたが反応なし・・・。
手のひらで軽く体に触れてみると、小さい鼓動だが心臓は動いてるようだった。
「・・・」
このまま何も見なかったことに・・・とも考えた。
目の前で倒れこむなんだかかわいそうな小さな猫。
さすがに、これを見て避けて通れるほどの人でなしにはなれない。
それに、なんとなく黒猫がこんなまだ暗い時間帯で、
しかも俺の目の前に倒れるなんて何の迷信だったかは忘れたが不吉な気がした。
動物病・・・いや、金はない。
だから、溜息をつくとそのまま180度転換。
コンビニへ戻り、赤ちゃん用の粉ミルクを買い外にいるその小さなそいつを片手に抱きかかえ持ち帰ることにした。
家に着き、自分の部屋のベットにそっとそいつを寝かせやる。
その時、右の後ろ足が傷ついているのに気がついた・・・。
「手当てか・・・」
俺はきっとそのとき、
手当てした間ずっと眉間に皺がよっていたと思う。
親を起こさないようになるべく静かに薬箱がある部屋をあさり、部屋に戻ってその猫の傷口を消毒し包帯を捲いてやった。
そして、粉ミルクを溶かしミルクを小皿の中に作ってやる。
それを冷ましながら買ってきたチューハイを飲んでいると、その小さな黒猫はのっそりと首をあげた。
匂いに気づいたのであろう。
俺は鼻をピクピクとさせるそいつにちょうどいい具合にぬるくなったミルクを横においてやった。
すると、黒と正反対のなぜかそこだけ白い尻尾を弱々しくながらもフリフリと揺らしながら飲みはじめた。
本当にお腹が空いていたのであろう・・・
小さな音だがクピグピと音をたてていた。
俺はそんな懸命にミルクを飲む小さな猫を見ながら、かわいいじゃないかと少し笑う。
チューハイ片手にそいつがとりあえず大丈夫な様子に安堵した・・・。
美談だ・・・。
自分で言うのもあれだが・・・弱った小さな猫を介抱してあげた青年のいい話だと思う。
だが、ここからが『やつ』と『俺』とのファーストコンタクトだった。
空になったチューハイとまだ空けていないチューハイを取り替えようと机に手を伸ばしたその時・・・
『・・・おい』
「・・・?」
いきなり声がした。
回りに誰かいるんじゃないかと見渡したが、誰もいない。
疑問に思いながらも今日は酔いが早いなと苦笑し、取った新しい缶を空け一口・・・。
『・・・おいって、聞こえないのか?』
つい飲んでいた缶を落としてしまった・・・。
思考が止まった。
そして、もったいないと思た。
・・・現金だが後で俺は思った。
しかし、それだけ動揺し驚いてしまった。
ジーパンに染み込み広がるチューハイの冷たい感触を感じながら、
俺は小さな可愛い容姿のその黒猫を凝視し硬直した・・・
『俺にも酒をくれないか?』
そいつから発する野太く低いオヤジのような声を聞きながら・・・。