満ちていくのは
すっかり延びた
一日のおわりに
桜いろ混じりの夕陽が
ゆらゆら漂って
ぽつぽつと膨らむ灯りは
光を切り換えるように
暗がりを支えるように
広がりました
夜風があたたかくなりました
水の匂いがします
そう
もうすぐここに満ちていきます
問いかけの答えは
いつも用意されていて
ただそれには
ふさわしい時期がありまして
時に
待ちわびることが
ひとつの正しい在り方だったりします
ふう、と
風になびく枝先は
開けっ放しの窓を指し
流れた花びらは
食卓の灯りに照らされ
白く輝いています
電気ケトルの湯気に
ふやけた夜
キチンとしたものが
角を削いで丸くまあるく
作り変えられ
曖昧な輪郭のまま凛とあることが
矛盾せず受け入れられること
そこからあちらへと
流れてゆく成り行きを
ひとつの眼差しとして
眺められること
一日を絶えず蓄えつづけ
光を浴び
光を編み
暗がりをあたためたのは
さみしさでさえ
あふれさせるためだったのかもしれません
心を鋤いても
忘れられないから
ひとは溺れ苦しむのかもしれません
月の色がやわらかくなりました
水の匂いがします
問いかけの答えは
いつも用意されていて
もうすぐここに満ちていきます
求めていたものとは違っていたとしても
水はあふれていくのです
縁をほぐし
道を繋げ
押し出すのは
それでも
そこからあちらへと
また流れるためかもしれません