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40話『全てはもう遅い』

「ぁ……」

 覚悟を決めていた。その筈なのに、雪の表情を見ていると俺はどうしたらいいかわからなくなった。好きな人を悲しくさせる奴が覚悟を決めて告白しても困惑させるだけだけだ。だから、俺の口からは言葉が出ない。

「……奏斗の考えは我でも分からない。そんな風に何も喋ってくれないなら我は、我はマスターと契約を解除するしかない……」

「――ま、待ってくれ! 違うんだ。俺はお前のことが好きなんだよ! 自分でもどうしようもなくなるくらい雪のことが好きになっちまったんだよ!」

 言ってしまった。雪が俺から離れようとするのを引き留める為に咄嗟に言った。こんなんじゃ雪の心に響くわけがない。むしろ、今の俺は必死過ぎて引かれること間違いなしだろう。

「奏斗。我は、奏斗と居て楽しい。一緒に帰るのも、どこかに出かけるのも楽しかった。もしも、奏斗が今の精神状態じゃなかったらその告白も受けていたと思う」

 雪は俺の告白を断った。俺を傷つけないために優しく断ってくれているのかもしれないが、結局は付き合えないという事実に変わりはない。

「我はマスターの元を離れる。もしもマスターと我の運命が繋がっているのならきっと、もう一度巡り合える筈だから」

 雪が俺の目の前から去っていくとき、俺は見苦しいくらいに泣き叫んででも止めようかと思った。けど、そんな事をしたら雪は二度と俺とは話しすらしてくれなくなるだろう。だからこそ、俺の理性は俺が追いかけることを容認してくれなかった。

「……ははっ。俺、依存してたんだな……」

 今さっきの告白は雪を離さないためにしたものだ。今になってようやくわかる。心に大きな穴が開いたかに思えるほど、俺の中で雪という存在は大きかった。俺の言葉をほぼ無条件で受け入れてくれて、俺なんかを慕ってくれる。俺はそんな雪を離したくなかったんだ。雪が居なくなったら壊れてしまうような気がして、雪が居なくなったら俺という存在に価値がなくなるような気がして、だから俺は雪を繋ぎとめるために、好きという都合のいい感情を当てはめた。単に、俺は俺を無条件に認めてくれる人が欲しかっただけ。

「振られてから気付くとか、ありえねえわ……」

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