37話『サーヴァントからの呼び出し』
――一人、踊り場で絵美の言葉を受けて涙を流した俺は、学園祭が始まるという時になって、ようやくクラスへと戻った。
「遅かったじゃねえか! って、お前、その恰好じゃさすがに接客させれねえからな。眼帯とかは着けてても良いからさっさと着替えてこい!」
「任せておけ! 我に掛かれば愚民どもの相手をするなど余裕だ!」
「良いから早く着替えろ!」
「う、うむ」
健に渡された服に速攻着替えた俺は、雪や他のクラスメイトと共に外部から来るお客さんや、生徒の親族、この学校の卒業生などの接客を始めた。予想以上に来るお客さんに戸惑いつつも、中二病を忘れることなく雪の前では演じた。学園祭ということもあって、俺や雪の中二病を笑う人なんて居なく、面白がってくれたのは唯一の救いだ。そして、喫茶店もどんどん忙しくなり、時間はあっという間に進んでいった。
「雪ちゃんと胡桃沢君、交代の時間よ。こっからは自由に楽しんできてらっしゃい」
「ほう。時が進むのは早いものだな」
「奏斗! 早く学校を回ろう! 遊戯が我らを待っている!」
時刻がお昼を回った段階で店番の交代となり、俺と雪は二人で学校内を回ることとなった。雪が急かしてきたこともあって、服装も着替えている余裕なんてなく、そのままの服装で俺たちは学校を回り始めた。
「奏斗! まずはあそこに入ろう! 悪霊の気配がする!」
「ほぅ。悪霊の類か。我はあまり得意ではないが、サーヴァントの頼みだ。譲歩してやるとしよう」
雪と一緒にまず入ったのはお化け屋敷だった。正直、お化けとかの類は苦手だったが、雪が居る手前、俺は強がってしまった。まぁ、結果的に所詮は高校の出し物のお化け屋敷だからそこまで怖くはなかったが。
「奏斗! 次はあそこに行こう!」
雪に先導され、俺は次々に学校の出し物を楽しんでいった。だが、食べ物を食べるときも、輪投げをする時も、何をする時も中二病であることを俺は忘れることはなく、雪にアピールし続けた。
「サーヴァントよ。我は少し席を外すぞ」
「うむ! 了解した!」
雪から離れ、トイレで自分の顔を確認する。気持ち悪い作り笑いをしている顔だ。もちろん、いつでも作り笑いをしていた訳ではないが、上手く演じないといけないと思うたびに、俺の顔からは笑みが消え、作り笑いをしている顔になっていた。気持ち悪い。心底自分が気持ち悪いと思える。本当に俺は醜いものだ。
「待たせたなサーヴァントよ」
「奏斗。さっき我がサーヴァントが我に伝言を残していったぞ。どうやら奏斗を探していたらしい。慌てた様子だったし、奏斗はいち早く体育館裏まで行くと良い。我のことは気にするな」
「そうか。ならば我は赴くとしよう。サーヴァントよ、暫しの別れだ」
聡が俺に何の話があるのかは分からないが、おおよその検討はついた。きっと、雪についての筈だ。




