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35話『彼は心を隠すために演技を続ける』

「我がサーヴァントよ! 目覚めよ! 黒竜の使い手が目覚めたぞ! 我の魔力に気付かないのか⁉」

 朝日が昇るまで俺は一睡もしないで昔の中二病ノートを見た。そして、どんな風に演じればいいか、奏恵や雪にバレないようにするにはどうすれば良いか考えた。その末に、俺は朝から演じることにしたのだ。現に、奏恵には昔の俺を見るような視線を送られている。だがしかし俺はめげない。もう引き返せないのだ。

「お、お兄ちゃん? どうしたの急に……学園祭ってことで頭でもおかしくなった?」

「ふはははっ。気にするでない我が妹よ! 我は魔力を取り戻しただけだ! この力を使ってこの世界を我が物にしてくれるわ!」

「あ、ははは。あんまり外ではやめてね。お願いだから」

「問題ない。我の力の本質などそこらの愚民などでは判断できないのだよ。……それよりも、我がサーヴァントは眠りについているのか?」

 ここまで高笑いをしても雪が起きてくる気配はない。夜更かしでもしたのだろうか。とにかく、今の俺のこの姿を見てもらいたいのは雪だけだ。今すぐにでも叩き起こさなければ……。

「サーヴァントよ、何故眠っている。我々は眠りなど必要ない体のはずだ。目覚めよ、そして我と共に世界を取ろうではないか」

「……むむっ? ……我と似た魔力の気配? これは、我がマスターの復活か⁉」

 雪のベッドの前で雪を起こしていると、雪は寝ぼけた目を一瞬でパッチリさせ、勢いよく飛び起きた。そして、俺のことを一瞥すると、雪は俺へと抱き着いてきた。

「奏斗! ついに力を取り戻したのか! でも、前と少し違う……?」

 まずい。コートも着て、剣も背負っている。指輪も包帯も着けているし、中学の時とは見た目など変わっていない。なんども自分で確認したし、この部分は大丈夫だ。だったらどうして雪は俺を疑っている? 演技がバレた? ここまで完璧なはずなのに?

「な、なにを言っているサーヴァントよ! 我は既に魔力を蓄えて第二フェーズへと移行している。サーヴァントも早急に支度を整えよ。我の侵略の第一歩として愚民の集う祭りへと行くことにしよう」

 完璧だ。完璧なんだ。だからこそ、更に完璧に演じて疑いの目は摘まないといけない。雪にだけは演技ということはバレるわけにはいかないのだ。絶対に。

「うむ! 奏恵のご飯を食べて向かうとしよう! ようやくマスターの力が戻ったのだからな!」

 そう、これだ。この感じだ。雪が俺を意識してくれている。やっぱり中二病に戻るのは正しかったんだ。雪の表情を見れば嬉しがっているのが分かる。――俺の考えは正解だったんだ。

「マスター、その、フォームチェンジしている間はそこに居られると、我でも恥ずかしい。マスターはリビングで奏恵と共に待っていてくれ!」

「ふむ。それもそうだな。我は暫し待つとしよう」

 俺は部屋から出てリビングへと戻り、雪を待つことにした。学校の皆が今の俺の姿を見て何を言ってくるのかを考えながら。

「……奏斗。やっぱり少し変だったな……」

 一方、俺が居なくなった部屋で雪が小さく呟いた言葉を、その場に居ない俺が知る由もなかった。

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