33話『演技』
「それじゃ、クラスの意見も纏まってきたし、今回は喫茶店ということで良いか?」
お化け屋敷や、メイド喫茶なんて意見も出たが、どれも委員長が却下し、なんとか喫茶店ということで話は決定した。
「先生、クラスの出し物は喫茶店に決まったんですが、問題はないですか?」
「そうか決まったか! ふむ、喫茶店か……いいんじゃないか? クラスでも出来るし、メニューも簡単な物にすれば予算的にも大丈夫だろう。でも、雪は不服そうだがどうしたんだ?」
「あぁ、こいつはちょっと……」
「我は生贄を用いて大規模な儀式をしたかったのに……」
雪はクラスで真っ先に意見を出し、真っ先に却下されて落ち込んでいる。それもその筈、雪のやりたい儀式なんてクラスの人たちからすれば「何を言っているんだこいつは」と思われるだけだ。却下されて当然だ。
「はははっ。私には何を言っているのかよく分からんが、まぁいいか。とりあえず、喫茶店というのは了解した。学園祭まで頼むぞ、実行委員」
先生から了承を得たあと、未だ落ち込んでいる雪に対して、俺はある提案をすることにした。
「雪、その、アレだ。喫茶店を俺たちはやるわけだし、下見って言ったら変なんだけど、今日の帰りにどっかの喫茶店に寄ってみないか?」
出来るだけ雪のことを避けていたが、正直雪の悲しそうな顔は見たくない。俺の思いとかそんなものは今はどうでもいいのだ。
「喫茶店……? 奏斗と?」
「お、おう。別に嫌だったら無理強いはしないけどな」
「ううん! 行く! マスターと二人で魔力回復したい!」
「そ、そうか。んじゃ放課後行くか」
雪のこういう所だ。平気な顔して俺と二人という事にも嬉しそうな顔をする。そんな顔をされると、俺の心はなんでか締め付けられるように苦しくなってしまう。妹のように思っていた時には感じることのなかった苦しさだ。けれど、俺のこの気持ちを雪に悟られてしまえば、きっと雪と俺の関係は崩れてしまう。だからこそ、俺はバレないように隠すことにした。
「奏斗! 奏斗は何を食すのだ?」
「んー、俺は普通にショートケーキと珈琲かな。雪はどうするんだ?」
自分の中で隠し通すと決め、俺は今まで通り雪と接した。俺と同じように珈琲を注文し、苦くて飲めない雪を笑ったり、他愛もない話をしたり、そんな風に俺は今まで通りを演じる事にした。




