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29話『奏恵を置いてお出掛け』

「はぁぁぁ。この生活がいつまでも続かないかなぁ……」

 ソファでくつろぎながらため息をつく。夏休みも一週間程度経って、俺は完全にだらけきっていた。テーブルに上にある携帯は全く鳴らないし、まぁ、友達が居ないからなんだけども。

「朝だけどシャワーでも浴びるか」

 少しでもさっぱりしようと、俺は立ち上がりシャワーを浴びに行った。その間に携帯が鳴るなんて想像していなかったが、まさかのシャワー中に奏恵が俺の携帯を持ってきてくれた。誰かから連絡が来るなんていつぶりだろう。

「よぉ奏斗! 突然なんだけど今日部活の日な! 海行くぞ海!」

 なんでこいつはこんなにもテンションが高く、しかも突然海に行くとかなんなんだろう。確かに今日は普通に起きて時間的にも余裕だが、準備が出来ていない。当然雪も準備はまだの筈だろう。

「おい、今シャワー中だし準備してねえよ。もっと早く言えよ」

「大丈夫だ安心しろ! あと五分ある。それじゃ、出来るだけ早く向かうからな! 電車に間に合わなくなるし!」

「ちょ、おい。まっ……」

 健も勝手に電話を切り、俺は携帯を持って呆然とした。五分……間に合わないな。

「あいつは少し待たせるか……」

 シャワーを早めに切り上げ、俺は雪に今日の部活について話そうと考えた。が、何故か雪は既に準備を終えていた。

「おい。なんでお前は準備できてるんだよ」

「――え? 昨日絵美から魔力を介して通達があったから支度は出来てるよ?」

「知ってるなら昨日教えろや! さっき健から電話があって俺は知ったんだぞ⁉ 支度も何もできてねえよ!」

「お兄ちゃん! 下着姿で叫ばないで! 怒ってる暇があるなら支度しなさい! 私なんて行きたくても行けないんだからね!」

「お、おう……俺が悪いのかよ……」

「ん? 何か言ったお兄ちゃん?」

「いえ、なんでもないです。はい、早く支度してきます」

 部屋へと戻り、出かける為の服に着替えて海への支度を始めた。水着やタオル、何が必要かはよく分からないが、必要そうな物を適当に鞄へと入れた。

「それにしても、リビングがなんか騒がしいな」

 荷物を持ち、うるさいリビングへと戻った俺はその光景に驚愕した。

「なんでお前らが居るんだよ……」

「五分くらいで着くって言っただろ!」

「ここがマスターの住居ですか! 良い場所ですね!」

「いや、ここは俺と奏恵の家だ。断じて雪の家じゃないぞ。雪の家は隣だ隣」

 俺の言葉に対して、聡は嫌そうな顔をしている。そんなに雪の家じゃないことが嫌だったのか。なんかムカつくな。ぶっちゃけ、部屋の間取りとかも一緒だし、雪も高校生になってから殆ど一緒に居たわけだから、この家が雪の家とか言われてもあまり間違いではないと思う。

「さて、奏斗君も来たし海に行きましょ。電車の時間的にもそろそろ家出れば問題ないわ」

「はぁ、そうだな。早く行こうぜ。悪いな奏恵、お留守番頼んだぞ。埋め合わせは必ずするからな」

 自分だけ行けないことに少し不貞腐れている奏恵の頭を撫でると、奏恵は仕方ないと諦めてくれたのか、俺たちに対して笑顔を見せてくれた。しかし、俺にだけは分かる。奏恵のこういう時の笑顔は何かを企んでいることを。恐らくは奏恵の欲しいものを買わされることになるのだろう。が、先のことを忘れてひとまずは海を奏恵の分まで楽しむことにしよう。

「うん! 絶対だからね! 行ってらっしゃい! 皆さんも気を付けて行ってらっしゃい!」

「うむ! 魔力の質を高めてくる!」

 それから、奏恵に見送られながら俺たちは家を出て駅へと向かった。駅へと向かう途中に絵美や健、まさかの聡にも奏恵が褒められるとは思わなかった。やっぱり身内が褒められるというのは嬉しいものだ。

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