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25話『夏休みの予定』

「おい奏斗! 夏休みの部活はどうする?」

 部室に入って早々、健が俺に訊ねてきた。確かに、夏休みは無事に迎えられるし、部活的にどこか出かけても良いかもしれない。海とか友達と行ったことないし、行きたい気持ちしかない。

「奏斗! どこで沈黙魔法など受けたのだ! 影の刺客によってか⁉ 我に任せよ! 必ずもとに戻してみせる!」

 今日は聡が居ないこともあって、騒がしいのは雪一人だけだ。しかし、こうしてずっと無視し続けてもどんどんうるさくなるだけだ。さすがに喋ってあげるとしよう。

「わかったから雪。無駄に動いてないで夏休みに行きたい場所とか考えるんだ。ほら、魔力を回復しそうな神秘的な場所とか知らないのか?」

「むっ! 神秘的な場所か……我は夏休みなど出かけたことがあまりなく、力になれそうにない。済まない奏斗……」

「いや、別に気にすんな。俺もそんなもんだしな」

「そうかそうか。二人は特にないって感じだな! よしそれじゃ、海に行こう! それが良い!」

「――何言ってのよ。夏は山に行って体力づくりでしょ? 二人もそう思うわよね?」

 部室に入ってから、一言も喋らなかった絵美が健の言葉に反応し、突然喋りだした。いや、俺と雪を無理やり賛同させようとしてきている。

「これだよこれ! 二人も言ってくれよ! さっきから絵美の奴が山って言って譲らないんだよ!」

「そんな事言われてもなぁ……俺としては山でも海でもどっちでもいいからなぁ」

「どっちでも良いとか言うなよ! ほら、海とか行きたいと思わないか?」

「駿河君はそうやって無理やり誘うんだから! 駄目よ! 本人の意思を尊重しないと!」

 多数決でも執るつもりなのか、絵美はこんなことを言っているが、目ではさっさと「山」と言えと語っている。正直、俺は家に籠ってゆったり生活したい故に、山は行きたくない。疲れる、嫌だ。海はまぁ、水着とかその他諸々が良いと思う。

「お、俺は行くなら海かな。楽しそうだし」

「我は奏斗が行きたいほうに付いていくぞ!」

「っしゃあぁぁ! これで決定だ! 夏休みは海だな!」

「どうして海なのよ! み、水着とか恥ずかしいじゃない!」

 そういう事だったのか。絵美は自分の水着を見られるのが嫌だったから、山に行こうとしていたのだ。しかし、こんなこと言っていいのか分からないが、見た感じ絵美は水着の似合う体だと思う。大人っぽいし。どちらかと言えば、雪の方が子供っぽいから似合わない可能性が高い。

「ん? どうしたのだ奏斗。我の顔になにか付いておるか?」

「いや、お前水着とか持ってるのか?」

「はっ! そういえば新調しなければならない! 奏斗、我の買い物に付き合ってはくれのか? 一人では機関の奴らに襲われたときに撃退できない可能性がある故に」

 ふむ。雪の水着か。見てみたい気持ちもあるが、こういうのは男よりも女の子の方が良い物を一緒に選んでくれるだろう。だからこそ、ここは絵美に任せるべきだ。絵美が無理なら、奏恵という選択肢もある。

「ゆ、雪ちゃん⁉ 丁度私も水着を新調したいし一緒に行きましょ! うん。それがいいわ!」

「なぁ、俺も付いていいか?」

「駄目にきまっているじゃない。駿河君と胡桃沢君は付いてきちゃダメ」

「か、奏斗! 我は絵美と一緒に行くのか⁉ 奏斗はどうするのだ⁉」

 絵美から見れば、いいや、誰から見ても健の顔はニヤニヤしていた。水着姿が見たいというのは分からなくもないが。

「あ、そういえば俺のことは奏斗で良いぞ。苗字だと長いだろ?」

「あんまり長いって感じたこともないけど……うーん、それもそうね。丁度いい機会だし、駿河君も健君って呼んでもいいかしら?」

「……へっ? 健君? マジ? ――おい奏斗! ありがとう! お前のお陰だ! よし、祝いにカフェに行こう! よし行こう!」

「ちょ、待て待て引っ張るな。雪! 先に帰るからな! 絵美と喧嘩しないで買い物して帰れよ!」

 雪の顔が相当嫌そうだが、これも仕方がない。なにせ、健が俺の力を上回るほどの力で引っ張るのだから俺には止められない。どうせ言い争いながらも、なんだかんだ仲良く買い物にいくだろうし、心配はないはずだ。

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