24話『試験結果』
長期連休もカラオケ以外では殆ど家から出ることもなく終わりを告げた。学校が始まり、憂鬱な気分を迎えながら俺はクラスへと入った。
「おはよう。健」
「おっす! 今日から学校だな! 楽しみだぜ!」
「楽しみとかすげえなお前。俺はもう帰りたいくらいだぞ。魔力が太陽に奪われてキツイ」
「魔力……? まぁいいや。それよりも来月試験だが大丈夫なのか? 雪さんは問題なさそうだけど」
俺よりも雪のほうが大丈夫だと? なんてこった。雪ってそんなに頭が良いのか。いや、今も能天気にクラスの人と噛み合ってない会話をしているしそれはないはずだ。
「試験くらい余裕余裕。最初の試験だしな、心配ないだろ」
「それもそうだな。俺も適当に勉強するくらいでいいか」
一人の時に暇な時間や、中二病を両親から文句言われないためにも、そこそこ勉強はしている。最初の試験は中学の時の問題も出題されるし、そこまで本気で勉強はしなくていいだろう。
「それじゃ、授業始めるぞ! 席に着けー!」
先生の合図でクラスの人たちが席に着き、今日も何事もなく授業は進んでいった。念のため試験対策として、部活でも遊びながら勉強したり、雪と奏恵と一緒に家でも少しは勉強した。と言っても、俺と雪は主にゲームばかりして、奏恵が注意してくれたお陰で勉強が出来たわけだが……。
こうして、特に変わり映えもない日常を過ごしてきて、あっという間に試験当日の日へと進んだ。これ程までに時間が進むのが早く感じるのは中学の時と違って、俺なりに充実している生活だからだろう。けれど、この試験で赤点が二つでもあれば、待望の夏休みは補習ばかりとなり、この充実した生活は送れなくなる。だからこそ、俺は試験が始まる五分前に全力で勉強した。
――結論から言おう。今回の試験はなんとかなった。思っていた以上に難しい問題が多く、自己採点では少し危うかったが、全部の試験で赤点は免れることが出来た。健は一つが赤点でセーフだっったことに歓喜して騒いでいた。
「奏斗~。奏斗は何点だった~?」
「ははっ。もうちょっと勉強すればよかったかなって感じだよ」
自信満々な雪に対して、俺は余裕ぶっていた自分を少し恨み、乾いた笑いが出てしまった。けれど、もう過ぎてしまったことは仕方ない。過去は振り返らない主義なんだ俺は。なんてたって、過去を振り返ってたら自分が大嫌いになりそうだからな。
「それで、雪はどうだったんだ? まぁ、そのドヤ顔なら良い点なんだろ?」
「ふっふっふ。我にとってこの程度は……ちょ、ちょっと待て! 勝手に見るでない!」
「良いから見せてみろって。――ってお、お前!」
何故か隠していた雪から試験の用紙を奪い取り、無理やり点数を見る。しかし、その選択は間違いだった。雪の顔からして、割と良い点数だとは思っていたのだが、正直見るべきじゃなかった。俺には目が痛すぎる。というか、雪がチラチラこっちを見てくるのがウザい。
「おいお前、自慢したかっただけだろ……」
「そ、そんな訳ない! それに、絵美も我くらい点数は良い。ま、我や奏斗は点数などという数字では評価できないし、その、奏斗も落ち込まないで?」
「うるせぇええ! 落ち込んでねえよ! 励ますな! やめろ!」
雪の点数は俺のことを簡単に馬鹿に出来る程の点数。ケアレスミスをなくせば満点になる点数だ。だからこそ、雪は俺のことを煽ってくる。普段は「マスター」などと言ってくる癖に、こういう時だけ馬鹿にしてくるなんて……。もしかして、昨日ゲームで馬鹿にした腹いせだろうか。
そんなことを考えてる間にも雪はどこで覚えたのか、上目遣いで励まそうとしてくる。とてつもなく悔しいが、とても可愛い。だが、俺はそんな雪に試験用紙を返して、部室へと無言で向かうのだった。




