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17話「一人ぼっち」

「――ところで、あなたはどうして私の過去を知っているのかしら?」


 先程よりも時間を遡り、奏斗と健が居なくなってから、雪と絵美の話し合いは始まった。

「我が魔力をもってすれば、委員長が自分のことを孤高の女王と呼んでいたことも知っている。マスターの友人が先程委員長と一緒に居たところを見るに、現在は孤高の女王ではなく、やはり氷の女王」

「違うの。あなたが私の今をどう呼んでようがいいのよ。ただ、あなたがなんでその、あれよ。私が孤高の……」

「委員長、声が小さい。聞こえない」


 雪にとって、中二病というのは恥じるべきものではないと思っている。しかし、絵美は逆なのだ。中二病というのが恥ずかしいのだ。


「私は、ぜっったいに過去を知られたくないの。雪さん? もしも知っているというのなら、必ず話さないと約束できるかしら?」

「マスターには話そうと思っている。しかし、確かに委員長だけのを教えるのは不公平。だから、マスターを呼びに行って、マスターの過去も知って、お互いに話すべき。そうすれば、委員長の努力も報われる」


「へぇ。奏斗くんにも知られたくない過去があるのね。確かにお互いに話し合えば納得できるかもしれないわね。ただ、それが原因で私が嫌われたらどうするのよ。また、あの時のように一人になりたくなんてないわ……」

「マスターは偏見なんて持たない。同じ過去を持っているからこそ、マスターは理解してくれる。そして、マスターも委員長や私と同じ思いを持っているから大丈夫」

「まぁ、雪さんがそこまで言うのなら話し合いをしてもいいわ。ただし、先に奏斗君の過去を知ってからね。さっ、呼びに行きましょうか」


 絵美が歩き出し、雪はそのあとに続いて歩き出す。健がメールでもしたのだろう。絵美は迷うことなく奏斗たちの居るカフェへと入った。


「よお! 待ってたぜ! それで、そっちの話は終わったのか?」

 俺の横に雪が座り、健の横に絵美が座る。席に着くなり飲み物を注文し、俺たちの話し合いは始まった。

 それから、俺が健から聞いた話と、雪と絵美の話し合いの内容を確認した。


「駿河君⁉ まさか話したの⁉ 恥ずかしいわ……」

「別に恥ずかしいことではないだろ。俺も中二病で一人だったし、委員長が高校では一人になりたくないってのはわかるしな。それに、話を聞いた限りでは委員長の過去は誇るべきであって、恥じるものじゃないだろ。ま、俺がこんなこと言っていいのか分からないけどな」


 一人ぼっちで努力してきたのは充分すごいことだ。むしろ、そこまでぼっちを経験しておきながら、友達を作って群れたいというのは、って、俺も同じ考えで高校デビューをしようとしてるし、絵美の気持ちも少しは理解できる。

「まさか出会って間もない人に言われるとは思わなかったわ。……けれど、そんなこと言われるのも悪くないわね」

 それからは、全部さらけ出して話したうえで、結局部活の話は皆無だった。やはり、初めから部活の勧誘ではなかったのだ。少しだけ期待していたが、本当になにもないというのは少々悲しいものだ。


「それじゃ、また明日学校でね。あ、遅刻はダメよ? 委員長なんだから見逃せないからね」

「雪さん、奏斗! またな!」

 学校で会ったときとは全く喋り方が違くなったが、これが絵美の本来の喋り方なのだと思う。

「マスター。マスターはやっぱりすごい」

「俺はなんにもすごくねえよ。ただ実体験を元に、俺だったらこう思うとか考えただけだ。ぼっちの経験なめるなよ? 一人の時間が多いから自分について考える時間が多い。まぁもちろん心の中でだけどな」

「それでこそマスター! 早く居住に戻ろう! お腹空い……魔力補給が早くしたい!」

「……言い直す必要ないけどな」

 なんだかんだ言いつつも、相変わらず雪と共に帰り、奏恵と一緒にご飯を食べた。そして、自部屋へと戻って俺は自分が今日話したことについて考えた。

「一人ぼっち、か」

 考えれば考える程に中学の頃の黒歴史が頭に浮かび上がり、それに伴って夜はどんどん更けていく。

 春とはいえ、夜中になれば少し肌寒くなり、今日はなんとなく毛布にくるまって眠ることにした。

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