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15話『氷の女王』

 授業も終わり、俺たちが次に決めるのは部活動についてだった。リア充になって青春を満喫するには欠かせない部活動だが、中学も一人だった俺には部活動という既にあるグループに入っていくのは少し難しいと感じてしまう。


「奏斗は部活とかどうするんだ?」

「あー、特には決めてないかなぁ……」

 健は部活動を探すのに乗り気なようで、一応俺も一緒に勧誘文や紹介を見ているが、やはりこれといって入りたいものもなかった。無難に帰宅部で良いかなと思い、健にそれを伝えようとしたその時だった。


「マスター。我の魔力不足がまずい。迅速に拠点まで戻らなければ暴走してしまう。最悪転移を利用して戻ろう」

「なんで俺が一緒に帰らなきゃならないんだよ」

「良いじゃねえかよ! 俺は部活見学があるから帰るぜ! ごゆっくりな!」

 健が場の空気を読んで走り去っていったが、廊下を全力疾走したこともあり、たまたま廊下を歩いていた委員長にラリアットをかまされて叫びと共に倒されたのが見えた。

「あら、二人とも部活見学は良いのかしら? もしもなにも用事がないのなら早く帰りなさい。仲良いのは良いけれど、公共の場では抑えるように」

「出たな氷の女王。我の魔力不足がなければ今ここで倒して見せるが、今の我では聖竜を顕現できない。しかし、いついかなる時でも透明化している我がサーヴァントが存在する。我々に手を出せばサーヴァントが暴れだし――」

「――うるさい。委員長が困ってるだろうが。仕方ないし、一緒に帰ってやるから帰るぞ」

「むむっ。マスターがそう言うのなら従おう。しかし、我が記憶メモリには氷の女王は中学時代に強すぎる能力故に孤立していたとある。今ここで我が身を犠牲にしても倒すべきと聖竜が告げている」

「奏斗くん、で合っているわよね? 立花さんは何を言っているのかしら?」

「はぁ……ごめん委員長。雪はさっさと連れて帰るから聞かなかったことにしてくれ」

「マスター⁉ 氷の女王に洗脳されたのか⁉」

「あっ、そうだ二人とも。私の名前は二階堂にかいどう絵え美みよ。覚えていて頂戴。それじゃ、また明日ね」

 委員長こと絵美は、未だに倒れている健を連れていき、俺たちの前から去った。絵美に対して、俺は「またな」とだけ伝えたが、雪はなぜか戦闘態勢にはいっていて、「見逃すのかっ!」と驚いている。


「マスター。マスターの判断は間違っている。氷の女王は驚異的。あの場で倒すべきだった」

 雪を連れて無理やり学校を出たのは良いが、雪は相変わらず不満そうな顔をしていたので少し話題を変えてみることにした。

「なぁ雪はどんな部活に入りたいとかあるのか?」

「マスターは氷の女王の真実を知らない。だからこそ、私はアカシックレコードに今からアクセスして悠久の時を得て風化した氷の女王の過去をマスターにみせる」

「はぁ、まだその話かよ――って、普通に携帯見てるだけじゃねえか」

 雪がどれだけ絵美のことが気になっているのかは分からないが、そろそろ同じ話も聞き飽きている。今回の話を聞いたらもう絵美についての話は終わりにさせよう。

「……風が泣いてるな……」

 雪の指の動きが止まると同時に強い風が吹いて俺たちの髪を揺らした。ちなみにだが、雪が不意に発した言葉は俺の生涯で一度は言ってみたいセリフの一つだ。だからこそ、躊躇いもなくその言葉が言える雪が少しだけ羨ましかった。

「マスター。この動画を見てほしい」

 雪が俺に携帯を向けたその時だった。

「――おーい! ちょっと待ってくれー!」

 健の言葉が聞こえ、俺はその声に咄嗟に振り向いてしまった。雪も動画を流すのをやめて、携帯をしまっている。なにせ、健と一緒に絵美もこっちに向かってきているのだ。秘密を本人の前で流すべきではないと雪は判断したのだろう。

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