14話『委員長』
学校に着くと、すでにクラス内では俺と雪の話で盛り上がっており、健は俺を見つけると悔しそうな表情で俺へと話し掛けてきた。
「なぁ、ほんとにお前ら昨日一緒に帰った上に一つ屋根の下で寝たってまじか?」
「お前らな、いったいどこまで知ってるんだ?」
「もちろん全部だ。立花さんがメールで一斉送信したからな」
一斉送信……? 俺は疑問に思って自分の携帯のメール履歴を確認した。普段からメールというのを使わないからこそ俺は気づかなかったのだろう。見事に俺の携帯にも「魔力による定期連絡」という題名で送られてきていた。
「おい雪っ! お前なぁ!」
「違う。これは魔力の暴走によって生じた不具合。私が本気を出せば世界は我の物となり、世界は崩壊へと進めることが出来る。普段は抑えているが、今回はマスターの住居により我が魔力は暴走した。済まない」
「いいか、よく聞け。俺と雪は付き合ってないし、昨日も何も起きてない。分かったか!」
俺と雪に集まっていたクラスの人たちへと雪は昨日家には泊まっていないと嘘をついて真実は隠そうとした。
しかし、せっかくクラスの人たちが納得してくれそうになった時になって雪はまた余計なことを呟いた。
「……マスターの家に行ったのは事実」
「よし分かった。奏斗は隠したいんだな。俺たちは完全に理解したぞ。任せとけ」
「おい! 何を理解したんだお前たちは!!」
ニヤニヤしながら俺たちのことを見つめてくるクラスの人たちはどうかしている。一体どんな理解をしたらこういう判断をするのだろう。ただ、クラスの人達の中でも一人だけ、俺たちのことを冷えた目で見つめていたが、俺はそのことに気付かなかった。
「マスター! この場所にはみんなの思考を洗脳する魔力を感じる。マスターも早く魔力防御を展開して防ぎ、対処にあたるべき。このままでは洗脳による力の吸収で皆の微力な魔力も吸収されてしまう!」
「もういいからお前は静かにしてろ!」
雪の口に手を当てて黙らせ、ホームルームが始まるまで俺はクラスから逃げたようと考えた。
「マスター。洗脳の力を使っているのはクラスの中に居た。我一人では対処できない。だからこそ――奏斗! こいつらうるさい!」
「自業自得だ! 対処は任せたからな!」
俺を逃がさないように雪は袖を掴んでいたが、俺は無理やり引き離して逃げるのに成功した。
「マスター、逃げるのは得策ではない。魔力は充分にある。背を向けて逃げるというのはこの世界によって定められた選択ではない。戦うことを選択するべき」
「なんでお前は付いてきてるんだよ!」
「マスターの魔力によって我は転移した。世界は我をマスターのサーヴァントとして認めたらしい」
「お前なぁ……」
「――あなたたち。ホームルームの時間よ。戻りなさい」
異様な空気と突き刺さるような冷たい言葉が聞こえ、俺たちは振り向いた。振り向いた先には昨日決められたクラスの委員長が何故か立っていた。
「洗脳の力を使いし氷の女王。クラスを凍らせて追いついてきたか……」
「氷の女王とか言うんじゃない。俺たちを呼びに来てくれたんだから感謝して戻るぞ」
「なっ⁉ マスターも洗脳されている⁉ これも敵対組織の仕業か! マスター、目を覚ませ! 「シュヴァルツ・ホーリー!」」
「こんなところで騒ぐなアホ!」
雪のおでこにデコピンをしてから、俺は委員長に会釈をして、雪を連れてクラスへと戻った。
クラスに戻ってからは、委員長がクラスの人たちを黙らせてくれたのか、冷やかしなんかはなく普通に話しかけれたりするだけだった。
それからは初めての授業も無事に終わり、放課後には部活の紹介や勧誘などがあるだけだった。