12話『妹からのお願い』
雪が自分の家へと戻ったあと、俺は近くにいた奏恵へと話し掛けた。話し掛けた理由は一つであり、奏恵と雪の仲良くなるスピードが凄まじく、友達の少ない俺からしてみれば奏恵のコミュニケーション能力に驚いたからだ。
「なぁ奏恵。お前のコミュニケーション能力高すぎないか? お兄ちゃんと違いすぎてびっくりだよ」
「いや~、雪ちゃんが高いんだよ。私は普通! むしろお兄ちゃんが低すぎるんだよ」
「俺は友達いなかったからな。仕方ない」
「それは自慢げに言えないよお兄ちゃん……」
雪と無駄話をしているうちに雪は戻ってきて、奏恵は雪と共にお風呂へと行ってしまった。
「お兄ちゃん、覗いちゃ駄目だからね」
「覗かねえよ!」
「マスターが監視してくれるのならむしろ我としては有り難いぞ」
「雪ちゃん⁉ 何を言ってるの⁉」
「もう、良いから早く行けよ!」
今日一番の大きい声を出し、二人を風呂場へと押し込んだ。それに、奏恵があんなことを言うからこそ、俺は雪の裸を想像してしまい勝手に顔が赤くなっていたのだ。
雪と奏恵がお風呂に入っているうちに俺は部屋へと戻ってゲームを始めた。雪に勝つために少しでも特訓しておかなければならない。決して煩悩を消すためではないのだ。
少しゲームをし、二人がお風呂から出た後に俺もお風呂へと入った。何事もなくお風呂を出て、今度はリビングでテレビを見ていると、奏恵がソファの隣へと座ってきた。奏恵が隣に座ってきたときは大体俺に頼み事をする時だ。
「ねぇお兄ちゃん。今日雪ちゃんを家に泊めてもいい?」
「俺は別に良いけど、雪は良いのか?」
雪が一人暮らしなのは知っているが、男が居る家に泊まりたいかどうかなんてわからない。
「あー、なんかね、一人はやっぱり寂しいみたい。お風呂でも今日は一人じゃなくて楽しいって言ってたし」
「そっか。ま、ならいいんじゃないかな。奏恵の好きにして大丈夫だぞ。それに、奏恵は泊まってほしいんだろう?」
「うん! ありがとうお兄ちゃん!」
雪がどうして女子高生にして一人暮らしをしているのかは、どうやら雪の両親が海外に行ってしまっているかららしい。
「マスターと一緒に寝るぅ……」
まだ時刻は二十二時だというのに、フラフラになって歩いている雪の目はもう寝ていた。もはや寝言のように色々呟いている。
「ほら、私と寝るよ。それじゃ、私たちは寝るからね! おやすみお兄ちゃん!」
「はいよ。おやすみ~」
「……ますたぁ……」
二人が寝てしまったこともあり、家は静かになってしまった。今日はいつもより騒いだこともあって、俺自身も眠くなっていた。
寝る支度を済ませ、部屋へと戻った俺はベッドへと寝ころんだ。寝ころんだら最後、俺は予想以上に眠かったらしくすぐに眠ってしまった。




