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10話『荒らされし我が部屋』

 奏恵に呼ばれ、俺は雪に簡単に説明を始めた。だが、妙に奏恵は雪についての理解が早かったのだ。


「ふーん。ま、大体わかったよ。この可愛い女の人が雪さんって名前で、お兄ちゃんと一緒の中二病ね。でもまぁ、可愛い女の子が中二病でもまだ許されるんじゃない? それに、正直お兄ちゃんもこんな可愛い子が近くに居てくれて嬉しいでしょ?」

 雪の中二病はもはや挨拶した段階でバレたからこそ説明したが、なんてことだろう。一を説明したら十を理解するかのように奏恵は大体理解してしまった。けれど、奏恵の言葉は俺の精神へとダメージを与えたのだ。

「ま、まぁ、確かに嫌ではないけどな。うん。そんなことよりもさ、なんだよ可愛い子が中二病なら許せるって。お前、俺が中二病だったときはめちゃくちゃ引いてたじゃんか」

「いや、あの時のお兄ちゃんは気持ち悪かったよ? っていうか、お兄ちゃんが中二病ってこと言っても良かったの? もう遅いと思うけど……」

「問題ない。マスターの力は知っているし、誰にも言うつもりはない。機密を隠すことがマスターとの契約内容。安心してほしい」

「そういう事だ。奏恵。雪はもう知っている」

「雪さんのことを名前で呼ぶなんて、お兄ちゃんと雪さんはまさか……」

 奏恵が考えていることはなんとなくわかるが、今はそれよりも雪が本当に誰にも言わないかが心配だ。雪のことだから誤って言ってしまいそうだし、それに、もしも他の人にバレようものなら、せっかく遠くの学校に来た意味もなくなってしまう。なにより、中学の時のようになることだけは避けたい。

「ま、私は夜ご飯の買い物行くね! お兄ちゃんは彼女さんとゆっくりしててね。今日はお兄ちゃんに彼女が出来た記念にご馳走にするから!」

 考えることに夢中になっている間に、奏恵は一人で納得して買い物へと行ってしまった。奏恵に対して、雪が彼女ではないことを説明することを完全に忘れていたのだ。

「雪、なんかごめんな。彼女扱いされてしまって……」

「問題はない。そのような扱いされたほうがなにかと便利そうであるし」

「ったく、それでいいのかよ」

「彼女とかはよく分からない。でも、マスターはなんか近くに居て落ち着くというか、話しやすい?」

「ははっ。なんだよそれ」

 雪の言葉がなんかおかしく思えてしまい、少し笑いがこぼれてしまった。雪の中で俺はどんな扱いなのかは分からないが、こんな俺でも話しやすいと思われてるのなら、嬉しいことこの上ない。

「ま、とりあえず奏恵が帰ってくるまですることもないし、お前はリビングでゆっくりしててくれ。俺はちょっと着替えてくる」

「了解した!」

 雪を一人にすることに対して少々の不安があったが、それは杞憂に終わった。何故かはわからないが、綺麗な敬礼までしていたというのに俺の後に付いてきて、部屋に入ろうとしているのだ。

「なぁ、なんで付いてくるんだよ。待ってろって言ったよな?」

「マスターの近くに居るのが我の使命」

「家の中なら何も起きねえよ!」

「いや、万が一のことがあったらと思うと……」

「本音は?」

「マスターの部屋の探索再開!」

「入るんじゃねぇぇ!」

 俺はダッシュで部屋へと入り、速攻で扉を閉める。が、どうやら間に合わなかったようで、雪はスライディングを使ってまで入ってきた。

「マスターの部屋はやっぱり落ち着く。匂いも好き」

「変なこと言うなよ。ま、もう注意するのも面倒だから座ってろ。俺はゲームでもしてるから」

 雪が部屋に入ってきたことにより、俺は制服から着替えることが出来なかった。だから、とりあえず趣味のゲームをすることにしたのだ。

「ゲーム。私もやる」

「なんだ。お前もゲームする系の人だったのか。良かった、これで少しくらいなら話が合いそうだな」

「マスターをボコボコにする」

「お前、守るとか言ってなかったか?」

「ゲームはゲーム。現実とは違う。現実ではしっかり守ってみせるから任せて」

「ま、なんでもいいや。俺も負ける予定はないし、勝負しようぜ」

「望むところ」


 勢いだけで雪に勝負を挑んだのはいいが、結局のところ、俺は惨敗してしまった。格闘ゲーム、シューティングゲーム、あらゆるジャンルのゲームで俺は負けた。自信のあったゲームですら負けてしまいショックを受けたのは内緒だ。

「ふふん。マスターに勝った」

「お前、こんなに強いなら少しくらい手加減しろよな」

 雪がどの程度のゲーマーなのかは分からないが、妹以外とはゲームをしたことがなかった俺は、例え雪にぼろ負けしたとしても楽しかった。

「手加減はむしろ失礼。でも、マスターは弱いから特別に手加減してあげる」

「ははっ。それは光栄なことだな」

 雪と夢中になってゲームをしていたこともあり、時間を見てなかったが、外を見た感じでは真っ暗だし、奏恵もそろそろ帰ってきてご飯を作り始めているだろう。

「んじゃ、今度こそ着替えるから先にリビング行ってくれ。自炊しているならご飯の手伝いくらい出来るだろ?」

「マスターの妹君の手伝いならむしろ歓迎。我が力の真髄を見せてくる」

 雪が部屋を出たのを確認してから俺はようやく制服を脱ぐことが出来た。だが、何故か雪が扉の隙間から俺の着替えを覗いているのが見えてしまい、俺は急いで扉は閉めることにした。

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