遠い長き旅
2217年増えすぎる人口と、限りある地球の資源を調査したところ、我々人類が地球に居続けることが、困難だと明らかになった。
そこで、立案された二つの案。
1つは増えすぎた人口の抑制と削減。
もう1とつは新たな星への移住。
前者は、人類差別、個人への価値付け、他様々な問題があるとされ、世界会議にて、否決された。
よって人類に残された方法は、宇宙への進出のみだった。
世界にあった200をも越える国々が一丸となり、超大型宇宙船の開発に取り組んだ。宇宙科学は飛躍的前進し、50年の年月を経て二つの宇宙船、クラリスとルイーシャが完成した。
クラリスには太平洋資源統括会議、通称PRICに属する112の国が、
ルイーシャにはヨーロッパ世界保全協定、通称EWRAに属する92の国が所有することとなり、2270年人類は地球を離れた。
「と、ここまでは前回の復習だ。今日からはこの続きを教える」
ここまで長々と話していた男、名前はロイ・クーレナーはPRIC所属の戦闘機パイロット。若くして才能を発揮し、最年少で中佐にまで昇格したエリートだ。
「まず、地球を離れた年から西暦から宇宙歴に変わる。今は宇宙歴1315年だから、地球から旅立って1315年経ったということだな」
「先生!」
「なんだ?」
「宇宙は物凄く広いんだと父から聞いたのですが、地球から離れても大丈夫なのでしょうか」
綺麗に垂直に手を挙げた男子生徒が、はきはきとした口調でクーレナーに質問した。その眼差しは、全てを知ろうとする真っ直ぐなものだった。
「ああ、そうだな。宇宙はとてつもなく広い、だから心配になるのもわかる。だが、何もただ闇雲に宇宙をさ迷っている訳じゃない」
そう言うと、チョークを持ち一礼してから、後ろに立て掛けてある黒板に、簡略化させた図を書き始めた。このチョークは人の骨からできており、一礼するのはそのためである。図は両端に地球らしき星を、その間には7つ星が書かれた。
「実は第二の地球となる星はすでに発見されていて、我々は他の資源回収のための星を経由しながら、その星に向かっている」
クーレナーは左から4つ目の星に丸をつけ左にある星全てに斜線をした。それから、3つ目と4つ目の間に50光年と書いた。
「この丸をつけた星が、今我々が目指している星だ。50光年っていうのは光が50年で進む距離だ」
この説明を聞いた別の男子生徒が、更に質問を重ねた。
「それなら、その星に着くのに50年かかるってことですか」
「この船が光の速さで進めたら…そういうことになる。だが、残念ながらそんなに早く進めないだ。他の星で補給する必要があるのも、目的地までが遠すぎるからなんだ」
クーレナーの答えに少し教室の空気が重くなった。多くの生徒達が、今の現状がどうなっているのか、少し理解したようだ。この50光年という距離を移動中ということは、その間に資源が尽きれば、クラリスに生活している人々は全滅してしまうことに。
そんな状況を見て、クーレナーは明るい話題を話した。
「でも、安心しろ。順調に進めば、君達が生きている間に4つ目の星には着く予定になっている。だから、そんなに心配す……」
コンッコンッ
教室のドアをノックする音で、クーレナーの話しは遮ぎられた。
「第2調査隊のユーヤ・オオハシ少尉です。中佐に伝達があります」
「入れ」
教室のドアを開け、クーレナーの前でオオハシは敬礼して見せた。その堂々たる姿は、中にいた生徒達が称賛の声をあげるものだった。
「どうした?」
クーレナーがそう言うと、オオハシはクーレナーの耳元まで近づいた。
「コナー博士が、今すぐ第1研究室まで来てくれとのことです」
「……わかった」
クーレナーは少し間を開けてから、騒がしくなっている生徒達に事情を話した。
「先生に急な仕事ができたから、続きを教えれなくなった」
「えー、先生行っちゃうんですか?」
「続き習うの楽しみにしてたのに……」
生徒達のブーイングの嵐にクーレナーは、少し戸惑った。すると、隣にいるオオハシの顔を見て、
「…大丈夫だ。代わりにオオハシ少尉が教えてくれる…」
「なっ。中佐何を」
クーレナーは後は任せたと、オオハシの肩を叩いた。そんなオオハシの顔は無理ですと、訴えかけているものだった。
機嫌の直った生徒達の声を後ろに、クーレナーは急いで第1研究室に向かった。これが終わりの始まりだと知らずに。




