千里眼チートと千利休カフェは違うんだよ?
「なあ神田、千利休カフェ行かね?」
「え、千里眼カフェ?」
その聞き間違いが、全ての始まりだった、なんて言ったら大袈裟かもね。
ちなみに千利休カフェは近所の喫茶店。また機会があれば紹介するよ。
授業の休み時間、学校の屋上にて、僕と千糸は会談をしていた。
いつも通り、それは些細なことから始まる。
「え……いや、千利休カフェ」
「戦略的カフェ?」
「千利休カフェ…………」
「戦線離脱カフェ?」
「それってもはやどんなカフェだよ」
今日、僕はたまたま授業中耳栓をしたことを忘れて神田の話を聞いてたから、こんなことになったんだと思う。
自分でも、なんか聞こえないって思ってたんだけどね。
なんで耳栓したかって?単純にめんどくさかったから。眠れないから。そこらの、暇だから騒ぎ散らす悪がきとは違う。
でも、それに気づいたのは一人もいなかったみたいだ。
あれ、うつ伏せになって寝てたんだけど……先生にも気づかれなかったな。前の方の席なのに。
あ、隣の席千糸だったからか。納得したよ。
でも千糸も耳栓に気づいてなかったみたい。
「せんのりきゅうかふぇ~?」
「何となくウザさは伝わった。洗脳休暇カフェ」
「千利休カフェっっ!!」
「森羅万象カフェ?」
「えぇ………………」
「違うの?じゃあやっぱり千里眼カフェ?」
「ちげーよ!?ああ、もういい!千里眼じゃねぇってことは教えてやる」
千糸は何らかのチートを使って、千里眼ではないことを僕に自覚させたらしい。
あの時は記憶曖昧だったけど、なかなか鳥肌もんの凄ワザだよな。
「ええー、千里眼じゃないのかー、そうなのかー」
「ゆるーい言い方すんなよ。どっかで聞いたことあるし」
「え、じゃあ戦時中カフェ?」
「行きたくねぇな!世界平和を望む俺にとって、そこだけは!」
「成熟チューカフェ?」
「生々しいよぉ…………」
「背広凶カフェだったり」
「古き良き日本。天晴れだけど違う」
「セミナー教カフェかな」
「なにそれ怖い」
「んー、……やっぱ千里眼か」
「ちがーう!もう、千里眼使わせてやるって!」
もう拉致が空かなかったよ、自分で言うのもなんだけどね。
とうとう千糸はチートを使った。
光が瞬いて、僕は仮初めの能力を身につける。
「…………目の前にナマケモノがいる」
「そりゃ良かったな」
「ソイヤッ、ヤラナイカ!?!?……何言ってんだ…………!?」
「え、違う」
「チカン?」
「違うぅぅぅぅ!!何か決定的な間違いをしているぅぅぅぅ~!!」
「あ、流氷」
「……北極にでもいんのか?」
「木刀の拳?」
「あ、あぶねぇ!著作権大事にしろ!」
「す、すご。水がないのにタコみたいなのがいる」
「それ多分宇宙だよな!?」
「夢中?」
「ちがっ………………ん、違わなくは、ないか……?」
千糸は、その一言で色々考え直した。
夢中。確かに、夢中になってたかもしれない。
こうやって二人で話をすること、聞き間違いを訂正すること、世界を見ること。
「…………やっぱ世界って難しいな」
「菜っ葉正解ってウルグアイ?」
「……違う」