テスト反省会でチート使うべからず
「保体70!」
「88。……へっ」
「くっ! これでどうだ! 数学76!」
「91ですが? ……ぷっ」
「…………最後の切り札ぁっ! 英語88!! だーりゃっしゃーい!」
「95」
「お前チート使ってるんとちゃう?」
テスト返却日の午後。
千糸の家で反省会中の僕たちは…………戦っていた。
何を。何をだとぉ!?
テストに決まってんだろうが!
くそ、また届かんかった!
「チートなんて使ってねーよ。言ったろ? 勉強にはチート使いませーんって。それがどうした神田? 神田はチート使えない身を呈して徹夜でワーク終わらせた癖に、早寝早起きを心掛けている俺に負けたとぉ? あっれーおかしいなー?」
「わああああああああっ!!」
「必ず八時間は睡眠をとるようにしている……なんてな!」
「卑怯だぞ! 正々堂々勝負しろ季石千糸────!! …………って、おい」
見事に乗せられたことは棚に置いておいて。
「──勉強の仕方を教えろ」
「敬語を使いたまえ神田くん」
「教えて下さい」
「様付けすること」
「千糸様」
「良いところ3つ言え」
「すぐ調子に乗るところと、無駄なことでチート使いすぎなところと、全体的にアホなことです!」
「すまん俺が悪かった」
……そうだ。勉強法なのだ。
やっぱり結局のところ、それが重要になってくる。
千糸はさっきも言っていた通り、早寝早起きを心掛けているし、朝昼晩とトリプルで栄養があるご飯を食べていると聞くし、勉強もそこそこにしつつ、スマホも1日一時間半と決めているそうな。
何故こんな千糸に、こんなにも模範的である僕が負けてしまうんだ…………!
「ま、普通にゆうとだな……兎に角、沢山書け」
「ってみんな言うけど、沢山書いても全然染み付いてない気がするんだけど…………」
「そう、それだ。沢山書いたところで、勉強にはならないんだよ。神田は見事に聞いてほしかったとこちゃんと聞いてくれたな、拍手」
「な、なんか釈然としない…………で、でも、だったらどうすれば?」
「勉強は大事だぞ、やらないと出来ないしな。だけども、それと同じくらい、それかそれ以上必要なものがもう一つある。何だと思う?」
「えっ……と。うーん、復習とか?」
「違う! 息抜きに決まっているんだ!」
「なっ……!?」
「勉強机の側にミルクティーを置いておくのは基本! その状態で一度に三十分勉強する方が良い! それ以上は集中力が持たないからな。そしてそれが終わった後はぱぁーっと街へ散歩に繰り出す。外の空気をしっかり感じることが重要だぞ。お菓子と小型扇風機は買い込んでおくべし。最後に、安眠枕があれば完璧だ」
「う、うーん!? 果たしてそれはちゃんと勉強が出来るのかな!?」
「──出来る! 実際に実行し、実の物にした季石千糸が宣言する」
「あ、やってたんだ。なら大丈夫かな」
「いいか神田。過酷な勉強に打ち勝つためには、さっきも言った通り息抜きが重要になってくる。人はご褒美無しでは生きられないってのと同じだ。定期テストクラスの勉強に勝つには、さっき言ったやつだけじゃ足りないくらいかもしれない」
「お、おう……!」
「だからしっかり休憩することだ。ただし勉強自体は怠るな。それはもはや勉強ではなく遊びになっちまう」
「良いな……! ところで、千糸はどんな息抜きを?」
「おすすめは街への散歩だな。街には色々あるし、弄ってて飽きがこない」
「なるほど………………ん? 今弄ってって言った?」
「言ったけど?」
「何を弄ったの?」
「街の施設とか、蛍光灯とか、車とか……」
「チートかよっ! やっぱチートかよ! チートで暇潰ししてたのかよ!」
「え…………普通じゃね?」
「普通じゃねえからこうなってんの! 千糸専用じゃないかそんなの!」
「またまたご冗談を……チートは、全ての人の心にあるんだぜ?」
「ねーよ! ないから今まで苦労してんだよチートがっ!」