僕の友達
僕には一人の友達がいるんだ。
同じ中学のクラスメイトなんだけどね、これが本当に凄いやつなんだ。本当に……うん、凄いんだよ。
僕はあいつと小学校で初めて出会っていらい、ずっと友達だ。あいつも友達ができたのは初めてみたいで、心底喜んでいたんだと思う。僕も、友達が増えてとても嬉しかった。その気持ちは今でも変わっていないよ。
むしろ、大切な親友の人にまでなって、遊ぶ機会も増えた。僕もあいつも、ゲームが大好きで、たびたび話したりした。あと、あいつはラノベやアニメも好きだ。僕は、とてもマニアな物まではついていけないけど、これを機に少しそれらに興味を持つことができた。
あいつは、父が幼いころ亡くなって、お母さんと二人で暮らしているらしいんだ。母子家庭って大変だな、って僕は思って、改めて見つめ直すきっかけになった。おかげで、道徳の授業では先生が高評価をつけてくれた。
あいつは、とてもノリがいい。僕がネタを振ったり、遊ぼうと誘っても、いつでも相手をしてくれた。でも、時折僕が危ないことをしようとすると止めてくれる、凄くいいやつだ。それ以来、僕は無難で面白い遊びを研究するようになり、今ではすっかり楽しみの一つだ。
あいつは、勉強も運動もできてイケメン、優しいと何でも揃っている完璧人間で、女子にモテ、男子にも一目置かれる存在だ。先生や大人たちからの評判もすこぶる良く、僕の憧れでもある。
あいつは、少し変わってもいた。もちろん、普段は普通……だと思うけど、僕から見れば、少し。たまに変なこと言うし、ごく稀に奇行も行う。でも、誰もあいつをおかしい、とは思っていないらしい。もう、あいつはあいつでそうだと受け入れられているのかも。僕も少しは慣れたけど、未だに引っ掛かるところはある。まあ、そこはそれほど特筆すべきところじゃないかな。
あいつは、チートだ。
時間を動かせたり、空間を切り取ることはお茶のこさいさい。瞬間移動、透明化はもちろんのこと、物体を産み出したり、さらには宇宙人を呼んだりもできる。なにもかもがチートだったんだ。僕が最近見たラノベの主人公は一つのチートを駆使して活躍していたけど、あいつは違うんだ。やっぱり現実のチートってこんな感じなんだなって、しみじみ思ったもん。
だけど、あいつはその万能最強チートを悪事には使ったりしない。勿論良いことだけど、あいつは良いことに使うかどうかは気まぐれなんだ。日常の至るところであいつはチートを使うけど、どれもしょーもないことばかり。
もっと派手なことに使えば?と言いたくはなるけど、言ったら言ったで何をしでかすか知ったもんじゃない。
僕は怖くてそれを言い出せないまま、彼と一緒に「普通」の学校生活へと足を踏み入れることになってしまった。
あいつの名前は「季石千糸」。名前は気にしないでくれると嬉しいな。そのうち慣れるよ。
千糸は、そのうち世界を巻き込む日常チート生活を、僕と歩むことになる。
…………あ、もう世界巻き込んでたっけ。