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ゴシップ  作者: kamapote
1/1

噂1

今年、僕は高校生になった。

3ヶ月たったが、今だに友達を作れていない。

周りは次々と友達をつくり、仲良くなっていく。

自分でいうのもなんだが、あまり愛想のいいほうではない。

しかも話下手だ。

妄想するのは得意なのだが……


そんなこともあり、気持ち悪く思われ、作れない要因でもあるかもしれない。

自分のコンプレックスをいろいろ上げてもしょうがない気もする。

きりがない……

テンションが下がる……


周りが友達を作っていく中、僕と似た状態になっている女の子がいる。

その子を見ていると、違和感があった。

周りとは何か、違う気がした。


周りは女の子を認識してない感じに見えた。

気のせいだろうか?僕でも他の周りからは認識される程度はあるがまあ基本地味ですが何か問題でも?

彼女は窓際の一番前の席。

僕はちょうど彼女が見える斜め後ろの席。

話しかけて見たいが話しかけられない。

根性がありません……


こんな時、気の利いたことがいえれば友達ができるのかな……

肩ひざを突き利き腕でペンを回し、くだらない授業を受けていた。

退屈な授業をこなし昼休みになる。

昼休み友達と食べるのだろうがあいにく僕は今だ友達はゼロ。

牛乳とパンを買い屋上へ一人で食べる。

今の季節は十二月に入り寒くなって屋上には誰もこない。

貸しきり状態である。

いつものごとく一人寂しく食べていると珍しく誰かが屋上の扉を開く。

「ガチャッ」

屋上に来訪した人は、同じクラスの子だった。

僕が授業中に見ていた女の子だった。

扉を開けて、こちらを見る。

彼女と目が合う。

僕は慌ててうつむく。


落ち着け、落ち着け、話すチャンスじゃね?と心の中で自分に訴える。

どう切り出そう?そのあとは何をしゃべろう?

何が好みだろうか?と

僕の貧相な脳をフル回転させシミュレーションする。

そしてしゃべりかけようとして彼女の方向へ再度見ようとする。

顔を上げると彼女の顔が目の前にあった。

「うわっ!!」


気配が感じられなかった!そして後ろに転がり尻餅をつく。

「ビックリした!何!?」


彼女はこちらを見て、笑う。

目は笑ってない、そして口元も痙攣し無理やり笑顔を作っている。

「こんにちわ…… 」


彼女の目は真剣だ。

「こんにちわ……」

「君なんで私が見えるの?」


首を傾げる。

「質問の意味がわからないけど……」


彼女は空を見て考え、再度こちらを見つめて言う。

「私、輪月唯香…… よろしく……」

「僕は、宇佐見慎吾 よっよろしく」


お互い自己紹介し、一分ほど間があく。冷たい風が屋上を満たす。

「話はそれたけど、見えるってどういうこと?」

「信じないかもしれないけど私死んだらしいの……」

「死んだ!?幽霊!?」

慌てて後ろに下がる。


「本当は死んでない……」

「どっちなのよ!?」

「噂で死んだことになっている……だからみんな私を見てくれていない。だから死んでいるのと同じ」


授業中に見ていた時の彼女の違和感はそこにあった。

「みんなの噂が集まり、その影響で死んだようなの。そして今も私は、その噂の原因を探しているの」

僕にそう告げて、こちらを見やり、また何かを求めてきている。


これってやっぱり手伝えってことだよね?

ここで下手に断ると何されるかわからないよね?

だって彼女、目が怖いし……


自問自答した僕は、空を見上げてため息を吐く。

「わかった。手伝うよ……」


彼女は喜んでいるが顔は引きつっている。

そんな会話をしていたら昼時間が終わりチャイムがなる。

彼女と僕は教室へ戻ろうとした。


二人しかいなかった屋上だったのに、いつの間にかもう一人いたようだ。

「あれ僕ら二人だけだったよね?」


彼女はもう一人の人物を睨む。

「あれ、人じゃない……手伝わなくてよくなった……」

よく見ると人ではあるが影にユラユラとこちらに近づいてくる。

なにかささやいているようだ。


全然聞こえない。

耳を澄ませて聞いてみた。

「トモダチホシイ…トモダチホシイ…トモダチホシイ…」

不気味だ……さすがにこうなると友達になるのは遠慮する。

全然止まる気配がない。


よく見ると彼女ではなく、僕の方に歩いてきた。

「いや僕は特に関係ないんじゃ……」


後ろに下がり距離をとったが屋上の金網が背中にぶつかる。

行き止まり……やばい……

目の前にいる。


その影は僕をなめまわすように顔を近づけてくる。

「オマエ……メザワリ……オレトカワレ……」


影は大きくなり僕を襲い掛かる。

僕は成すすべもなく、立ち尽くし、目をつぶった。

あれ?何もおきない?目を開けてみると。

影は何かに捕まっていた。


影にまとわりついているのは、無数の骨の腕が絡まっていた。

腰が抜けて蒼ざめた。

「これは……」

「私が死んだ時に手に入れた死の能力……」


腕を組み、僕に説明する。

影はうめき苦しそうにしている。

「このウワサも違う……これあなたの……」

「えっ!?どういうこと?」

「あなたいつも一人、みなウワサしている……悪い方に影響して彼が出てきたの

彼は変わりたいって……あなたが何もしないから……」


僕は俯いた。

何もしてない自分が確かにいる。

わかっている自分でも……でも出来ないんだ!

傷つくのが嫌だ……恥ずかしいのは嫌だ……利用されるのは嫌だ……

心にいつもそんな膜を張ってしまう。

どうしたらいいかい?試行錯誤している。努力している。

僕は腹立だしく思った。影にそして自分自身にも。

「僕も変わりたいんだ!!おまえだけじゃない!!」


影に向かって僕は吼えた。

影はさっきまで暴れていたがおとなしくなる。

「どうする?私のほうで回収できるよ……」

澄んだ声でいう。


僕は悩む。

ここで開放してどうにかなるのか?

回収したらどうなるのか?

彼女に回収する義理などないはず。

これは自分が招いたウワサ、なら自分でどうにかするのが筋だろう。

影がここまでして変わりたいと訴える気持ち……無駄にしたくない。

自分で自分の気持ちを無駄にしてる気がするし。

もしここで自分でなくなるようならそれまでだし。

影であっても僕は僕…… 変わりはしない。

裏と表、朝と夜そんな感じだろうか……

「いいよ。開放してあげて」

「いいの?」

彼女は再度確認する。

「それも僕だからいいの。君の物じゃないし」

「……そう」


彼女は影を開放する。

影はこちらに歩みより笑った。

「アリガトウ……」


何だろう?この気持ち嫌じゃない、すっきりした気がする。

「よかったね……元に戻れて……」


彼女は僕に優しく声をかける。

影にいったのか?まあどっちでもいいや。

「ここにもなかった……また探そう……じゃあね」


彼女は僕の顔に急接近したのでとっさに目をつぶってしまった。

目を開けると僕は屋上のベンチに寝ていた。

「ここは……屋上?夢?」


起き上がり頭をボリボリとかいた。

昼休みの終了チャイムがなる。

さっき聞いた気もするのだが……デジャヴ?


屋上の扉を閉め階段を下りる。

その時、寒さに晒された体が冷えていたので縮こまるようにポケットに手をいれ階段を下りる。

ポケットの中に見慣れない紙切れが入っていた。


くしゃくしゃになっている小さい紙切れ。

コンビにのレシートと思い、紙を伸ばしてみる。


その紙切れに書かれていた言葉を見て立ち止まった。

「出ていこうと思ったけど、あなたの周りにたくさんのウワサが集まっているから、これからよろしく……」

さっきのは夢ではなかったようだ。


あの女の子とあの影……

現実なのだが現実ではありえないことを今、目のあたりにしている。

このウワサはどこまで続くのだろうか……


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