第一話 智狐と狐子
こんにちは、石神穂波と申します。
小説を書くのは初めてなので読み難い点など多いと思いますが、暖かく見守って下さいね!
*この作品は春エロス2008参加作品です*
その時、秋葉智狐は欲求不満に陥っていた。
「ん〜!エッチしたいなぁ!」
サンドイッチを握り締めたまますっくと立ち上がって青い空に叫ぶ智狐。
サラッとした長い髪が靡き、形の良い胸がぷるん、と振るえ、
廻りの男から小さな歓声が上がった。
ガタン!
智狐の目の前でお弁当を掻き込んでいた
悪友の清水狐子がずっこける。
「あんたねぇ、デッカい声でなんて事叫んでんのよ!」
春の日差しが眩しいキャンパス。
二人は少し遅めの昼食タイムを楽しんでいる。
「だってぇ、最近イイ男が居ないんだもん。
ねぇキコリン、抜かずの十発位軽々とこなすイイ男紹介してよ」
ブバッ!ゲホゲホゲホ!きゃああああ!
隣のテーブルの男がコーヒーを噴出して咽せ始め、
その前に居た彼女らしい娘がコーヒーまみれになって悲鳴を上げた。
狐子がバン!と音を立ててテーブルを叩きつつ智狐を睨みつけて怒鳴る。
「あ・の・ね!!いい加減にしときなさいよこの淫乱!
一体何股掛けるつもりなのよ!あと、キコリンって言うな!!」
「またやってるよ、あの二人」
「どうせ秋葉が暴走してるのを清水が抑えてるんだろ。いつもの事だ」
「それにしても秋葉って、ウチの大学の色男何人喰ったんだ?」
「噂じゃ三十人とも、百人とも言われてるが」
「マジ?俺も喰ってもらおうかな?」
「バーカ、お前じゃルックス審査で撥ねられるって」
「やあねー、秋葉さんって、イツドコヤリマンって言われてるのよね」
「何それ?」
「イツでもドコでもエッチしちゃう、って事よ」
廻りのテーブルから聞こえてくる、
潜めようともしない影口にヒクつきながらジロッと廻りを睨みつける狐子。
その迫力に押されて、周囲の人間が一瞬でシーンと静まり返ってしまう。
「やーね、キコリン。そんな怖い顔してると彼氏なんて出・来・な・い・ぞ☆」
「おんどれはあああああ!」
狐子は、完璧に人事の様にウインクしながら微笑む智狐の頭をぱしーんと叩いた。
「あー、疲れ果てたよあたしゃ」
講義が始まり、机に突っ伏しつつ唸る狐子に、同じ高校から進学して来た有香が同情する。
「大変ねえ、智狐ちゃんと付き合うのも。
ねえ、何で狐子は智狐ちゃんと仲が良いの?」
「んー、何でだろ……?」
狐子と智狐が出会ったのは二年前、大学の入学式。
背が高く、パッと見は美形の男性にも見える狐子に智狐が突然声を掛けてきた。
「あの、入学式終わったら私とエッチしませんか?」
大きな瞳をキラキラと輝かせながらウキウキと声を掛けてきた智狐の、
外見の凄まじい可愛らしさとその発言のギャップに平衡感覚を失った狐子は
思わず講堂の床にヘタリ込んでしまった。
「やだ!医務室行きましょ!」
智狐は華奢な体からは想像も出来ない怪力で狐子を引き摺り、
医務室のベッドに引っ張り込んで余りの事にパニクっている狐子のスキを突き
あっと言う間に服を脱がせた。だが、Bカップのブラにたどり着いた瞬間に
「……チッ」
と黒い表情で舌打ちをした智狐の頭を狐子が「なんか文句有んの!?」
と叫びつつスパーン!と引っ叩いてからの腐れ縁である。
お互いが地方の稲荷神社を実家としていて
名前に「狐」が入っている事も有り、
また恋愛以外の事では凄く気が合ってしまい、
智狐の奇行に何度もうんざりしながらも付き合い続けているのだ。
「それにしても、確かに智狐ちゃんは可愛いわよね。
男のコにモテるのも良く解るわ」
狐子は、のほほんとした声を掛けてくる有香の顔を情けない思いで見詰ながら返す。
「そうなのよね。私が男だったら、最初に声掛けられた瞬間に襲っちゃったわよ」
そう、確かに智狐の可愛らしさと色っぽさは並ではない。
顔はアイドル並み、スタイルはモデル並み、性格は……
「エロ親父並みかあ」
ボソッと呟く狐子を痛ましそうに見つつ、
「でも、そう言う狐子だって相変わらずモテモテじゃない。
相変わらず、主に下級生の女の子にだけど」
170センチの長身ですらっとした細身のスタイル、
髪をショートにしている狐子は年下の女の子の憧れの的だ。
子供の頃から男の子と元気に転げまわっていたので、
今更女の子らしい格好して男とお洒落なデートとかするなんて
チャンチャラおかしいと思ってしまう。
「はああー……」
なんだか色々と大変ねえ、とか言いながら講義に耳を傾け始めた
有香の横顔を見ながら、狐子は大きくため息をついた。