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寂しい理由  作者: ケイコ クロスロード
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おとなの宿題

缶コーヒー1本でさえ、手渡されて払う素振りを見せた事もない。

この前買ってもらったからと、自分が買って渡す気遣いも発想になかった。

年齢が上がると共に甘えられる相手も減り、同じように、付き合う異性も激減した。

下手な自信だけは有ったから、教養も備わらず、容姿の衰えも自惚れ鏡には映らなかった。

若さを失ったら男にとって食事代金を出す価値が無くなったと言うことだ。

「歳の割に幼稚で物を知らない」とはっきり言われた事がある。

面と向かって言ったのは法事の席で、子供の頃、一緒に遊んだ同年の従兄弟だった。

彼が話題にした当時、世間を騒がせていた元総理の書いたベストセラーを香織が元総理もベストセラー本も知らないと言ったら「話が全然通じへん」と見下したように、イラついた顔を向け、そう言い放ったのだ。

新聞も番組表以外は読まないし、ニュースも自分から見るほどは興味無く、本も読まないから書店に入ることもしない。

基本的な作家の名前も今何が読まれているかも全然知らない。

字幕を読むのが疲れるので洋画も見ない。

人と話しても困ることなんて無かったし気にしたこともない。

そう言えば、さっき皆が法事の前にお茶出しや靴を揃える側で何もしないで座っていたら、件の従兄弟が何か言いたそうにして香織を見ていた、最初から自分にイラついていたのかと気付いたが別に気にも留めなかった。

体を使うのも気を使うのも嫌いなのだから仕方がない。

そう言った気遣いや身の軽さや金払いを身に付けていたら、また違った展開が有ったのだろうか。






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