おとなの宿題
口が上手く気持ち良く褒めてくれる、外見が見映えして派手好きで、お洒落に余念がない、そんな男が好きだった。
相手の性格を見つめたりしないのは男も自分もお互い様だった。
高校時代から社会人になっても少し付き合ってはすぐに別れるを繰り返し、瞬く間に30才を目前にしていた。
年を取っても好きな男の外見が一向に変わらないので付き合う相手は年下ばかりになっていく。
目に見えて途切れがちで次々結婚に踏み切る友に比べて独りの夜が増えた。
自分は好条件で結婚すると決めつけて来たが今まで付き合った男の中に好条件の相手など居なかった。
ちやほやしてくれる事だけに惹かれて自分のことすら深く考えるのは苦手だった。
貧乏な家庭だが不自由なく育ったせいで、その内、自然に贅沢できる結婚が訪れると思っていた。
30才を待たずに短大卒以来勤めたデパート勤務を退職した。
女ばかりの職場で結婚相手も見つけられなければ後輩にまで軽んじられ足元をみられる。
絶対に結婚しないだろうと思われていた二年上の先輩と最後の独身同期が婚約したと聞いて発作的に辞めると決めた。
先のことは何も決めていなかったが、貯金も有るし迷うことは無かった。
辞めると言っただけで、ご結婚ですかと百万回聞かれ、挙げ句、薄笑いと共に「あっ、自分探し?」と落とされる。
親から刷り込まれた特別に可愛い自分の姿と他人の目に映る自分とのギャップ。
遅きに失するが初めて世間を味わったのだから笑止千万だ。




