おとなの宿題
両親に甘やかされて育ち、家の中で叱られた記憶が殆ど無い。
姉は両親からよく叱られていたが特に母は姉のことは何をしても気に入らないようだった。
今思えば年下の自分に比べられ叱られていた姉が可哀想になる。
自分ばかりを可愛がる母親の偏愛ぶりは物心ついてから続いていたので不思議とも何とも思わなかった。
姉が理由もなく母に太ももを平手打ちされていても、自分もとばっちりが怖いので、他人事のように振る舞ってきた。
母が姉を怒鳴りつけた直後に香織の名を猫なで声で呼んでも姉に悪いとさえ感じなかったのは感覚が麻痺していたのだろう。
それどころか親に習って姉に対して偉そうな態度で見下していたかもしれない。
自分が何をしても、しなくても親にほめそやされ、大切にされ、一方でけなされ叱られてばかりの姉を見比べてお門違いな優越感を持ち自分に過剰な自信を抱いてしまったのだ。
普通なら入学や進級で家庭より広い社会に出た時点で親の愛だけを受けていた状態とは「話が違う」と幼い頭で己を顧みる瞬間が訪れる。
しかし香織にはそんな自覚をする瞬間は無かった。
いつ何処に有っても可愛い香織ちゃんのままだった。
異性と付き合う年頃になっても1人の人と愛し合うことより複数にモテることに興味があった。
実際、付き合う男性に不自由はなく、モテていたと思う。
ただ、誰とも長続きせず、2〜3回のデートで終わる相手も多かった。
今ならば、それが都合のいい女で本当にモテるとは言わないと解るのだが、若いときは調子に乗るだけだった。




