乾いた水
真を抜きにした夕食だったが特に浩二も小麦も不自然に受けとらず食事を静かに終えた。
真の方は夜中に帰宅したらしく翌朝、憔悴した様子で出勤して行った。
まるで自分が悪いことをしたように、元気のない足取りでみちるから顔を背ける姿に胸が詰まる。
しかし今、みちるの心を占めているのは息子に秘密を知られたと陽介に告げる決断だった。
迷った末に、すぐにもメールで相談するより、次に直接会って話すことにした。
それまでに出来ることを考えておきたかった。
真が夫に話せば二十数年手入れして守ってきたこの家には居られなくなる。
陽介に援助や離婚を求める気持ちは毛頭無いが自分さえ自立出来ればもっと自由に逢える。
その為にも住む部屋と、かかる費用を調べ、今のパート勤めからフルタイムに変わらなければならない。
これからは自分中心の新しい生活へと心は一足飛びに頭は目まぐるしく動いていた。
いつの間にかまどろみ、まだ夜の明けきらない時間に陽介からメールが届いていたらしい。
慌てて画面を開くとそこには他人行儀な冷たい文章が並んでいた。
「私達の関係が妻に知られてしまいました。ソウルでの私達が妻の知人に見られていたのです。今の私は妻の存在無しに有り得ません。妻を失うことなど考えられません。妻の信頼を取り戻し関係を修復したいのです。あなたに惹かれたことは事実ですが、ただの浮気相手、既に終わった関係になってもらいます。これきり、連絡はとらない」
何度読んでも同じだった。
妻が妻がと何回妻と言うのだろう。
突然切り捨てるような身勝手な別れを謝る言葉すらない。
頭に幕切れの文字がぼんやりと浮かぶ。
血圧が急激に下がった時のように気持ち悪く、手足が冷たく顔から血の気がひくのが分かる。
これから一体どうすれば…。
心の中でさえ言葉が続かない。




