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寂しい理由  作者: ケイコ クロスロード
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晴天の霹靂

来た道を戻り、電車を乗り継ぎ、中之島まで足を延ばした。 

川べりの水上カフェで、昼休みのOLに混じり、黒胡椒のきいたローストビーフサンドを食べた。酸味の強いマスタードも爽やかだった。食後のハイビスカスとオレンジのハーブティーはウエイターに告げてテラス席に移って味わった。

陶磁器の美術館を見て回り、北浜の古いビル街を歩いた。 

こんな風に一人の休日を楽しんだことがあったかな。家業とパート勤めにしがみついてバタバタ生きている自分の時間は貧しいものだった。

それを見透かしたように夫の昭夫は

「離婚してお前もこれからは一人になって、何でも自由に好きなことせいや」と言った。

続けて「俺も身軽になって、好きにやりたいんや。出て行ってくれや」と、節子に向けた顔は完全に嫌気がさした人間を見る目をしていた。

そんな昭夫の方こそ中途半端に禿げた頭に伸び放題の眉毛、黄色く濁った白目、歯並びはガタガタで煙草のヤニで変色している。毎朝、喉元からせり上がる汚らしい咳払いをしつこく家中に響かせる。貧相なのは痩せ型の体格だけではない。

量販店に比べて米の値段が高いと絡む口の悪い客が来ると節子を呼んで後ろに隠れるような卑怯な男だ。普通に考えれば、節子から「あんたなんかこっちから願い下げやわ」と三行半くれてやった方が自然の流れに思える。

そんな男に長年気を使って苦労してきたオチがこれ?

節子は段々、情けないを通り越して笑えてきた。

まともに理由も言わなかった昭夫。

スナックの女性相手に一人相撲のせこい恋愛ごっこでもしているのかも知れないが突然の離婚要請に至る程とも思えなかった。

結婚生活に疲れただの、自由が欲しいだのと訴えた挙げ句、最後には「離婚が決まるまで生活費は振り込むから住むところを探してこい」と施しでもするように言い渡された。

子供達が独立した夫婦二人の家で誰も聞いていないのを良いことに、すぐにも出ていけの一点張り。

後は節子の問いかけにも一切応じず勝手に部屋にこもってしまった。

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