乾いた水
夫との夫婦生活が疎遠になってどのくらい経つのか忘れてしまった位だ。
やり方忘れたなあ、と内心、頭を抱えた。
結局、みちるは陽介を求める気持ちに蓋は出来なかった。
一度限りで終わっても構うことないのだからと開き直り、何が起こっても傷付かないでいると決めて陽介の胸にすがった。
そんな不安は杞憂に終わり、陽介はみちるを何も知らない小娘のように優しく扱い、自分が陽介に取って宝物となったように感じられる時間となった。
若い頃に劣る体の線の崩れも思うほどに陽介は気にしていなかった。むしろ、感嘆の言葉と熱い視線を浴びせてみちるを恥ずかしがらせた。
自分の体がまだ想う男性に愛される価値が有ることを知り感激に浸った。
陽介の腕の中で陽介が漏らす歓喜の呻き声を聞く時、みちるは味わったことのない充足感を得た。陽介を愛せば愛すほど自分自身をも好きになれた。
三度目のデートで関係を深めて以来、陽介は仕事で大阪を訪れるたびに必ずみちるに会い、それは習慣となりつつ有った。
みちるにとっては陽介と過ごす時間とメールのやり取りが生きている実感に変わり生活の中心となっていった。
例え、みちるが上の空でも実際の家族との生活は表面上、変わりなかった。
家事さえ滞りなく、生活が回っていれば、夫も長男、真もみちるを気にとめることは無い。
社会人なりたての真は反抗期に母親を疎んじる態度を身に付けてから大人になってもそれが一向に変わらない。
みちるが家庭の中でまともに会話するのは長女、小麦だけなのだ。




