裏表
入所一時金を見ると、確かにさつきの言う1000万円以上の高嶺の花の物件もある。
しかし、価格帯は様々で、100万円以下のものまで有った。
見る限り、安いから悪いとは思えなかった。
言えることは老人ホームは敷居の高い所ではなく、業者はどこも老人の確保に懸命でサービスを競っているようだった。
入居一時金が50万円という、ホームが目に留まり、ブースで説明を聞いた。
背広姿の担当者が多い中、ポロシャツとチノパンの担当者が迎えてくれた。
彼はホームの敷地が借地に建っているため、入居金が格安で済むこと、借地権は40年先まで保証されていることを説明してくれた。
個室完備の月々の必要額は部屋代・光熱費・食費・介護サービス・医療費・雑費全ての合計が18万円前後、主に一般的な年金の受給額で収まる価格設定にしていると胸を張ってみせた。
確かに父の年金から支払って幾らかおつりが来るだろう。
今なら空室が二部屋あるという。
その場で施設内見学を申し込んだ。
同レベルの経費で入所出来るホームを他にも二カ所見つけ出した。
老人ホームを順番待ちの待機期間が長い、狭き門だと思っていたのは公的な特養と呼ばれる特別養護老人ホームと混同していたのだ。
莫大な一財産が必要な施設は今時減りつつあるようだった。
何とか出来るかも知れない、何とかするのだ。
この収穫をさつきに報告し、すぐにも見学に連れて行こう。
パンフレットを抱きしめた帰り道、春菜の足取りは知らず知らず軽やかにギャロップを踏んでいた。




