裏表
知らぬ顔が出来ず、ただ巻き込まれるまま、断りきれず、年月だけが過ぎた。
父が数年後に死んでくれるとしても、それまで、私達はもう待つこと、かなわない。
先ず父の年金を返済に充てている借金を司法書士でも何でも頼って完済するべきだ。
父の年金は月二十数万円にのぼるだろう。
この大金で老人ホームに隔離してやる。
憑かれたように息つく間もなく喋る春菜にさつきが水を刺した。
軽々しく老人ホームと言うが簡単に入れる所ではないし、入所するにも最初に何百万と言うお金がかかる。月々の費用も払えない。
そんなん、夢物語ちゃうの、
と。
嫌や、私は諦めへんで、絶対に。と半ば叫ぶように春菜は電話を切った。
その瞬間から春菜は情熱を持って動き始めた。
父の借金を洗い出し、一括返済する。この清算は思ったほど困難では無かった。司法書士事務所に行けば簡単に計算してくれ、過払い金まであるというオマケがついていた。
近々父の年金は晴れて全額自由に使える身になるのだ。
次に春菜は梅田の商業施設のイベントホールに出向いていた。
有料老人ホームの合同説明会に参加するためだった。
化粧品会社のキャンペーンイベントや旅行会社の説明会に来たことが有るが老人ホームのイベントが有るなど今まで知らなかった。
興味を持ってみれば情報は近づいてくる。
入退場は自由で、幾つもの老人ホームが参加していた。
運営会社ごとにブースがあり、パンフレットや希望すれば詳しい説明が受けられ、見学の予約も出来た。
費用の内訳を表にして貰い、各ホームごとに比較も出来た。




