裏表
春菜の苛立ちをよそに父がワンルームマンションを追われるように出ることになった。
外に出る度にゴミ置き場から不用品を持ち帰る。
部屋の中は拾って来た壊れたオーブントースターや骨の折れた傘、湯垢とカビだらけの風呂椅子、破れた時代物のスピーカー、回らない扇風機、重いだけのアイロン、引きずって来たらしい真っ赤に錆びた自転車は玄関ドアに挟まり共用部分の廊下に半身をはみ出させていた。
ありとあらゆるゴミが室内に溢れ手を焼いたヘルパーは4人目を数えて次は無かった。
父の玄関周りはマンション内と思えぬ悪臭漂う一角となり、遂には退去せざるを得なくなったのだ。
父は無表情に酒を飲み、ゴミを持ち帰る行動を繰り返す。
原因は自分の人生終盤の不遇に怒り、復讐しているとしか思えないのだが、あまりに機械的で
感情が見えず、不気味だった。
マンション所有者が約束の期日内に出て行ってくれればゴミの処分は受け持つと言ってくれたのはせめてもの情けか同情か。
さつきは諦めずにあらゆる人脈を駆使して恥も外聞もなく父に貸してくれる部屋を探し、朽ちるのを待っているような文化住宅を見つけてきた。
さつきの執念に感謝しつつ、二階建ての一階の鰻の寝床の二間の部屋がこのまま父の終の住処になって欲しいと祈った。
そこにまたもや父を押し込めるも、収拾癖は収まらなかった。
春菜は電話口で訴える精根尽き果てたさつきの呪いの言葉を虚しく聞きながら、この連鎖を断ち切らなければ父が死ぬ日まで自分達は蟻地獄から這い上がれないとようやく悟った。
そのために出来ること、私と姉が安眠するために、父を私達の視界から消えてもらう方法を考え出した。




