裏表
さつきが見つけてきた父の転居先はワンルームマンションだった。
これまでの縁側つきの部屋のある家にくらべたら、せめて1LDK程度の間取りでなければ息が詰まるだろうと思ったが、費用を考えたら仕方ない。
結局、コンパクトな冷蔵庫やベッド等の家具付きの部屋に父を入居させ、可能な限り訪問ヘルパーの手を借りることにした。
春菜には息子が1人居て、大学院で考古学の研究をしている。
日中、家庭内に手が掛かる家族は1人もいないがネイルサロンを後回しにして父の世話に走れば共倒れになるのは明らかだ。
さつきの方も2人の息子は成人していたが、住宅ローンや教育ローンが残っていて父を中心には出来ない事情がある。
貯蓄も家も祖母の存在も何もかも失ったように見えても手頃な賃貸マンションに文字通り父を押し込めて春菜は正直ホッとしていた。
これから父は自分たち姉妹とヘルパーの見守りを受けながら自分の年金でささやかに暮らすだろう。
この思惑は至極まっとうで、甘かったなどとは思いもしなかった。
しかし、いつ聞いてもさつきの口からは父の余裕のない暮らししか語られない。
その原因は父がかつて車椅子生活となった祖母の為に家の内外をバリアフリーに改装し、その際、年金担保で借金していたと知った時、春菜は蟻地獄に自分が落ちていたとようやく悟ったのだった。
ネイルサロンの収益はほとんど全額が、さつき経由で父への仕送りとなり、その終わりは知れなかった。




