裏表
春菜も母も葬儀には参列しなかったから、父の様子は分からない。
しかし、その辺りを境に父の本格的な自滅が始まっていたのだった。
1人暮らしとなった父の様子を見に時々食事を持って訪ねていたさつきの話では「昼間からお酒を飲んでることが多いねん。着てる服も、めっちゃ変
やねん」と聞いても春菜は聞き流していた。定年退職した身で家に1人で居れば昼間から飲むこともあるだろうと思い、冗談に「アル中にだけは注意した方がいい」と言ったことが現実になるまで時間の問題だった。
居間で倒れている父をさつきが発見し、救急車を呼ぶ騒ぎを起こし搬送された病院でアル中と診断され、肝機能も最悪の状態で即入院。
さつきは病院からかけてよこした電話で「自分は貧乏くじを引いた」と嘆いた。
「お父さんがあんな弱い情けない人やったなんて知りたくなかったわ。」ついには、「お母さんと春菜が出て行ってなければお父さんはこんな風にならなかった」とまで口走り、春菜が返答に惑う間に「これ以上言うと自分で自分を嫌いになってしまう!」とヒステリーを起こして一方的に電話を切った。
このまま父の面倒をさつきに押し付けていいものか重苦しい悩みが常に胸を圧迫した。
父にダメ出しばかりされた結果、精神の危機にさらされた母に相談するのは勇気のいることだった。さつきが母に話そうとしないのもその為だったろう。
姉妹の悩みを更に深める思いがけない事実が明らかになった。
持ち家と信じていた住まいが借地で借地権の期限切れが迫っていた。
父には預金どころか借金が残されている。
入院費用でさえさつきが立て替えたと聞いた。




