裏表
籍を抜いた母には何の関係もないと言えるが、自分には血の繋がりが残されている。今になって家族としての役割を旧メンバーの自分が負わせられるのは真っ平だった。
両親の離婚後、母と2人で苦労した春菜より、さつきの方が恵まれていたことは明らかだ。金銭的には父の収入で不自由なく、身の回りの世話は祖母を頼れた。大学も当然のように4年制に進み、就職してからも自分の収入は好きなように使えた。
結婚が決まると支度は全て父が負担してくれたと言う。
その2人の生活力が弱った今、さつきが、恩返しに見守るのは当然と思う。
母と共に生活に追われ、部活にも満足に参加出来なかった春菜は大学も二年分学費が少なく済み、早く働ける短大を選び、就職してからも先ず払ったのは奨学金の返済だった。姉に比べて不公平だ。そんな思いのくすぶる自分が今更駆けつけるなんて、仏でも無い限り出来ない。冷たい気がしたが、話だけは丁寧に聞くが姉との距離をこれ以上縮めることは避けたかった。さつきの方でも春菜の気持ちは通じていて特に妹に何かを期待して話をしている訳では無いようだった。
会う度2人は失禁、徘徊、人格の崩壊…聞きかじった認知症の症状を想像して恐れていたが、そんな心配をよそに祖母は退院後間もなく、就寝中に静かに息を引き取った。




