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寂しい理由  作者: ケイコ クロスロード
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裏表

フットネイルのオーダーが増え始めて、夏がやって来たなと思う。

津村春菜の自宅ネイルサロンに訪れる客には普段は手の爪だけの施術でもサンダル履きの季節が来ると期間限定の足のお洒落を楽しむ人が多い。

仕事や周囲の目が有る人は手の指は大人しく、足には大胆なネイルをオーダーする事も多い季節だ。

サロンの収入も夏になると、割高料金に設定しているフットネイルが増えたり、ハンドネイルにも開放的な季節らしく派手なネイルが好まれて値の張る凝ったアートが選ばれる為、増収が期待できる。

庭付き一戸建ての自宅の遊ばせている一部屋を使ってサロンを始めた頃は少人数ネイル教室の開講が目的だった。

子育てが一段落し、好きなネイルアートを教えて生活に張りを見出したいと思いきって踏み出した。

教室には、かつてのママ友が集まってくれて、最初はさながら暇潰しサロンの雰囲気だった。

それが、春菜の技術とセンスが信頼され次第に施術のオーダーが増え始めて個人ネイルサロンとして、今では主婦の趣味と実益などと言えない利益を上げている。

幸いに今のところ夫の啓一郎は理解を示してくれているが、それも専業主婦の自己実現とか生き甲斐探しと思っているからだ。

開業するときの条件も、儲けを期待しないなら好きなように楽しめば良いというものだった。

「春菜が輝いてくれるなら応援するよ、呉々も必死にならないでね」と微笑みながら釘を刺された。

経済研究室に勤める啓一郎の収入は妻の稼ぎを必要としない。

妻に求めるのは家庭を心地良く整えて、幸せそうな笑顔を絶やさず、夫婦で外出や会話を楽しめる存在で居てくれることで、そのためには自分も夫として協力は惜しまない。

春菜の稼いでいる額が20数万円に登り、更に増収を望んでいると知ったら良い顔はしないだろう。

今日も、春菜は仕入れたばかりのスワロフスキーの粒をケースにより分けながら、直前までの、姉からの電話の会話を反芻していた。

「お父さんがまた自転車を拾って来た」受話器の向こうで姉、裕子が天井を仰ぎ見ながら深いため息をつく姿が立ち上るように見える。最近は姉と父親の事を考えない日は無い。

文化住宅などと呼ばれた中途半端なアパートと長家の中間の様な賃貸住宅の一階に住み、ゴミ置き場から家財を拾い集める父を何とかしなければならない。



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