反撃
見返りを求めず与えるだけだった昭夫との生活は既に終わったのだ。しかも無理矢理、決別させられた自分にまたもや昭夫に尽くす力が残っている訳もない。私は鉄人でも何でもない。
存外、昭夫の検査入院は2〜3日で済み、結果は異常なしかも知れない。それとも治療が必要で、闘病、完治する病気かも知れない。もしかしたら命を落とす深刻な事態に陥るかも知れない。
何れにしろ昭夫が一人自ら向き合うべきで節子には二人三脚で支えるつもりは無かった。
今、投げ出したら後で悔いが残るとか、子供に無責任な姿を見せられないとか、これまでパターン化してきた選択は黙殺した。いつの間にか心の中がクリアになって落ち着いている事に気付く。
予定通り引っ越しの日を迎えて、契約した部屋を友人の春菜の母に仲介してもらったことから、春菜が手伝いに来てくれた。娘の絵里の助けも借りて簡単な新生活の準備は整った。
雑貨店で買った可愛らしい卓袱台に春菜がデパ地下で買ってきてくれた老舗弁当を広げて三人で囲む。
「お母さん、なんか、綺麗やよ」絵里が瞳を三日月のようににっこり細めて節子を見た。
これから、益々綺麗にならはるよ、と春菜が受ける。
いざ、漕ぎ出でな…節子は胸の中で呟いた。




